※珍しく真面目なことを書いています。

いよいよ開会まで一週間を切った東京五輪。それに先駆けた7月6日（火）、選手壮行会がライブ配信されていたので、仕事の傍らスマホで見ていた。決して仕事をサボっていたわけではない。

その中で気になったのが、以下のような趣旨のコメントである。
「ここまで来たんだから応援するしかない！」
「もう開催は決まってるんだから、みんなで応援しよう！」

ちょっと待ってくれよ。
そんな時間切れだからOKみたいなことあるか？

予め明言しておくと、私はオリンピックの開催自体は完全反対というわけではない。スポーツクライミングの野口啓代選手だったり、テニスの錦織圭選手だったり、今大会での引退を表明、もしくは競技年齢的に今大会が最後の五輪になりそうな選手もいる中で、そういう選手が国を背負って戦う姿を見たいという気持ちは強い。

無観客にする、選手や関係者の移動は一定のバブルに限定する、ワクチン接種・PCR検査を行うなど感染予防策を徹底できるならば、ウィズコロナの国際大会運営を巡る重要なケースとしての価値もあるだろう（現時点では、そういう当たり前のことすら運営委の手にかかると困難に見えることが問題なのだが）。

ただし五輪開催自体に否定的な向きも相当程度いることは、これまでの世論調査からも明らかな以上、そうした人たちの意見を無視することはあってはならない。そして、今大会の運営を巡るガバナンスは、徹底的に分析される必要があるだろう。

菅首相が国連特別総会など公的な場で語った「人類がウイルスに打ち勝った証」としての大会の位置づけは、東京への4度目の非常事態宣言発出、ワクチン接種完了の遅れで形骸化どころか跡形も残らず蒸発したように見える。

そもそもコロナ前から、これまでの気象データからも猛暑や台風が予想される時期での開催が強引に進められ、女性を蔑視した言動により組織委の会長、開閉会式の演出総合統括の辞任など、スポーツをめぐる政治とガバナンスの問題がこれほど注目された大会もなかったのではないか。

開催自体はもう既定路線というか決定事項として進む中でも、個々人の異議や疑問は積極的に発出・共有されるべきだし、また大会後も活発な議論・検証がなされるべきだ。

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近現代史研究家の辻田真佐憲（つじたまさのり）氏が著書「超空気支配社会」でまさにこのことに触れ、太平洋戦争時の軍部の論調と比較しながら論じていたので、少し引用したい。

「戦時下の軍人や官僚たちも、けっして合理性を書いたわけではない。にもかかわらず、空虚な精神論がはびこったのは、不可能な状況に無理やり適応しようとしたからだ。
国力も足りない、物資も足りない。明らかに米英の方が強い。必敗なのに、必勝といわなければならない。ではどうするか。精神力だ。ピンチはチャンスだ。われらに秘策あり。こう叫ぶしかない。狂気とも思える言動はある意味で、合理的な帰結だったのである。
それゆえ、東京五輪に関するおかしな状況には異議を唱え続けなければならない。そこに過剰適応して、「もう開催するのだから、文句をいっても仕方がない」「一人ひとりがボランティアなどで協力しよう」などといってしまえば、問題点が曖昧になり、関係者の責任も利権も問われなくなってしまう

ー辻田 真佐憲「『暑さはチャンス』なぜ東京オリンピックは「太平洋戦争化」してしまうのか？」（文春オンライン、2018年）

上で挙げたようなコメントを書いた人は五輪に関する意思決定者ではないだろうから、別に追い詰められていたわけではないだろう。

どちらかというと国際的イベント・お祭りだから応援しようという無邪気な反応、ないしは一種の諦めやヤケクソ的な反応だったと考えられるが、いずれにしてもクリティカルな論点を多く残した中での開催だからこそ、開催に対する批判や異議はしっかり表出され、のちの検討材料としたいものだ。

なお私の信条として、あらゆる人は自身の状況や自身を取り巻く社会について異議を申し立てる権利があり、かつその異議申立権ともいうべきものが、民主社会を存続させるために最も重要だと信じている。

先の壮行会でのコメントにも、「選手を応援する場なんだからネガティブなコメントを書くな」的な意見があった。

（誹謗中傷や、アジェンダが設定されている場において趣旨を逸脱した主張をすべきではないという公準はあるが）言論の場こそ万人に開かれているべきで、誰かの意見に対する批判や異議があったとしても、「そもそも口出しするな」というのは極めて暴力的だと思う。

（この件については別に文章を書きたい。）

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普段より字数は少ないのにドッと疲れた。適当に銭湯のこととか書きながらくらしたい。ちなみにここまで、ちょうど2021文字です。

ここまでお読みくださりありがとうございました！