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【事例紹介】トラブルが生じやすいイベントで初対面の方々に協力してもらうためのコツ(後編)

前編はこちらです。

適切ではないかもしれませんが、今回の事例を分かりやすく例えると、「スーパーの激安セールの会場責任者である私が、未経験スタッフを45分後に会場に投入して、お客様のトラブルなく過ごす」ということになります。

しかも、トラブルを回避できただけでなく、お客様から感謝されたということが今回の事例のポイントです。

コミュニティマネジメントの視点から報告をしますね。


登場人物紹介の確認

再度になりますが、今回の登場人物です。

①:チューリップ配布に協力してくれる地域の方々。
この方々はチューリップの育成にも関わってくれました。ご自身が大切に育てたチューリップを参加者にお渡しするというのが今回の役割です。例年関わってくださる方もいますし、今回初めて関わる方もいます。年齢層も30代から70代までバラバラです。様々な方々に多様な関わり方で協力をしていただきました。協力していただいた方は100名くらいで、私はほとんどの方と初対面でした。

②チューリップをもらいに来た方々。
お子さんとその保護者、高齢の方々。近隣の方々だけでなく遠方からいらっしゃる方もいます。例年の期間中の来場者が約5万人弱です。どれくらいの方が集まるかわかりません。一人一鉢というルールを守ってくれる方もいますが、ルールを守らない方もいます。

③私、配布担当責任者。
今年初めて、配布責任者に任命されました。ちなみに①、②の方々とも、ほぼほぼ、「初めまして」の状況です。

トラブル回避 その1

13時15分に①の方々に集まってもらった時に私が行ったことは、まずは”感謝”を伝えることでした。

チューリップを育てるのには本当に手間がかかります。誰が水やりをする?育てたチューリップを誰が出羽公園まで運ぶ?などなど本当に大変な労力が必要なわけです。それだけでも感謝の気持ちでいっぱいなのですが、さらにチューリップ配布の協力までしていただいているわけです。もう、感謝の言葉しか出てきません。

「育ててくれてありがとう、配布に協力してくれてありがとう」。貴重な時間を使ってくださっているわけですから、感謝の気持ちをきちんと伝えることは重要ですよね。

この感謝の気持ちをきちんと伝えられる機会がなければ、イベントに関わろうと思ってもらえないかもしれません。しっかり時間をつくって、協力してくださる全員に感謝を伝えましょう。

コミュニティマネジメントの手法でいうと、「主体的な担い手を育成」「愛着と関係性のマネジメント」と言えるかもしれません。

トラブル回避 その2

②の方々が配布の際にトラブルがあった場合、私が対応をします、と伝えました。わざわざ時間をつくって協力してくださった方が、トラブルに巻き込まれたとしたら、次回以降にイベントに関わろうとは思わないですよね。ましてや、感謝もされずに仕事だけお願いされたとしたら…。

アルバイトであれば、イベントに関われば金銭的報酬が得られます。金銭的報酬が得られれば、多少のトラブルがあっても我慢できるかもしれません。金銭的報酬が発生しない場合には、トラブルがあったとしたら、二度とイベントの協力しようと思いませんよね。

協力してくださる方がトラブルに巻き込まれることなく、トラブル対応が明確になっていること。これは、お金に頼らないコミュニティ運営を行っていく上では重要な視点です。

コミュニティマネジメントの手法でいうと、「お金以外の報酬に着目する」と言えるかもしれません。

トラブル回避 その3

チューリップの配布の列に並んでいる②の方々に、私は「どうやってチューリップが育てられているか」を伝えました。何故チューリップが無料でもらえるかを②の中には知らない方もいます。地域の方々の協力のおかげで、チューリップをお渡しできることをきちんと伝えると、ルールを破ることに対する抑止力になりました。

参加者は必ずしもイベントの趣旨を把握しているわけではありません。「〇〇に書いてあります」では伝えているかもしれませんが、伝わっていないかもしれません。繰り返し、丁寧に伝えることが伝わるに繋がります。

