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日常の会話に感じた「情報」と「知識」の間にそびえる壁と、その越え方

最近やっていたキャンペーン系の施策分析のあれこれで後輩とあぁでもないこうでもないと話していたのですが、その中で「私(後輩)〇〇の知識が足りていないんですよね。だからもっと本読んだりネットの記事読んだりして勉強します」と言われたんですよね。

その時は「まぁそうか」と思ったんですが、なんとなく違和感があって、その後「あーこういうところに違和感持ってるのかな?自分。」と感じたのでメモしておこうかなと思います。そして、せっかくなら考えをちゃんと整理するためにnoteに書こうと思ったのが今回の経緯です。

違和感の正体として、情報と知識って違うかもなぁというところです。
今回で言うと、たぶん後輩が言うように知識をつけるべきという目的は間違ってないと思うのですが、もしかしたら「知識を得たい」という目的に対して「本やネット記事をたくさん読んでインプット増やす」という手段が必ずしもマッチしないかもなぁ、と思いました。

もっと言うと、それは知識を付けるのではなく情報収集に近いよね、という話です。

情報と知識って…

「知識」は大辞林によると以下のような定義みたいです。ちょっと今回の趣旨から遠い意味も出てきたので、一部割愛して引用します。

① ある物事について知っていることがら。「そのことについては何の―もない」「予備―」
② ある事について理解すること。認識すること。「幸福とは何かと云ふ事を明細に―して了つてゐるんです」〈竹沢先生と云ふ人•善郎〉
③ 知恵と見識。

ちなみに情報の定義は、同じく大辞林によるとこんな感じのようです。

① 事物・出来事などの内容・様子。また,その知らせ。「横綱が引退するという―が入った」「戦争は既に所々に起つて,飛脚が日ごとに―をもたらした」〈渋江抽斎•鷗外〉
② ある特定の目的について,適切な判断を下したり,行動の意思決定をするために役立つ資料や知識。
③ 機械系や生体系に与えられる指令や信号。例えば,遺伝情報など。
④ 物質・エネルギーとともに,現代社会を構成する要素の一。〔「事情」を「報告」することから一字ずつ抜き出してできた略語。雑誌「太陽」(1901年)に出てくるのが早い時期の例。諸種の訳語とされたが英語 information の訳語として定着〕

すごく乱暴に要約すると、こんな感じでしょうか。

知識 = 理解すること、知恵、見識
情報 = 内容、様子、知らせ、資料、「事情を報告」

こと、仕事の場面を前提とすると、それぞれの定義って以下のような分け方にもできるかもなぁと思いました。

知識 = 再現性があるもの。抽象化されていて、転用が効くもの。クローズドなもの。
情報 = 有象無象であり時事的なものも含む。オープンなもの。

なにかやった結果としての数字、変化などのファクト(事実)は取り急ぎ「情報」なのかなと思いました。一方で、なぜこうなのか、なぜこういう結果になったのか、という因果関係などを含むもので後で別のシーンにも転用可能なものが「知識」なのかなと思いました。

「知識」の本質ってなんだろう

「知識の本質」ってなんだろうということを考えてみると、あくまで僕の仮説ですが以下の3つに見られるかもと思いました。

仮説①
特定の前提条件に対して結果の因果要因になるもの

ある条件を満たす同じような場面があったら結果もだいたい同じようになるその条件、が知識なのかなと思いました。暑い日に清涼飲料水やアイスが売れる、雨の日はECの売上が上がる、サッカー日本代表の試合があると大規模系toCのWebサービスのPVが落ちる、などそういう因果関係です(例は一部仮説を含みます!)。例はかなり単純化していますが、個人的にこのような因果関係の事実や知識をたくさん持っている人の話を聞くと「あぁ知識のある人だなぁ」と思ったりしました。

仮説②
特定の人しか知らないクローズドなもの

誰でも当たり前のように分かっていることは「知識」ではないかなと思いました。厳密には知識なのかもしれませんが、実務上重宝されたり有用だったりするのは、自分独自の解釈や自分だからこそ持っている因果関係の考え方だったりする必要があるのかなと思いました。もちろんオカルト的な話ではなく、一般的に説得力があるロジックを前提にした独自の解釈を指しています。

仮説③
実体験や、信頼のある検証が既になされているもの

「信頼に足る検証がされている」というのも「知識」の要素としては大事なのかなぁと思いました。
よくよく考えてみると「情報」にはよく嘘が混ざっていたりします。例えばフェイクニュースというのはありますけど一応情報としては扱われますよね。一方で、知識・ナレッジ・ノウハウは嘘が混ざっていた時点でそれとは扱われないかなぁと思いました。なので具体的な検証が必要なものは「情報」、既に検証されていて説得力があるものは「知識」として扱われるのかなと思いました。

