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人工肉バーガーを食べてきました!

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この頃アメリカで人工肉バーガーが話題になっています。ウォール・ストリートジャーナルなどもいくつか記事を出していて、人工肉バーガーの売れ行きが好調であることを伝えています。

なお、人工肉というと最近はバイオテクノロジーを使った「培養肉」が度々話題になりますが、今回北米で売られて話題になっているのは培養肉ではなく、植物を使って作った一種のべジィ・パティのようです。

僕はベジタリアンだった時期もあるので、このハンバーガーパティの代用品、ベジィ・パティは散々食べたことがあります。その辺のスーパーとかでも売っていて、ベジタリアン向けの定番の位置を築いています。

ただこれ、全然肉でもなんでもない全く別物なのです。肉の風味がするわけですらなく、そういうものを期待すると全く期待外れです。

なお、このような従来のべジィ・パティが何からできているかというと、原材料はこんな感じです。

エンドウ豆タンパク質ブレンド(水、エンドウ豆タンパク質、黒豆)、エクスペラー・キャノーラ油、玉ねぎ、玄米粉、天然香料、アロールート・パウダー、ニンニク・ピューレ(にんにく、クエン酸)、海塩、キャラメル色、黒コショウ

ご覧の通り、本当に野菜だけしか使われていませんので、どんなにそれらしく作っても、肉の風味を出すのは難しいようです。

では人工肉はいかに?

ところがこの全く新しいパティは、野菜を原材料としているにも関わらず、肉の風味がするというのです。食べても本物の肉とほぼ区別できないという記事なども目にして、とても気になっていました。

そんなわけで食べられるところを探していたら、なんと今週からシリコンバレーのバーガーキングがこの人工肉バーガーの販売を始めたのです。そこで早速食べに行ってきました。

まず、店に入るとメニューに Impossible Whopper という新メニューが追加されています。値段は従来のWhopper が単品で5ドル19セントなのに対し、この Impossible Whopper が6ドル19セントと、ちょうど1ドル上です。

早速買ってみました。

さてお味のほうは?

めくってみると焦げ目の跡まで築いていて、見た目による判別はほぼ不可能です。また、匂いも完全に肉の焼けた匂いです。

切ってみると、これまたほぼ見分けがつきません。強いて言えば、こっちの方が本物に比べるとちょっと均質すぎるような気がしましたが、アメリカで安物のパティを買うととても均質で「工業製品!」みたいな感じですから、従来のパティを真横に置いて比較でもしない限り、見た目で判別するのはほぼ不可能でしょう。店員を気をつけてないと見間違えるレベルだ、という記事も目にしたのですが、まさしくその通りでした。

さて、肝心の味なのですが、正直言って本物の肉のものと区別できませんでした。通常のWhopper も買ってみて交互に食べてみたのですが、普通に「肉の味」がするのです!

まあ、うるさいこと言えば Impossible Whopper の方がなんというかサクッとしてるというか、噛みごたえが足りないというかそんな感じもありましたが、それはそういう先入観や予備知識があるからそう感じる可能性も否めません。これ、もしもブラインドテストされたら判別がつかない自信あります。

他の人のレビュー記事もぜひ読んでみてください。

人工肉バーガーはうまい。うますぎた #CES2019

こちらは英語記事ですが、このレポーターも区別つかないと言っています。

Impossible Burger 2.0 tastes like beef. Really

なぜこんな肉の味がするのか?

で、食べ終わった途端になんでこんな肉の味がするのか、原材料は一体なんなのか興味が湧いてきました。まずは原材料ですが、このパティを作っている Impossible Foods, Incのホームページからの引用です。ご覧の通り植物性の材料しか使っていません。

水、大豆タンパク質濃縮物、ヤシ油、ひまわり油、天然香味料、2%以下:ジャガイモタンパク質、メチルセルロース、酵母エキス、養殖デンプン、食品添加物、大豆レグヘモグロビン、塩、大豆タンパク質分離物、混合トコフェロール(ビタミンE) )、グルコン酸亜鉛、塩酸チアミン(ビタミンB1)、アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)、ナイアシン、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、リボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンB12。

ではなぜ一体肉の風味がするのでしょうか? 

