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017.『あがり症コンプレックス』

ーーゲスト紹介ーー

瑞慶山 剛(ずけやま ごう)
名桜大学国際学群2年。沖縄県那覇市出身。現在は沖縄で5拠点生活を営んでおり、最近ホームレス生活から解放された。現在は学生をしながら事業の立ち上げを行なっている。Let's 代表。瑞慶山さんのツイッターはこちら。

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どんなコンプレックスでした?

ぼく、昔はとんでもないあがり症だったんですよ。人から見られてるということが異常に気になってたんです。緊張して、何にも喋れなくなることが日常的にありました。人と話してるときに下手なことを言って恥をかきたくない、文句を言われたくないという気持ちが強かったんですね。

とくに女性と話すのが苦手でした。男性であれば、自分も男性だし考えてることがわかりやすので苦手意識はあまりなかったんですが、女性に対しては事あるごとに、陰口を言われてるんじゃないか、キモいと思われてるんじゃないか、という恐怖を感じていました。

ぼくがそんな風になったきっかけは、中学生の時の出来事です。それは在校生300名の前で、代表として話をしなきゃいけない場面でした。ぼくにとってそんなに大勢の前で話をするのは初めてだったので、用意した原稿を手にマイクの前に立つと、頭が真っ白になったんです。

あまりの緊張に声が震えて、手と足も震えて、持ってる原稿用紙が震えてマイクにバサバサ当たってたくらいの精神状態でした。その姿は、生徒たちとしては面白かったんでしょうね。突然大爆笑が起こって、どうしようもなくなったぼくは立ってた台を降り、話をしなきゃいけなかったのに何もせず席に戻りました。

その出来事がめちゃくちゃトラウマになって、人前に出るときはもちろん、人と話すときにも緊張して頭が真っ白になるようになったんです。中学のときは野球部に入っていまして、そのトラウマはプレーにも影響するようになりました。試合に出るときが特にひどくて、バッターボックスに立つと足がガクガク震えて、バットを振っても全然当たらないんですよ。

ポジションはキャッチャーだったんですけど、ピッチャーまでボールを投げ返すことでさえ緊張するとできませんでした。一度大暴投したことがあって、それが怖くてタイムを取って手で渡しにいくのをよくやってました(笑)。

緊張してなければ打てるし、投げられたんですけどね・・・。緊張すると体が強張ってダメでした。思い通りのプレーができないことは悔しかったです。けど、一番嫌だったのは「どうせあいつはダメだ」と期待されなくなったことでした。ぼくが試合に出ると「あいつが出るんだ」、バッターボックスに立つと「緊張するなー!」「堅いぞー!」って半分茶化すような声援がかけられるんですよ。

それは緊張をほぐそうとしてくれてたのかもしれないですが、とはいえみんな、あがり症と言えば端慶山みたいな認識を持つようになってました。「どうせぼくはダメだ」と、自分でも自分に期待できなくなるのは辛かったです。

どうやって乗り越えました?

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きっかけは、コンビニで見つけた一冊の本でした。『一対一でも大勢でも人前であがらずに話す技法』という本だったんですが、そのタイトルに惹かれて気がつけば買ってました。でも今まで散々努力して改善しなかったあがり症が治るわけないよなと、あんまり期待はしてなかったんですが、なんとその一冊で治ったんです。信じられないですよね?ぼくも信じられなかったです(笑)。

その本の内容は『見られてる意識』と『見ている意識』にまつわるものでした。実際の本の内容を用いて説明するとこんな感じです。プレゼンをするとき人は緊張するけど、家族とご飯を食べているときに緊張しないのはなぜか?それは、プレゼンが人に見られていることを意識して行うものだからです。

一方、家族でご飯を食べているとき、自分は相手を見てるんですね。だから緊張しないんです。だからプレゼンのときだろうと誰と話しているときだろうと、自分が見てる側に立てばいい、ということが書かれていました。

で、人と話すときにそれをやってみたんです。すると確かに、あんまり緊張しなかったんですよ。案外喋れるじゃんと安心できて、それから気持ちががらっと変わりました。ぼくのあがり症の原因は、自分がどう見られてるかを気にしすぎることなんだと、その本のおかげで理解できました。

それから授業のときなど人前で話すときは人の顔を見すぎるくらい見ながら話すようにして、あがり症はだいぶ改善しました。でも、まだ女性と話すことだけは苦手でした。女性と話すときは、嫌われたくないという気持ちが先行して、どうしても見られ方を気にしてしまっていて。

ぼくはただ笑って喋ってるだけなのに、相手の女性から「ニヤニヤしてるのが怖い」と言われたこともあり、信頼できる女性としか喋れなかったんです。しかし、そんな悩みはアフリカで死にかけてから吹き飛びました。