コミュニティマネジメントの手法でいうと、「上流のプロセスを理解する」と言えるかもしれません。

トラブル回避 その4

”その3”と合わせて、募金のお願いをしました。チューリップを育てるにはお金がかかります。球根の購入、鉢の購入などなどお金がかかります。来年度のチューリップ育成のための募金活動を通じて②の方々に依頼をするわけです。

②の方々にとっては、チューリップを無料でもらっただけでなく、募金をしたことで来年度のチューリップフェスタに自分ごととして関わることになります。

コミュニティマネジメントの手法でいうと、「役割と出番をつくる」と言えるかもしれません。

トラブル回避 その5

配布担当の責任者である私が、率先して声を出しながら会場を動き回りました。募金のお願いをする際に、ちょっとした面白いこと言うと、列に並んでいる方に笑いが起きる。笑いがあると配布を待っている方々が退屈をせずに済みますし、私自身も楽しい。(大きな声を出すことに私はあんまり抵抗がありません)

私が声を出していると、①の方々が、具体的にどのように声掛けをしたらよいかが分かる。そうすると①の方たちも声を出す。自分で伝えたいメッセージを多くの方に真似をしてもらえる。これは事務的に行っているだけでは、①の方たちが真似をしてもらえません。

コミュニティマネジメントの手法でいえば、私自身が楽しんでいるという点では「サービスではなくコミュニティ」ということかもしれません。

結果はどうだったか?

配布時のトラブルがありませんでした。

募金がものすごく集まりました。私は募金箱をもって、声を出しながら会場を動き回っていたのですが(攻めの募金活動!)、募金箱が重たくなっていくのを実感しました。1時間くらいの募金活動で、5万円くらい集まりました!(准認定ファンドレイザーとして頑張りました)

募金の際に、②の方々に言われてうれしかったことは「来年も頑張ってくださいね」「楽しみにしています」「今年もありがとう」などの感謝の言葉です。

お金をいただいているにも関わらず、感謝をされるってすごくないですか?協力してくれた①の方々も、充実感を感じていたようでした。自画自賛のようになってしまいますが、殺伐とした中でのイベントよりも、温かい雰囲気のイベントのほうが、参加する側だけでなく協力する側もいいですよね。

コミュニティマネジメントとしてまとめると

今回の事例を、コミュニティマネジメントの視点からまとめます。

イベントにはトラブルが想定されます。まず初めに重要なことは、一番重要なトラブルは何なのかを想定することです。イベントの種類によっては、参加者に起因することかもしれませんし、協力者に起因することかもしれません。天候といった外部要因かもしれませんね。

次に、この一番重要なトラブルに対してどのような対策を講じるかを明確にしておくことです。今回のイベントであれば、ルールをつくり、ルールを周知して、ルールを管理することになります。作るだけでおしまいにするのではなく、しっかりと伝えて、だれが管理するかを明確にしなければなりません。

そして、感謝の気持ちを大切にすることですよね。協力者の方に対しては、ルールをきちんと周知してくれてありがとう、ルールの管理をしてくれてありがとう、です。参加者の方に対しては、ルールを守ってくれてありがとう、ですよね。

それを責任者が行動をもって示す。しかも、最も楽しみながら実践することです。協力者にとってのロールモデルを演じるような感覚です。トラブル対策として、責任者が現場を俯瞰する方法もあるかもしれません。そのような場合には、トラブルは回避できるかもしれませんが、イベントの盛り上がりに欠けてしまうかもしれません。責任者はイベントに対する思いは誰よりも強いはずです。そういった思いは現場で活かしたほうが、やっぱりイベントは盛り上がります。

コミュニティマネジメントはどうやって学ぶ?

今回のケースはイベント運営の一例です。このように運営すれば必ずうまくいくというものではありません。「これをやれば、必ずうまくいく」という方法はありませんが、「こういった視点を怠ると、失敗する可能性がある」という気持ちで参考にしていただけたらと思います。

私は、NPO法人CRファクトリーのコミュニティマネジメントインストラクターとして行政、学校、自治会などでコミュニティに関する講義を行っています。CRファクトリーの代表の呉さんのYoutube動画が、コミュニティマネジメントを気軽に学ぶのに役立つかもしれません。

より深く学びたい方は、講座などもありますのでお声掛けください。


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