その鍵となっているのが、この「大豆レグヘモグロビン」です。この会社、肉の風味や匂いが一体どこからやってくるのか分子レベルで調べたのですね。その結果、動物の肉に大量に含まれる「ヘム」がその鍵を握っていることを突き止めました。ヘムといううのは血中に酸素を運ぶ働きをしている錯体で、これがグロビンというタンパク質とくっついてヘモグロビンを成しています。そしてこのメモグロビンが、中学校あたりで習った通り、体内に酸素を運ぶ働きをしているのです。

なおこのヘム、大豆の中にも含まれていますが、通常使われる豆の部分ではなく、茎の方に含まれています。そこでこの会社、イースト菌の遺伝子を組み替えて、この大豆の茎に含まれるヘムを作り出したのです。イメージとしてはビールを発酵させるような要領で、ヘムを大量生産しているようです。そしてこのヘムをパティに混ぜるとあら不思議。植物でできているのに、肉の香りや味がするパティの出来上がりというわけです。詳しく知りたい方はこちらのビデオをどうぞ。英語ですが、詳しく説明されています。

競合

さて、人工肉で話題になっているのはこの Impossible Foods という会社ではなく、むしろ Beyond Meatという会社の方が話題になっています。この Beyond Meat、先日ついに上場を果たしました。こちらの会社も同じような製品を作っており、すでにコストコなどにも卸しています。アメリカのアマゾンからも注文可能なようです。

特に上のソーセージの方はめちゃくちゃレビューが良くて「肉と全く区別がつかない!」と絶賛されています。

また、アメリカの食肉最大大手、タイソンフードまでもがこうした人工肉製品の開発に乗り出しており、どうやらアメリカの人工肉市場は一気に膨れ上がりそうです。なぜ人工肉なの?

なぜ人工肉なの?

では最後に、なぜ人工肉に注目が集まっているのかについて説明したいと思います。人工肉が脚光を浴びている最大の理由、それは地球温暖化です。

アメリカでは長らく地球温暖化懐疑論がはびこっていましたが、これ、どれもこれもエクソン・モービルなどのオイルメジャーがやっていたロビー活動や懐疑論キャンペーンが原因です。この辺りの顛末は拙書、「企業が『帝国化』する」にも詳しく書いていますが、なかなか凄まじいです。

しかし、流石のエクソンもこのキャンペーン、最近はやっていないのです。なぜかというと、あまりにも温暖化が自明になってきてしまったからです。アメリカは各地で「100年に一度」と言われる規模の台風や竜巻や山火事が頻発するようになってしまい、ようやく多くのアメリカ人が「これヤバいんじゃね?」と思うようなってきたのです。

ちなみにこちら、イエール大学が行ったアンケートの結果です。青線の方が「地球変動は起きている」を表しており、赤線の方が「起きていない」です。なんと7割ものアメリカ人が「地球温暖化が起きている」に傾いており、こんなこと、僕がアメリカに20年以上住む中でもあまりなかったように思います。

Climate Change in the American Mindより

また、現在トランプが大統領だというのに、各社こぞって電気自動車の開発競争が加熱していますが、これもこのような流れを受けてのことと理解していいのではないかと思います。

そして、この流れが現在牛肉にも及んでいるのです。牛というのは大きな動物ですから、育てるのに大量の牧草地が必要となります。そしてそのために多くの森林が切り倒されているのが現状なのです。また、牛のげっぷや糞尿から発せられるメタンガスの温室効果は非常に大きく、二酸化炭素の28倍とも言われています。牛を飼育することにより発せられる温室効果ガス排出量はなんと全体の16パーセントを占めているとさえ言われています。

それなのに、どこの国も豊かになるにつれ肉を食べるようになります。そのため、食肉を何か別のもので置き換えるのは急務なのです。そして、そこで脚光を浴びているのがこの人工肉というわけです。

日本上陸も間近らしい?

さて、この人工肉ですが、日本からは、三井物産がBeyond Meat に出資しており、日本での発売に向けて現在準備中だそうです。なので、おそらく年内か、遅くても来年には日本でも食べられるのではないでしょうか? シリコンバレーにおいでの際は。ぜひこの人工肉をお試しください。僕も近日中にまた別の製品をトライしてみたいと思います!

それではまた明日!

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