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子供に教えてあげられるれることなんて、実はひとつもない

一昨日、大学生6人と飲んだ。

そのうちの一人、Rくんははまだ彼が小学生だった頃からよく知っている。昔からなんとも言えず自由奔放に生きている子だ。まだ彼が小学生だった頃、よくうちの子たちと一緒になって遊んでいたっけ。そういえば、彼だけ預かってキャンプに連れて行ったこともあった。久しぶりに会ったRくんは少年の頃とまったく同じ顔をしていて、それがなんだか嬉しかった。

2時間くらい話しただろうか? 話はスポーツから勉強、恋愛から就職へと移っていく。

きっと一昔前の大人だったら、ここで社会人としての在り方かなんかについて一席ぶつんだろう。でも、アドバイスできることなんか何もない。

時代の境目すぎるのだ。

5年先のこと、いや、1年先のことだってよくわからない。テクノロジーの進歩があまりにも速く、世の中がどうなるのか想像さえつかない。政治制度は今のままなのだろうか? 貧富の差は? 少子高齢化は? 世界の富の分布はどう変わる? はっきりと言えることなど、何ひとつないのだ。

これは他人の子に限らず、自分の子でも同じだ。

僕は自分の子供に「あれを勉強しろ、これを勉強しろ」といった具体的な指図は一切してこなかった。何しろ世の中があまりに変わっていくから、アドバイスのしようがないのだ。特定の技能を身につけたとして、それが10年後に役立つのかどうかはどうにもなんとも言えない。

それよりも、「技能の身につけ方」がそのものが身につけられればいいと思った。そうすれば、その時その時に必要な技能を身に付けることが可能になる。そしてそれは、必ずしも勉強でなくてもよい。だから基本的に放置して、やりたいことをやらせておいた。

そしたら、長男も次男もミュージシャンになって巣立ってしまった。それはそれでよかったと思う。

親の役割ってなんだろう?
こうして子育てが終わってみると、しみじみと「親の役割ってなんだろう?」と考えさせられる。実は親が子にしてやれることなんかあまりない。衣食住といった生活のサポートして、なるべく色々なことを体験する機会を与えるくらいじゃないだろうか?  何か教えるにしたって、ちゃんと挨拶しろとか、食べ物は粗末にするなとか、仲間を大事にしろとか、せいぜいそのくらいな気がする。

むしろ、だ。親の方が子育てを通じて学ぶことの方がずっと多い。いったいどっちがどっちを育てているのかわからないくらいだ。根気を何度も試され、自分たちのだらしのないところを戒められ、反省を迫られ、子供を信じ抜くことを学ばされ、夫婦で話し合う機会を幾度となく与えられる。

また、子供を育てることで、自分自身もまた子供時代を追体験する。自分たちの時とは大きく変わったこともあれば、あまり変わらないこともある。思いがけないテレビ番組や映画を見ることになる。その時々の流行歌や、自分だけでは絶対に聞かなかったようなジャンルの音楽を聞くことになる。それらはどれも、子供に手を引かれて体験したようなものだ。

そして思い出ができた
Rくんの子供の頃と変わらない顔を見ていると、彼らがまだ小学校低学年だった頃を思い出す。本当にしみじみといい時間だった。

Rくんはやがて日本に帰国し、僕自身の子供らも巣立ってしまって家の中はずいぶん寂しくなったが、代わりにたくさんの思い出ができた。どの思い出も、僕らにとっては何ものにも代え難い。そして、何にかの折につけては子供が小さかった頃や、思春期で大変だった頃の話で妻と盛り上がる。その都度大笑いして、「ああ、なんてありがたいことなんだろう……」と染み入るように感じる。

子育てしてよかったこと、それはもしかすると、色とりどりの思い出ができたことなのかもしれない。あるいは、こんなふうに感謝の気持ちを日々抱くことができることなのかもしれない。その時々にはそれなりに大変だったことでも、思い出になってしまえばなんとも言えず美しく、そして暖かい。

まだ子育て真っ最中の親御さんたちへ
まだまだ子育ての真っ最中で、アップアップしているお父さんお母さんも多いのではないかと思う。もしも僕から一言だけアドバイスをするとしたら、「そんなに気張らずに子供との時間をめいいっぱい楽しんだらいかがですか?」の一言に尽きる。

躍起になろうとなるまいと、ある意味、子供の将来はなるようにしかならない。それに、これから世の中がどうなるかなんて、誰にもわかりはしないのだ。

子供に教えてあげられることなんて、実はほとんどない。教えてもらうことばっかりだ。

そう腹をくくって、ぜひ今を味わい尽くしてください。


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