現役コンサルがおススメするビジネススキル本5選

現役コンサルタントの端くれが、読んで仕事に役立ったビジネススキル本を紹介します。

■ 世はビジネススキルブーム

ロジカルシンキング、仮説思考、PDCA…この数年のビジネス本ブームは収まる気配がないように見えます。一説には2009年の「もしドラ」が火付け役になって平易な記述のビジネス本が広まったとも言われますが、キャリアアップのための転職が一般化したことや、AIやロボットの興隆で仕事がなくなるかもしれないという危機感が増したことでスキルアップのニーズが伸びているためでしょう。本屋にも考え方や話し方の本が平積みになっていますよね。しかし…

こういう本って、役に立ってます?

ぶっちゃけ話として、この記事を読んでくれている方は胸に手を置いて思い返していただきたいのですが、いわゆるビジネススキル本を読んだことによるメリットって、本当にありましたか?

前段の問いで、自信をもって「はい」と答えられる方がいたら、お見それしました。とはいえ多くの方は少なくとも1,2冊は「あの本、読んだけど使えなかったな」という思い出があるのではないでしょうか。

■ コンサルタントが選ぶビジネス本5選

私はコンサルタント(の見習い)なので、自己投資や好奇心から本を多く読んでいます。そんな読書経験の中で、ビジネススキル本のおススメを5点ご紹介します。
※ここでの「ビジネススキル」は経理や財務みたいに特定の職種で使うスキルではなく、広く社会人に当てはまる基本的な思考法、行動法を指します。

①Shin「コピー1枚取れなかったぼくの評価を1年で激変させた7つの仕事術」(ダイヤモンド社)

外面から受ける印象よりも本質を突いている質実剛健な内容

どんな社会人にも要求される「吸収力」「主体性」「目標設定力」「思考力」「資料作成力」「コミュニケーション力」「思考力」の7つの能力に焦点を当てていて、明日から使えるアクションに落とし込まれているのが高評価。
私は特に「思考力」を上げる5つの質問言葉(「具体的には?」「理想は?」「そもそも?」「一言で言うと?」「なぜそう言えるのか?」)をよく使います。こうした短い言葉を相手とのやり取りに挟むだけでコミュニケーションがぐっと深まるのがわかって、とても興奮しました。
なろう小説みたいなタイトル(失礼)と平易な表現のわりに、本質的かつ実用的なTipsがふんだんに盛り込まれた本。著者の経験に基づくストーリー形式で書かれているので読みやすい。
おススメする層:1~2年目の若手社会人

②遠藤功「『見える化』勉強法 『現場』から発想する思考術&トレーニング」(日本能率協会マネジメントセンター)

仮説思考やフレームワークへの疑問を解決してくれる、「かゆいところに手の届く」本

欧州系戦略コンサルティングファームの日本法人の会長を務めた遠藤氏は、特に現場を重視するアプローチで知られています。これもそのテーマに根差した内容になっています。
巷では「仮説思考」や「ロジカルシンキング」の皮相なテクニックを紹介するだけの本も多いのですが、この本は「質の低い仮説に価値はない」「精緻なロジックほど嘘っぽい」とバッサリ切り捨て、特に現場に足を運んで丹念に情報を集め、発想を飛ばして思考することを薦めています。
自分で情報を集めて加工して、人に伝える。ある意味では当たり前ではあるのですが、なんとなく体系化されたフレームワークとかに縛られてしまうと、こうした泥臭い作業を厭うようになってしまいがち。
おススメする層:自省も込めて、3~5年目の若手社会人

③山口周「外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る『99の心得』」(光文社)

知的業務のプロフェッショナルたるには?

