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民主主義はそろそろオワコンかもしれません

民主主義の前提条件に、「すべての有権者がその思想信条や出自や教育レベルや貧富の差に関わらず、自らの意思を表示できる権利を等しく有する」ものがあります。いわゆる「一人一票」ですね。金持ちだけが一人3票じゃ民主主義とは呼べません。つまり、主権は国民一人一人が等しく持っている、というのが民主主義の大前提なのわけです。

最近ではこの国民主権の意味が分かっていない政治家が登場したりしてなかなか香ばしい様相を呈しているわけですが、国民(このケースでは伊勢崎市民)には、次の選挙でこの政治家にご退場願う権利が与えられているというわけです。

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「一人一票」にはさらに前提条件がある
ただ、この「一人一票」には実はさらなる前提条件があります。それは、「それぞれの人間には自由意志がある」という当たり前すぎるような大前提です。違う意思を持ったAくんからZさんまでみんなめいめいが自由意志に基づいて投票をするから、民主主義が成立するわけです。もしも自由意志が存在しなかったら、それこそすべての前提が根幹から崩れ去ってしまうわけです。

ところでこの「人間にはそれぞれ自由意志がある」という前提条件は、果たして本当なのでしょうか?

どこが自由意志を生成しているのか?

まず最初に人間の脳の役割をザックリと整理してみましょう。一番外側が大脳新皮質と呼ばれる部分で、理的で分析的な思考や、言語機能をつかさどるところです。下等生物では小さく、高等生物は大きい傾向にあります。

なんとなくイメージ的にはこの「大脳新皮質」が会社の社長で、それ以外の部位は日常業務を粛々と回してくれる部下のような感じがします。つまり、新皮質こそが人間らしい自由意志を形成し、それ以外は動物的な機能を果たすところというわけです。

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ここで興味深い実験を一つ紹介しましょう。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のベンジャミン・リベット教授は意思決定がどこで行われているか突き止めようと、1985年にある実験を実施しました。被験者の脳に電極を刺して「指を曲げよう」と意識した瞬間と、実際に「指よ曲がれ」という指令が脳の運動野から筋肉に発せられた瞬間を計測してみたのです。すると、驚いたことに、新皮質が「指を曲げよう」と意識するよりも0.35秒前に筋肉への指令が始まっていていることがわかったのです。

つまり、大脳新皮質は実際に会社がどう回っているか全く分かっていない、バカ殿社長のようなものらしいのです。僕らが日頃「自由意志」と感じているものは、あたかも主体的に自分で決めたかのように錯覚させてくれる機能だったと言うわけです。

本当の主人は大脳辺縁系です

実際のところ、僕らは食欲、性欲、睡眠欲などといった原始的な欲求や、優越感や恐怖感、あるい喜び、悲しみなどといった原初的な情動に突き動かされて生きています。もっともらしい説明は新皮質が生成してくれますが、僕らの中の意思決定者は大脳新皮質ではなく、どんな下等動物にもある大脳辺縁系でなのです。

ちなみにこの大脳辺縁系、血圧、心拍数、呼吸器の調節、意思決定、共感、認知など情動の処理から、恐怖感、不安、悲しみ、喜び、直観力、情動の処理などを行なっています。また、目、耳、鼻からの短期的記憶や情報の制御をするのもこの部位です。ホラー映画を見て恐怖感を覚えるのもこの部位ですし、嫌韓サイトを見て共感や反発を覚えるのもこの部位です。

さてここで、民主主義の前提の前提を思い出してください。人々がめいめいに自由意志を表明して代表を選ぶのが民主主義です。しかし、その自由意志の生成メカニズムは、実は人間でも猿でも大差ないのです。

つまり、民主主義というのは人々の情動に極めて左右されやすいシステムなのです。

情動に訴えかければハックできる

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