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多読多聴は英語の幹を育てるための「土」作りです

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さて、今日は思い切って趣向を変えて、子供の成長と言語獲得のステップを解説しながら、なぜ僕が多読多聴を強く推しているのか説明します。珍しく宣伝をはさみまくってますが、大真面目な記事ですのでぜひご一読を。

さて、僕はよく「多読多聴しないと英語はうまくならない」って言ってますが、これ、本当に心からそう思っています。理由はいくつもありますが、根本的なことを言ってしまうと、要するに母国語も多読多聴で覚えているからです。親兄弟に話しかけられたり、テレビ番組を見ているうちに、脳内に言語を処理する回路ができてくるのです。やがて周囲を真似して発声するようになり、徐々に形になっていきます。

子供は母国語をどうやって覚えるのか?

僕は保育園も経営しているので、ごく身近で子供が言語を覚える姿を日々目にしています。だいたい1歳半ぐらいになると、大人の言っていることをかなり理解します。ただ、まだあまり発話はできません。何しろ幼児は口の筋肉の操作から覚えるのですから、どうしても膨大な時間がかかります。だいたい1歳半くらいで単語レベルが飛び出し始めます。最初は「おみじゅ(お水)」「これ」「ないない」とかそういう感じで出てきて、2歳くらいになると、主語+述語が繋がって文章になってきます。「おみじゅ飲む」「ごはん食べる」「ぼく遊ぶ」とか、そんな感じですね。なお、これには個人差が大きくありますので、数ヶ月〜半年程度の遅れではあまり心配することありません。不安に感じたら、専門医に相談しましょう。

そして2〜4歳までの2年間で語彙と文章が一気に複雑さを増します。これまた個人差が大きいですが、4〜5歳になる頃にはテレビ番組の真似して、ごっこ遊びなどをガンガンやります。言うことも「お父さんは朝早く車で会社に行っちゃうよ。ジョーと僕は2段ベッドで寝てるの。ジョーが上で、僕が下だよ」などなど、ちゃんと話が伝わります。未来をイメージできるようになり、仮定法なども普通に使うようになります。

ちなみに2歳前の遊びというのは、手触りを楽しんだり、小さなオブジェクトを操作したり、分類したりするものがメインです。水を汲んではこぼしたり、色々なものを落としたり、転がしたり、触ったりします。ですからこの時期の幼児向けのおもちゃは、こうした遊びを促すものが多いです。


2歳をすぎると、今度はストーリーを作りやすいおもちゃが登場します。お人形とかクルマとかです。そう、言語の獲得と時期が同じなのです。最初のうちは一人でブツブツ喋りながらやっています。お人形を椅子に座らせて、ごっこ遊びする子もたくさんいます。お砂場で遊ぶのも2歳前だとただ砂を掘ったり盛ったりしてただけなのに、3歳を過ぎるくらいから「ケーキを作りました!」とか言うようになります。そして食べる真似したり、先生のところに持って行って「はいどうぞ、ケーキです」なんてやるようになります。三輪車にまたがって「行ってきまーす」などと言い出すので、「どこに行く?」のときくと「お買い物!」「会社!」「ガソリンスタンド!」なんて答えが返ってくるようになります。電車ごっことかもノリノリです。

その後は言葉の使い方もどんどん巧みになりますし、空想遊びをグループでするようになります。「洗車ごっこ」と称してみんなで三輪車を洗ってみたり、「緊急出動!」となんとか言って、正義の味方や消防隊員になったりと大忙しです。女の子たちはおままごとを始めますが、これはこれでそれぞれのうちのお母さんの様子がよくわかって面白いです。

なお、片親がアメリカ人で片親が日本人のお子さんは語彙が増えるのに少し時間がかかりますが、それでも本当にどんどん覚えます。お母さんの方を向いて日本語で話し、お父さんの方を向いて瞬時に英語に切り替えるお子さんも非常に多いです。中には3ヶ国語を切り替えるお子さんもいます。