戦略系ファームを経て、人材・働き方に特化したコンサルを行う山口氏の新書。同氏はプレゼン資料作成のノウハウやプロジェクトマネジメントの本なども出されているが、本書が最も包括的かつ読み進めやすいのでおススメします。
個人的に印象深いのは、プロは80%程度の労力で、顧客の要求する最低水準をクリアすべきという記述。甲子園球児は大会の毎試合に全力投球しますが、プロ野球選手は年間のペナントレースを通じて毎試合100%コミットすることはしない(し、できない)というたとえ話に思わず納得しました。
そしてマネージャーの役割は顧客の期待値を実現可能な水準にコントロールし、スタッフに適切に指示を行うことだと言われています。
ぶっちゃけ話、期待値のコントロールや最低水準の設定が下手なコンサルも結構います…。今上司の下で働く人は自分の職場で思い浮かべられる方が一人はいるのではないでしょうか?指示内容が「適当に○○しておいて」「なるはやでお願い」だったり。ちなみに同書では、行動計画の立てられない「なるはや」は論外とされています。

こうしたチームマネジメント的な記述以外にも、個人の勉強法や行動に関する有益なヒントがたくさん盛り込まれているので、気になったところから読むといいでしょう。
おススメする層:はじめて部下を持った中堅社会人

④高田貴久「ロジカル・プレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの『提案の技術』」(英治出版)

徹底して本質を追及する

架空のコンサルと事業会社が新規事業を立ち上げる取り組みのストーリーと、その解説という体裁で書かれているので、読みやすく、かつ解説パートもわかりやすい構造化と具体化がバランスよく行われているので理解しやすい内容です。幅広い層のビジネスパーソンに支持され版を重ねているのも納得。
とにかくロジカルシンキングだとMECE(漏れなくダブリなく)という考え方だの、流行り言葉(悪く言えば、思考停止ワード)の本質を徹底的に分析しているのが特徴。たとえば自分の提案(主張)が相手に納得してもらえないのは、縦の論理(事実と意見を結びつけるロジック)が欠けているか、横の論理(全体像にモレがある)かのどちらかだと言われており、読んだ瞬間、「その通りだよな!」と思わず膝を打ちました。
こんな感じで全体通じて、よく言われている内容の本質を剔抉していくので、表層的なテクニックを適当に身に着けるよりずっと「使える」考え方が手に入ります。

おススメする層:上司や先輩の「もっと論理的に考えて」「言いたいことがわからない」というフィードバックにうんざりしている若手社会人

⑤菊地麻衣子「誰からも好かれるさりげない気遣い 後になってから気づいてもらえる、好感度UPのマインドとコツ」(フォレスト出版)

仕事での対人関係に悩む人に

私がコンサルタントになって一番驚いたのは、対人コミュニケーションの機会が非常に多いこと。ロジカルシンキングがボロボロでも、対顧客のホスピタリティが抜群で、それ一本でパートナー(コンサルティングファームの経営層)にまで上り詰めた人もいるとかいないとか…
もともとリサーチ出身の私は人より文献に向き合う方が得意なので、対人関係で失敗ばかりしており、上司から「ビジネスマナー勉強し直せよ!」とよ怒られまくっていました(社会人4年目なのに!)。自分はダメなのかもしれないと思っていたころに出会った本です。
筆者はビジネスマナーとかルールに縛られすぎずに、その場に応じた気遣いをすべしと説いています。自己満足や単なるポーズとしてのマニュアルの実践以上に、重要な考え方や行動の指針が紹介されています。
例えば、女性と男性では脳の構造的に考え方が違い、女性は共感を、男性は情報共有を求める。それを踏まえると、女性脳の人(必ずしも女性=女性脳とは限らない点に注意が必要です)を誉めるときには、結果に至った過程を評価することを心掛け、逆に男性脳の人にはストレートに結果を評価するとよい、ということが導かれます。
これを読んで、男性の同僚にはストレートに結果や提案をぶつけ、アシスタントの女性に仕事を依頼する際にはストーリーとして背景を丹念に説明するなど、人それぞれの快いコミュニケーションを心掛けるようにしたところ、少なくとも以前よりは人間関係で悩むことはなくなったと思います。
このように原則(ここでは女性脳と男性脳の違い)とアクション(ほめ方)がセットになっているのでとても実践しやすい内容になっています。

おススメする層:ビジネスマナーから卒業したい若手社会人

ストックがたまったらまたご紹介したいと思います。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

(どうでもいいんですけど、この記事みたいに「~~のおススメ○○選」みたいなタイトルの記事、○○のところに、13とか22とか中途半端な数字が入るとモヤモヤしません?「選」とか言っときながらろくに吟味せずに調べたもの全部載せたんだろうなーって感じがします)

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