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独身男性が東京の銭湯を勝手に評価する(その16):ふたつの「えびす湯」

今回は東京豊島区、北区にある同名の銭湯を紹介します。

※新型コロナウイルス感染症の影響で、営業日や営業時間を一時的に変更している銭湯が多くなっています。
本稿では最新の情報の発信を心掛けておりますが、実際の営業についての確認は各銭湯にお願いします。

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■ えびす湯(北区)・・・昭和の香りのする映画のセットのような銭湯【83点】

新1万円札の肖像にもなる「日本の近代産業の父」渋沢栄一が私邸を構えた北区王子の飛鳥山。現在では渋沢栄一邸を改装した資料館や、王子に根付いた製紙業を扱った「紙の博物館」などの文化施設を備えつつ、都内有数の桜の名所としても知られる地域の憩いの場となっている。

飛鳥山公園の目の前を通る大通りを隔てて反対側、少し奥まったところに「えびす湯」の入口がある。煙突を目印にすると迷いやすいので、公園を反対側に見て大通りを進んでいくと銭湯の幟や併設するコインランドリーに行き当たる。

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初めてえびす湯を訪れたのは5月の連休で、五月晴れのゴールデンウィークには珍しく、台風のように雨風が吹き付ける日の夕方だった。
日はまだ出ていたものの、銭湯はどことなく薄暗かった。番台のおじさんも小声で、あまりこちらに干渉しないタイプ。

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脱衣所は見事な格天井で、壁には銭湯組合が企画する薬湯イベント(土用丑の日の桃の葉湯など)のポスターが並べて貼られている。浴室は青と白を基調としたタイル貼り。浴室の面積に比べカランの数が少なく、かなりゆったりした空間使いになっている。

奥の壁に設えられた浴槽はひと続きで、一応向かって左側のジェットバスのある白湯と、右側(女湯側)の日替わり薬湯に仕切られているが、隙間があるのでどちらもほぼ同じ湯質と考えて差し支えないだろう。

初訪問時はちょうど子どもの日だったので、浴槽に菖蒲を立てて菖蒲湯が振舞われていた。湯温は41~42℃。場所によっては熱湯の吹き出し口があるので、注意が必要だ。

立ちシャワーがあって水も出るのだが、あまり出が良くない+水温が高めなので、交互浴っぽくしたい場合は時間をかけるとよい。また、湿式サウナに無料で入れるが、行くたびにシンプルなお風呂でなぜか満足してしまい、使う機会に恵まれていない。

ここまで書くとシンプルで味気ない銭湯のように思われるかもしれない。確かに、わかりやすい特徴のない、言ってしまえばなんてことない銭湯だ。しかし、明るすぎず、かといって居心地の悪くない一種独特な雰囲気は唯一無二のものだ。

筆者はここを訪れた時、銭湯を舞台にした2019年の映画「メランコリック」を強烈に思い出した。諸般の理由から詳しいあらすじは省くが、主人公が働くことになる銭湯の、白々した蛍光灯に照らされた、無機質だがその半面で強烈に人の気配を感じる浴室の感じにそっくりなのだ。

ちなみに、この映画のロケ地になったのは千葉県浦安市の「松の湯」で、21年2月に長期休業に入ったため、聖地巡礼は叶わないままだ。

参考:映画「メランコリック」公式サイト

銭湯に行くと大概はリラックスしたり、逆に頭の考え事が整理されて刺激を受けたりするものなのだが、このえびす湯での入浴で受ける感覚はそれらとも全く異なる。

その感慨に名前はまだ付けられていないけれども、いつもなぜか不思議な気分で銭湯を後にすることになる。たぶん、きつい肉体仕事を終えた後、何も考えずにザブンと浸かる入浴に向いているんじゃないだろうか。

えびす湯(北区)
住所:〒114-0023 東京都北区滝野川1丁目1−20
営業時間:15時~24時
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)

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■ えびす湯(豊島区)・・・巨大なタイル絵と岩風呂が壮観【90点】

最寄駅はJR・都営三田線の巣鴨駅とのことだが、徒歩15分とかなり距離がある。住所地は豊島区駒込の外れの方で、北区西ヶ原からも近い。ちなみに、前述の北区のえびす湯からも徒歩圏内なので、同日中にはしご銭湯できる

「えびす湯」の「び」の字がなんかズレてて面白い

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さて、こちらのえびす湯は脱衣所が奥に広い横長の空間になっている。浴室はゆったり広く、目立つのが男湯女湯の仕切りをぶち抜いて奥の空間にまるまる描かれた、巨大なタイル絵だ。

熊本県島原の景観を描いており、番台のお父さん曰く、(ホントかどうかわからないが)日本で一番大きいとのこと。

また、天井を4色の帯で塗り分けているのも独特だ。色味が全体的に目に優しく、癒される。

浴槽は3つあり、一番大きいのはジェットバス、ミクロバイブラなどを備えた広々した白湯だ。ラジウム鉱石が置かれたラジウム鉱泉になっていて、疲労回復や新陳代謝に効果があるとのこと。

向かって左奥側が、台東区の燕湯を髣髴とさせる見事な岩風呂になっており、旅館気分も味わえる。湯温は40℃程度だが、ラジウム効果なのか、短時間で体がホカホカになる。

白湯の隣、壁際にそって作られた3~4人程度の浴槽が日替わり薬湯。さらにその隣、一番入口に近いのが水風呂だ。温度は22℃くらいとぬるめかつ浅いので、じっくり漬かって交互浴したい。

電車の便が悪いためなかなか遠征者も来ないだろう。代わりに地元の親子やお年寄りが集まる賑やかな空間。にこやかな番台のお父さんのキャラクター含め、何度でも訪れたくなる良き銭湯だ。

えびす湯(豊島区)
住所:〒170-0003 豊島区駒込7−15−9
営業時間:15:30−23:30
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)

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ここまでお読みくださりありがとうございました!

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