「情報」と「知識」の間にそびえる壁の越え方

そういう意味で「知識を付ける」のに手っ取り早いアプローチとして実体験を元にするというのがあるかなと思います。いろいろ実験して、やってみて、独自の因果関係のデータベースを自分の中につくっていくというのが「知識を付ける」のにもっとも近道だと思いました。

冒頭の後輩に感じた違和感ですが、僕の意見としては「本を読んだりネット記事を読んだりするのはめちゃくちゃ重要だけど、それはあくまで前段で、その後いろいろ試してみて自分独自の解釈を持つようにした方が知識を付けるという観点ではいいかも!」ということでした。

なので、具体的なアクションも「本とか記事とかめっちゃ読みます!」よりも「本とか記事とかめっちゃ読んで、試してみて所感を貯めたり転用したアイデアを仕事の中で提案したりをめっちゃします!」の方が知識を付けるには近いのかもなぁと思っていて、これは自分自身の仕事の仕方としても見直さないとなぁと思いました。

(余談)知識的な本と情報的な本

もしかするとビジネス書と言われるものも、実は情報的なものと知識的なものに分かれるかもしれないなぁ、と思いました。例えば「本は古典を読んだ方がいいよ」と言われることが多いような気がしますが、それも今回の話のように言い換えると「情報的な本よりも、知識的な本を読んだ方がいいよ」ということなのかもなぁと。

ずっと読まれてる本ということであれば調べたらすぐ出てきたので、ビジネス書のベストセラー年間トップ10を過去にさかのぼって調べてみました(日本著作販促センター)。

例えば「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」は2001年に年間5位でしたが、現在もAmazonランキングで会社経営カテゴリ11位、経営戦略カテゴリ8位ってすごいですね。「7つの習慣」も1997年に1位で1998年が10位ですが、現在は「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」と改訂されているものの実践経営・リーダーシップカテゴリで9位と根強いです。どちらも色々なまとめ記事に出てきたり、よく誰かにおすすめされたりする本ですよね。

逆に手元のノウハウに寄った本は時間が経つと新しいノウハウが出てくるので読まれなくなるのかなと思いました。例えば「仕事ができる人 できない人」は、「ザ・ゴール」と同じ年の年間2位でしたが、現在は人生論・教訓カテゴリ9466位、ビジネスライフカテゴリ631位でした。同じく「なぜか、『仕事がうまくいく人』の習慣」も同じ年の年間3位から、現在は仕事術・整理法カテゴリで1544位でした。内容的な問題だけでなく色々な外部要因もあるとは思いますが・・・!

ベストセラーランキングが内容のすべてでは全くありませんが、少なくとも長い時間が経ってもなお読まれている本は読者の知識や実務の助けになったりする場面は多いのだろうなぁと思っていて、そういう意味で「知識の本」と言えるところがあるのだろうなぁと思いました。余談でした。

でも、実務の中で「情報」もめちゃくちゃ大事

ここまで「大事なのは後からいろいろ転用できる知識で、情報のままにするのはもったいない」的な話をしていますが、個人的には「情報」もむちゃくちゃ大事だと思っています。

それは「知識は、現時点の暫定」でしかないと思うからです。
例えば過去実際にあった話です。とあるWebサイトでユーザーインタビューなどを行いながらABテストを繰り返してその時最適なデザインが決まってしばらく運用していたのですが、その後時間が経って徐々に数字が悪くなっていきました。後で改めて定性調査を行ってみると、どうやら一定期間経った間にサービスの知名度やユーザーのサービスに対する理解度(そのサービスへのリテラシー)が変わってきていて、視覚的に必要なページ要素が変わってきているということが分かりました。

「これは前提条件が変わっていた」という例でもありますが、外部環境が変わることで過去に使えていた知識に修正・調整が必要になる場面は結構あるなぁと思っています。

言い換えると「知識」も時間が経ってくるとアップデートが必要ということなのかなぁと思います。その「知識」をアップデートするために、新しい「情報」を仕入れる必要があるのかなというのが僕の理解です。

その時のトレンドや手元の作業を効率化するためのノウハウも定期的に仕入れて、今までの自分の「知識」をアップデートするようにすると継続的に強い「知識」になるのかなぁと思っています。

おわり

というわけで、何か知識を深掘りしたい分野があった時にさらっと情報だけを集めてもあんまり実用的じゃなくて、情報を解釈して転用できる形に理解し直していつでも引き出せるように自分のデータベースにしまっておくこと(=知識)が大事だなぁと思いました。そして新しい「情報」でその知識をアップデートするようにすると、更に強い知識になるのかなと考えています。

抽象的な話になってしまったけど、あの時に話をしてた後輩にこの投稿が届け!

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