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高齢化率4.8%の地区の将来は?5年後の高齢化率はどうやって調べますか?

市町村レベルでの高齢化率は簡単に入手できます。市町村でも地区単位で高齢化率を見てみるとばらつきがある場合があります。新興住宅が開発された地域は、ファミリー層が増えるので高齢化率が下がりやすくなりますよね。地区単位での高齢化率の算出は、国勢調査のデータを用いることで調べることができるというのは、以前の記事で述べました。

では、算出した高齢化率が将来どうなるか?理学療法士としてはとても気になることですし、地域で事業を始めようとしている方々にとっては高齢化率は重要な指標になりますよね。

そこで今回は、コーホート変化率法という手法を用いた推計方法についてお伝えします。令和2年(2020年)の国勢調査を基にした結果、高齢化率4.8%であったレイクタウン地区(レイクタウン1丁目~9丁目)が、5年後の令和7年(2025年)には何%に増えるのか、はたまた減るのか、を実際に計算してみたいと思います。


コーホート変化率法とは

「コーホート」とは、同じ年(又は同じ期間)に生まれた人々の集団です。「コーホート変化率法」とは、各コーホートについて、過去における実績人口の動勢から「変化率」を求めて、それに基づき将来人口を推計する方法になります。

具体的には、国勢調査のデータを用いて、最新の国勢調査と前回の国勢調査の5年間でどのように変化しているか把握します。前回の国勢調査の時に5~9歳の人口が、今回の国勢調査でどうなっているかを調べるわけです。この際に比べるのは、今回の国勢調査の5~9歳の人口ではありません。前回と今回の国勢調査に5年の時間経過がありますから、今回の国勢調査では10~14歳を比較することになりますね。どのくらい人口が変化したかを示した数値が「コーホート変化率」となります。

コーホート変化率を計算する

レイクタウン地区の人口

先ほどの例でいえば

コーホート変化率=
今回の国勢調査の10~14歳の人口/前回の国勢調査の5~9歳の人口

となります。

実際に、国勢調査のデータをもとに、レイクタウン地区の計算してみましょう。

平成27年の5~9歳の男の人口が349人、令和2年の10~14歳の男の人口が467人でした。この場合のコーホート変化率は467/349≒1.34となります。この計算を5年ごとの人口で計算していくと、それぞれのコーホート変化率が算定できます。

コーホート変化率

令和7年の推定人口を計算する

5~9歳になるまでのコーホート変化率が1.34となりましたので、令和2年の5~9歳の男の人口(1004人)に1.34をかけた1345人が、令和7年の5~9歳の男の推定人口となります。このように令和2年の人口にコーホート変化率をかけることで、推定人口が算出できます。

0~4歳を除く令和7年の人口推定

0~4歳の推定はどうする?

5 歳刻みの年齢階級別コーホート変化率を算出すれば、今回の国勢調査から5年後の人口推定は予想できますが、まだこれだけでは不十分です。この推定には、今回の国勢調査から5年の間に生まれる0~4歳の人口が含まれていないからです。

0~4歳の人口を求める方法は、①厚生労働省の人口動態統計で算出されている女子年齢別出生率から算出する方法、②子ども女性比を用いる方法があります。

市町村レベルと地区レベルでは対象となる年齢層の女性の人数が異なります。市町村レベルでは①、地区レベルでは②を使用したほうが良いかもしれません。

子ども女性比を用いた0~4歳の人口推定

子ども女性比とは、0~4 歳人口と15~49 歳女性人口の比で、出生率の代替指標として用いられる指標です。

子ども女性比=
0~4 歳人口/15~49 歳女性人口
になります。

先ほどのコホート変化率法で求めた人口推定のうち、15~49歳の女性人口に今回求めた子ども女性比をかけたものが、0~4歳の推定人口となります。

こちらも実際に計算してみましょう。国勢調査のデータをもとに、レイクタウン地区の0~4 歳の人口は2399人、15~49 歳女性人口が6219人でしたので、子ども女性比は2399/6219≒0.39となります。

令和7年の15~49歳の女性人口推定は11339人ですので0~4歳の推定人口は0.39×11339人で4374人となります。

令和7年の推定人口

レイクタウン地区の推定高齢化率は?

ここまで計算できると高齢化率は簡単に求められますね。レイクタウン地区の令和7年の総人口は38798人です。そのうち65歳以上の人数は1806人ですので、高齢化率は1806人/38798人≒4.7%となります。令和2年の高齢化率が4.8%ですので、高齢化率はわずかに低下するという結果になりました。

まとめ

成長を続けている地域は、統計だけで将来の人口を推定することは難しいかもしれません。人口増加を受け入れるだけの住宅環境が整わなければ、人口は増えませんよね。

ですから、推計はあくまで一つの仮説としてとらえることが重要だと思います。そのうえで、地域の生活に関連する視標を組み合わせながら、実際に地域を感じることで、推定の精度を高めることができるのかもしれません。

では具体的に地域に関連する視標にはどのようなものがあるのか?この辺りは次回の記事で述べていきたいと思います。

人口推計に関する理解は地域づくりに役立ちます。実践的な内容だけでなく、基礎的な人口推計についてもまとまっているので、おススメです。


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