多国語環境での子育ての最大のチャレンジは、いかに語彙を広げて行くかです。他の子は起きている時間全てを1ヶ国語の獲得に使うのに、一方で2つを獲得しなければならないのですから、どうしても語彙の発達が遅れがちになります。お子さんをマルチリンガルに育てたい方は、サブの方の言語の語彙をどう補っていくか、相当なサポートが必要です。

「読み聞かせ」と「子供向けテレビ番組」は強い

話を戻しましょう。子供は聞いて語彙を増やし、今度はそれを真似て使って話せるようになっていくのです。要するに、シャードーイングとか音読と同じ理屈です。ですから子供の言語能力を発達させたかったら、「読み聞かせ」と「子供番組の視聴」は大きな手助けになります。

また、子供は世の中の仕組みをまだ何にも知らないので、絵本やテレビ番組から得たインプットを、自分が見たことがある現実を世界と組み合わせて理解を深めていきます。幼児向けの絵本は発達のレベルを考慮して作られているので、0〜2歳児向けくらいの本は、音のつながりが面白い本がメインです。まだストーリーらしいストーリーはありません。これは日本語でも英語でも同様です。

3〜4歳児向けの本になると、「食事」「お買い物」「1日のルーチン」「お天気」「お片づけ」などといった、身の回りの出来事をテーマにしたものが多いです。こういう本を読み聞かせすると、「マルマルちゃんのお父さんも朝会社に行くよ!」「マルマルちゃんもいちご好き〜!」とか横槍を入れつつ、自分の体験と重ね合わせていきます。読み聞かせしながら、「みんなのお父さんはどうやってお出かけするの?」なんて聞いたりして、こうした結びつけを積極的に促してもいいでしょう。

で、5〜6歳児むけになると、ストーリーが一気に複雑になります。中には読み聞かせしてると涙腺が緩むようないい話もあります。空想のお話からお友達とのケンカなどとテーマも広がります。昔話なんかもこの頃からですね。ストーリーが多彩になり、大人が読んでも侮れないものが多いです。

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外国語の習得も実は同じです

で、これはあまり信じてもらえないんですけど、実は外国語もだいたい同じ順番で覚えられます。無論大人ですから世界の理解とかは必要ありません。しかしそうは言っても、カルチャーのギャップはありますし、ネイティブの音の感覚を理解する一助になりますから、あながち子供向けのコンテンツだからとバカにできないのです。

また、4、5歳児向けの絵本ですら、過去完了進行形とか普通に出てきます。また、幼児でも知っているような日常的な単語や言い回しを日本人のTOEIC満点ホルダーが知らなかったりします。ですので、こうした本は意外に侮れません。

例えば、Brightureで発音学習の補助に使っているDr. Susse という人の Green Eggs and Ham という絵本があるのですが、お話自体はアホとしか言いようがありません。しかし、音の繋がりを学んだりなど、発音学習の教材としてはもってこいです。実際、フィリピンにあるアメリカ人向けのコールセンターでは、まさしくこの本を使ってアメリカ英語の発音の練習をしているんです。

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もう少し大きな子供、つまり小学校1年生向けくらいの児童書なども、いわゆる「教材」ではない、普通の書籍の多読の入門書として秀逸です。ちゃんとストーリーはあるし、中3位までの英語が分かればまず普通に読めます。また「この文型は、実際にはこんな時に使うのか」という確認ができます。

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ドラマ、映画も役に立つ

もう一つのインプットソースとして有効なのは、テレビ番組や映画です。まず「セサミストリート」のような番組ですが、これは本当に小さな子供を対象にしているので、絵本の場合と同じで、音の面白さにポイントを置いて作られています。ストーリーとかギャグとかがまだ理解できない視聴者が対象なので、当たり前といえば当たり前ですね。日本でいえば「ニャンちゅうといっしょ」みたいなものです。ですからこれらの番組を見る場合に注目すべきポイントは「音の面白さ」です。

