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F1.4の世界。日常を非日常に変えるひみつ道具。

F1.4という言葉を聞いて思うことはなんでしょうか?

これは写真用語で「絞り」という写真の明るさとボケ感を調整するための値のことです。数字が小さくなるほど明るくボケが大きくなり、大きくなるほど暗くハッキリ見えるようになります。

F1.4という数字は限りなく明るい数値となり、その分ボケ感も大きいです。

※正確には被写体との距離、センサーサイズの大きさによってもボケ感は変わってくるため、必ずしもボケが大きい写真となるわけではありません。


そんなF1.4という世界で何かできないかと思い

F1.4の世界

というテーマのもと夜の散歩をしてみることにしました。

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駐車場の遮断機です。

遮断機とは遮るもの。こっちの世界とあっちの世界を隔てるもの。それは心の中にも存在します。

頭が先に動くか、心が先に動くか。

シャッターを押すか、それとも素通りするか。

あなたは考えながら撮りますか?それとも反射的に撮りますか?


この暗い中に浮かぶ遮断機を僕は反射的に撮っていました。頭ではなく先に体が動いて撮っています。そう考えてみると僕はおそらくほとんどの写真が先に体が動いて撮っているように思えました。

この写真に限って言えば、暗闇の中にある光とその静けさに心惹かれたことで、衝動的にパッとシャッターを押したのだと思います。

僕のような人もいれば、一枚一枚考えた上で写真を撮る人だっています。

隔たりとなる心の遮断機は人それぞれです。

棒がサッと上がってあっちの世界に踏み込むキッカケとなるのは、撮りたいと思う衝動と周りの状況とのバランスであるように思うのですが、F1.4の世界を試みて

F1.4の世界はそのきっかけを緩めてくれると実感しました。


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F1.4の世界はシビアな世界でもあります。

ボケやすいというのは逆に言えばピント幅が狭いを意味します。体がちょっとでも動いてしまうと、途端にピントは外れてしまうそんな世界です。

だからこそピシャッとピントが合った時の気持ちよさは格別なものとなり、なんでもないシーンでも「撮れた」という写真の根幹的な面白さをシンプルにはっきりと感じることができます。

それはまるで綱渡りのよう。

それがF1.4の世界の面白さでもあるんですね。

このF1.4の世界をやるにあたって決めたことが2つあります。

散歩中の写真は1つの場所につき1枚
撮った写真は見ない

この条件は一見すると写真の根幹的な面白さ「どんなものが撮れているかわからない」を強調するための手段と考えられます。

しかし

真の狙いはF1.4の世界のシビアさに浸ることにあります。

散歩が終わるまで、しっかり撮れているかが分からないこと、撮り直しが出来ないこと、それは自分をシビアな状況に陥らせることと一緒です。

そう、まるで綱渡りのような状況。

そうすることがF1.4の世界に身を置くことでもあるなと思ったんですね。そのための上記条件です。

そうすることで街灯が当たっている何気ない葉っぱの写真でも、綱渡りを支える写真としての一面が付加されることになります。

自宅に帰ってきてPC上のモニターで確認するときもハラハラドキドキです。F1.4の世界は撮り終わった後にも楽しめる世界でもありました。


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そういった意味で、F1.4の世界とはシャッターを押す感覚を緩めてくれるもの、綱渡りのようなシビアさを与えてくれるもの。

そういう緩さとシビアさを持った世界だということが、この散歩を通して気づいたことでした。

これはある意味、F1.4の世界を持つことは日常を非日常へと変えるドラえもんのひみつ道具のようなものとも思える気がしてきたのです。

この秘密道具にはもう一つ日常を非日常へと変えるある効果があります。

赤いポストがとても印象的に見えました。

いつもなら、なんでもないポストで素通りしてしまう場所なのに、F1.4の世界で見るこの赤いポストはこの世界の主人公へと変えてくれます。

正面で一枚パシャッと。

赤いポストが主人公として際立ちます。

対象の被写体を主人公にさせる強さは絞り値が低いほど大きいものになります。ボケ感が強いほどその効果は大きいのです。それがF1.4の世界。



最後にこの一枚で締めたいと思います。

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散歩をお見送りしてくれました。


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タイトル写真:ストックフォト
文中写真:まと。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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