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大学1年の夏に、アフリカに行ったんですよ。ザンビアの青年海外協力隊の方からザンビアで草野球チームを作りたいというお話をいただいて、とんでもない不安を抱えながらSNSで野球道具を集めて、大反対する両親を押し切って行きました。

それは良かったんですが、ザンビアからタンザニアに遊びに行ったときに、調子に乗って現地の生モノをたくさん食べてしまいまして。その次の日の朝5時くらいにものすごい腹痛で起きて、上からも下からも大洪水になったんですよ。

とにかく出るものが全部出るまで出しまくっていると、暑いのと苦しいので汗が滝のように出て、今度は熱中症になったんですね。頭が痛くて意識も朦朧としてきて「これ死ぬな」って思いました。でも、そのときに強く思ったのは「死にたくない」ではなくて。「沖縄でもっとやりたいことあったのに」という後悔の念が先に立ったんです。

ちなみにその体調不良は寝たら治りました(笑)。でも「女性に嫌われたくない」という気持ちを吹き飛ばすには十分すぎた経験でした。それから一人に嫌われるくらいどうでもいいやと。

あの橋本環奈さんでさえ嫌う人がいるんだからぼくが嫌われるのは当然だし、そんなこと気にしても仕方ないなと、ありのままの自分を出していこうと思えるようになったんです。尋常じゃないくらいキツい体験をしたからか頭のネジが何本か飛んだみたいで、むしろ嫌われるのっておもしれえじゃんって感じでした(笑)。

昔の自分に対してどんな気持ちですか?

正直に言えば、昔の自分は一番絡みたくない人ですね・・・(笑)。自分の嫌な面を持ってるのが昔の自分なので。人前でどもったり、恥をかくのが嫌で嫌でたまらんというような昔の自分とは絡みたくないなと思ってしまいます。でもその経験のおかげで、人前で緊張する人たちの気持ちがわかるし、力になりたいと思えるのは良かったですね。

あとぼく、小学2年生の頃は無口で全然笑わない少年でした。そのとき友達に「もっと笑えよ」と言われて笑う練習をしたんですけど、ニヤニヤ笑うのが癖になって戻らなくなっちゃって。それを気持ち悪がられることが多かったんですが、恩師に「剛くんの笑顔はいいね。笑顔は感染するね」という言葉をもらって、笑顔の練習してくれた昔の自分に最近感謝したことがありました(笑)。

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最後に、同じく人前に立つとあがってしまう方々に向けてメッセージをお願いします!

あがり症は治ります!!ぼくも部活の先輩とかに「お前のあがり症は治らねえよ」って言われて間に受けてたんですが、治りました。あがり症を治すには、経験者に話を聞くのが一番です。

あがり症に悩んでた頃はとにかく人前に立つ練習をしようと思って、学年の委員長などをやってたんですけど、人前に立つたびにやっぱり頭が真っ白になって自分が嫌になるという無限ループにはまってました。

あがり症を治すためには、まずちゃんとしたマインドを手に入れることが必要なんです。本を読んだりググったりして、自分が緊張してしまう原因を明確にして、緊張しなくなる考え方を手に入れることが大事。その考え方として、見られる視点と見る視点はおすすめです。人と話してるときの自分を思い返して、見られてる意識なのか見ている意識なのかを把握しましょう。

もし見られてる意識に捉われて人目を避けようとしているのであれば、見る意識に視点を変えていく努力をしてみてください。相手の表情や目の動き、口角の動き方なんかをまじまじと見てみると、意外と相手は自分を嘲笑ってる感じじゃないなとか、友好的な笑顔を向けてくれてるなといった発見があるはずです。

ちょっとずつ人との会話に安心感が持てるようになったら、発表系の授業を取って人前に立つ回数を増やしたり、グループディスカッションに参加して得た考え方を自分に慣らしていってほしいです。いきなり完璧に喋れるようになるのは難しいけど、少しずつ喋れる自分を実感していくと、いつの間にかあがり症は治っています。

昔はぼくも酷いあがり症でしたけど、今は誰も信じてくれないくらい喋るのが好きになりましたし、人と関わるのが好きになりました。人とご飯を食べるのが好きすぎて、一人で食べるご飯が美味しく感じられないほどです(笑)。

今は人と話すのが怖くても絶対に克服できます。克服する過程は傷つくのを恐れないということではなく、人間関係の中に少しづつ安心できる材料を探していくことです。あなたがどんなに不安でも、ぼくは「あがり症は治る」と言い続けますよ。ぜひ、この言葉を一つの安心材料として持ち続けてください。

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