語彙や言い回しの増強を求めるなら、ピクサーの映画は秀逸です。これらの映画は4歳児でも理解できるように作られているので、幼児でも理解できる単語しか使われていません。それでいてストーリーは非常にしっかりしており、大人でも感動します。小学校2年生と幼稚園年長の時にアメリカに移住した僕の息子らは、「Mr.インクレディブル」をセリフを丸暗記するくらい何度も見ていました。また、戦隊モノの英語版、Power Rangersもよく見ていましたし、長寿アニメ番組 スポンジ・ボブ (SpongeBob SquarePants)なども毎日のように見ていました。こうした番組の効果は数値化しにくいものですが、非常に大きかっただろうと思います。

大人でもドラマ「Friends」や「How I met your Mother」を見て英会話を覚えていった人がたくさんいますが、この手の番組の現実の会話に極めて近いので、得るものが多いです。その時々はあまり効果を感じなくても、年単位のスパンで考えると非常に効果があります。英語字幕を出して、ドンドン見てみてください。

文法学習や例文暗記を否定しているわけではありません

なお、別に文法学習や単語の暗記を否定しているわけではありません。特に文法は英語という幹を育てていく上で、欠かせない添え木の役割を果たします。また、単語の方も、最初の2000語程度はとりあえず暗記してしまうと手っ取り早いです。僕はよく中学の教科書の丸暗記を勧めていますが、それはそういう理由です。

しかし、育てたいのは添え木じゃなくて幹の方なのです。どれだけ添え木をしっかりと組んでも、それが幹の成長に反映されないと意味がありません。ですから、文法も単語も覚えたらその都度実際に使ってみるのが肝心です。「完璧に覚えてから」なんて考える必要は全くありません。ところが多くの学習者が失敗を恐れ、なかなかこの「実際に使う」に踏み切らないのです。これは本当に残念なことです。日本人の書いた英作文は文法はあってるのに何が書いてあるのかよくわからない、なんてことがよくありますが、これは教材用に加工されたコンテンツにしか触れていないのと、実際に使う練習をほとんどしてきていないのが原因です。

多読多聴は「肥料」です

さて、話を多読多聴に戻します。多読多聴は即効性のある学習方法ではありません。その一方で、ジワジワと確実に効いてきます。実際に人と会話するときに、多読多聴で得た知識が、共通の話題を提供してくれます。また、一度視聴した番組について話すことで、聞き覚えた単語や言い回しを実際に使ってみることで、さらにそれが定着するのです。

こうして年単位で、ゆっくりと英語力がアップするのです。

文法や例文の暗記が添え木だとするならば、多読多聴は肥料なのです。

年単位じゃ長すぎるって? いやいや。アメリカに10年、あるいは20年住んでも、ずっとネイティブの会話に入れない人などたくさんいます。会話の輪に溶け込んで、知的な会話を楽しめるようになりたかったら、こうした地道な作業をしつこく継続していくしかありません。生活の中に読んだり視聴したりする時間を組み入れて年単位で継続すると、必ず成果が出てきます。

もちろん、ただ聞いただけじゃダメで、先の子供と同じように、聞きかじったことを実際に使ってみるのが肝心です。そして、ここをやらない人がとっても多いです。実際に話したり書いたり恥をかかないと、どうしても自然な使い方が定着しません。そして、ここで腰が引けている人がとても多いのです。

僕自身はどのくらいの時間を要したか?

ちなみに僕があまり抵抗なくグループでのダベリができるようなるまでには、だいたい6、7年かかりました。最初の1年でごく簡単な会話ができるようになり、次の2年で「大学の授業」という極めて限定された環境ならば困らないレベルまできました。この頃になると、外国人同士の拙い英語なら、みんなで楽しく色々な話ができましたし、1対1なら、ネイティブと話をしても困ることはなくなりました。でも、ネイティブだけのグループで盛り上がっているところに溶け込めるようになるには、そこから更に3年以上かかりました。

外資系企業に務めるくらいなら、僕の3年目くらいの英語力でも社内でトップクラスになると思います。3年間騙されたと思って、多読多聴をしつつも、会話や作文の練習に励んでみてください。

なお、発音については話しませんでしたが、発音と作文は金払って習うのが最短距離です。私の会社でもやってます。体験レッスンも提供していますので、興味のある方はぜひどうぞ。

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