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私のこれまで、そしてこれから:人材の育成と食のネットワークで革新を起こす

目標:人材の育成と食のネットワークで革新を起こす

私は2019年にコンサルタントとして、国家戦略プロフェッショナル検定「食の6次産業化プロデューサー(食Pro.)」のレベル6の認定(最高段位・現在国内1人)を受けることができた。

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ただ、ここまで来るには平たんな道のりではなかった。高知県という地方で、コンサルタントとして仕事を確保するためには、能力や実績を示し、存在を知ってもらう必要がある。「食Pro.」制度の誕生は、食品分野の職務能力の証明という意味では画期的な制度であった。

①実家の農業を継がず食のプロ人材になりたいと決意

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思い起こせば27年前の大学4年の頃。高知県の農家の長男として生まれた私だが、二つ下の弟が農業をやりたいと宣言したため、とりあえず東京の大学でつぶしのききそうな経済学部に進学し、どんな業界・仕事をすべきか迷っていた。


高知に帰りたいが実家はない。農業を継がない私が高知で何をやりたいか。「やはり私は農業はしないが農業に貢献できるような仕事をしたい」「農産物を中心に食の分野でプロフェッショナル人材になろう」と、高知県内の地域づくり系のシンクタンクに就職した。大げさにいうと、あの頃の私は、弟が農業経営で困ったときに、瞬時に駆けつけ、一瞬で解決できるスーパーマンになりたいと思っていた。


ただ、現実は甘くなかった。まず、田舎のコンサルタント業は自分で仕事を選べない。法律や行政の方針等で、行政からはさまざまな分野の調査や計画立案の依頼がくる。20代は福祉・観光・森林・集落・町づくりととにかく依頼があった仕事は受け、専門家でもないのに付け焼き刃的に勉強してなんとかこなしていった。


今のような農業や加工品開発に関われるようになったのは、高知県が東京都内にアンテナショップを持つようになってから。30代になってやっと、農産物の流通や加工・販売などその分野の勉強をするようになった。ただその時は、付け焼き刃的な勉強で、売れる商品づくりのアドバイスができるわけでもない。


悩んだ末、一度、どっぷり食品のことを実践的に勉強しようと、35歳の時に会社を辞め独立。そして、何を血迷ったか、高知市内に高知県産のものばかりを扱うアンテナショップを開業してしまった。

②起業・失敗・再出発、生産者・販売者・消費者をつなぐ役割へ

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そこからが苦労の連続だった。高知県内の農産物および加工品を販売するにあたって、仕入れ・品質管理・店舗運営・販促活動など、お店を経営するために必死で勉強した。ただ、あまりにも自分が知らないことが多すぎることが分かり、理想と現実のギャップに途方に暮れ、わずか2年半で立ち行かなくなり店を閉じてしまった。農家さんにとってのスーパーマンになれるはずもなく、残ったのは大きく傷ついた失敗の経験であった。


ただ、その時に、本質的に気がついたこと。それは、生産者の立場、販売者の立場、消費者の立場、それぞれの立場に立ってコーディネートするプロ人材。まさに「食Pro.」の存在が農業界・食品業界には必要だということだった。

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そこから私は、たった一人でできる仕事として、コーディネート役に徹しようと、商品開発のコンサルタントとして再出発した。生産者の経営目標に向けて、まずは特定の売り場を決め、販売者と消費者の声を聞きながらの商品企画・製造・販売支援。自分が売り場を持っていたときにできなかった売り場イン・消費者インの視点。もう自分にはお店がないがゆえにたどり着いた手法だった。

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この手法のおかげで、商品完成後には確実にお店で販売され、その後の展示会・商談会を通じて全国に流通した。そんなプロジェクトに複数関わることができた。食のプロになりたいと決意してから27年後の2019年の春。全国初となる「食Pro.」最高段位・レベル6の認定を受けたときは、目指す人材像に近づけたようで、涙が出るくらいうれしかった。

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高知新聞の記事(短縮URL)
http://urx.blue/1wRy

③高知県で唯一の「食Pro.」人材育成機関「高知大学土佐FBC」の教員に

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「食Pro.」の人材育成機関が高知県に存在する。高知大学土佐フードビジネスクリエーター人材創出(通称:土佐FBC)である。土佐FBCは、生産・加工・流通・販売を総合的につなげることができる専門人材を育成することを目的に、高知県の産学官が連携し、主に県内の社会人向けに食品に関する専門教育プログラムを実施している。


2008年度からスタートし、これまで12年間で延べ約570人(学外教室含む)を輩出し、修了生はフードビジネスクリエーターとして食品メーカーや行政、団体などの各分野で活躍している。


教育内容は、とても充実しており、座学「食品学」「マネジメント」「品質管理」と、実習の「実験技術」「現場実践学」の合計121時間を1年間で履修するもので、「食Pro.」レベル3までの資格取得にも対応したプログラムとなっている。

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私も2018年度から土佐FBCの教員として声がかかり、特任講師として、「食Pro.」レベル3に対応したマーケティングおよび事業計画の講義を担当している。私は体系的・本格的に学問を学んでいるわけではないので、いまさらながら基本の理論を再認識しつつ、自分が手探りでやってきたことがどう関係しているのか、理論と経験の組み合わせで、分かりやすく伝えることに今必死である。

④食のネットワークの力で瞬時に課題解決ができる仕組みをつくりたい

今、私が曲がりなりにも「食Pro.」として、コンサルタントと教員の2足のわらじを履きながら活動していて、痛感していることが二つある。まずは教育。私のように食のプロ人材になりたいと思っても知らないことがありすぎて、体系的・計画的に勉強できなかったため、手探りでかなり遠回りしてしまった。12年前に始まった土佐FBCにもっと早く入学すれば良かったと今後悔している。


次に各業界・専門人材とのネットワーク、連携・コラボレーションである。私が若い頃になりたいと思っていたスーパーマンは実は存在しない。人は誰しも強み・弱みがあり、弱みはなかなか克服できない。短期間で課題解決をするためには、餅は餅屋の精神で、1次・2次・3次の強みを組み合わせることが有効である。それが有機的に一直線につながった瞬間、商品および流通のイノベーションが生まれると信じている。

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このため、今は自分がスーパーマンになることはすっかり諦め、1次産業、2次産業、3次産業、さらには異業種・専門家のネットワークを構築することに力を注いでいる。もし、将来、日本の農業、食の業界が危機的状況となったとき、そんなときはないとは思うが、いつでも出動できるチーム・ネットワーク(コミュニティ)をこれから作りたいと思う。

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