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『Rise of the Ronin』が本当の意味で自分にとって敷居の高い作品になってしまったかも、という話。久坂くんに脳みそ焼かれた

 1864年、禁門の変。多くの死傷者が出た。京都は炎に包まれ、家屋が倒壊した。その様子を、ひとりの浪人の目を通して目の当たりにしている。御所を守る会津・薩摩と、多数の攘夷志士を抱えて攻め入る長州の衝突。志士を率いる久坂玄瑞は、浪人とは浅からぬ因縁を持つ男だった。しかし勝海舟が示す幕政改革の未来に光明を見出した浪人は、いまや久坂の敵である。

 両者が刃を交えたのち、長州の大敗で事件は収束。久坂玄瑞は自刃にて25年の生涯に幕を閉じた。ひとつ、浪人に呪いを残して。

――このゲーム、クリアできないかも。


 『Rise of the Ronin』(ライズ オブ ローニン)は、激動の時代である幕末を舞台にしたオープンワールドアクションRPGです。プレイヤーはひとりの浪人として幕末の英雄たちと関わりを持ち、やがて倒幕派につくのか、佐幕派につくのかを決断していくことになります。

 私はこのゲームを「日本の夜明けが自分の手で切り拓けちまうぜ~」なんて軽い気持ちで始めました。実際、ストーリーは感情移入しやすい導入部分がとくに秀逸。片割れや村山たかといった存在が、浪人の中にうまく使命感を持たせてくれます。

 またアクションゲームとしても、幕末の空気感を味わうオープンワールドとしても中々良質。石火(いわゆるパリィ)による熱い攻防と、すごく丁度良い密度で100%を達成したくなる塩梅の探索要素が気に入りました。そんなこんなで、各地の収集をこぼさずにやっていたらプレイ時間が70時間弱になっていましたよ。

 そうして、倒幕と佐幕の狭間で揺らぎながら物語を進めていくと、これまで横浜と江戸で長く行動を共にしてきた久坂くんたち倒幕派と、ついに京都で敵対することに。それが前述の禁門の変です。

 いや、江戸で浪人(自分)の考えが佐幕派に傾いた時点で、ゆくゆくは敵対することがわかってはいたんですよ。わかっていたのだけども。

 この『Rise of the Ronin』というゲーム、主要な人物たちには「因縁ミッション」と呼ばれるキャラクター掘り下げ&浪人と仲を深めるサブイベントが用意されておりまして、これがなかなか憎い。このミッションをクリアすることで、思想を違える人物ともある程度「分かり合えて」しまうわけです。

 思想の根っこは理解できども、あまりに過激な方針ゆえに久坂くんには着いていけないなと感じたころ、因縁ミッションで考えを改めることもできる側面が見え始める(ごめんなさいが出来る男・久坂玄瑞)。でもやっぱり、どうしても譲れない部分で、浪人とは対立してしまう。つらい。

 でもこの「譲れぬ思想のぶつかり合い」は『Rise of the Ronin』の最大の魅力だと思います。

 なにより、最後の戦いの最中で発せられた久坂くんの「お前のおかげで、私は少しだけ変われた。」という言葉は、浪人の心に刺さって抜けなくなっています。

 だけど、本当に浪人の心を刺してきたのは、その後。

 久坂玄瑞には、杉 文(すぎ ふみ)という妻がいます。禁門の変で久坂が自害したことで、未亡人となってしまった彼女は、人の役に立ちたいという願いを持つ心優しい人物。文さんのそんな気持ちを汲んでいた久坂くんは、自分の運命を知ってか、彼女に手紙を遺します(例のごとく因縁ミッションで明らかになる)。

 文さん曰くそこには、「(人の役に立ちたいという)思いを認め活かしてくれる人を見つけた」という内容が記されていたと。その人とは、思想を違えたはずの浪人のことだと。あろうことか「自分の身に何かあった時は(浪人を)頼るように」と遺したと。

 いつ書き記したかはわかりませんが、刃を交える予感は確実にしていたはず。そして、その場合は文さんにとっても本当は仇に等しいであろう浪人を、久坂はそのように評したのです。

 このイベントを見たとき、情緒がおかしく……

 久坂くんとは納得のうえでやりあったわけですが、文さんに対する罪悪感のような気持ちはまた別で。申し訳ない気持ちでいっぱいになったのです。文さん(cv:能登麻美子さん)の優しい声音がまた、浪人の心を締め付ける。

 史実でも多くの手紙が遺されていたそうですが、それを逆手にとってそんなものを遺させるとは……恐るべしコーテク。

 そういうわけで、当初の印象よりもずいぶん好きになってしまった久坂くんに遺された呪い(?)によって……文さんに対して、ひいては『Rise of the Ronin』に対して敷居の高さを感じているわけです。「敷居が高い」って、本来の意味だとなかなか使う機会がなく感じていましたが、ひさびさに感じました。敷居。

 あのさ、選択が重いよローニンくん。夜が、夜が長い。これから先、さらに決断を重ねるには、私の覚悟が足りていない。だから、夜明けを見ることになるのはもう少し後になりそうです。以上、プレイ時間70時間弱、未クリア浪人でした。でもいつか。

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