見出し画像

海外在住の難問〜日本人コミュニティとどう関わればいいのか?

海外に移り住んだ直後には、幾多の難関が待ち受けています。しかも、現地語がもっとも下手なタイミングで、これらの難関を乗り越えなければなりません。例えばソーシャルセキュリティ番号(マイナンバーのようなもの)を取得したり、家を借りたり、電気、水道、インターネットのゴミ回収などを契約しなければなりません。携帯電話の契約も必要です。また、移住先がアメリカやカナダなどならば、自動車の購入と自動車保険への加入も必須です。さらに子供がいれば現地校への入学手続き、不足している予防接種を受けるなど、日本語でも難しい作業のオンパレードなのです。

そんな時期にもっとも頼りになるのが日本人の同胞です。子供が現地校になかなか馴染めないなどといった難しい問題も起きますから、現地語があまり強くない方にとっては、絶対に欠かせないサポート体制と言ってもよいでしょう。多くの方が苦労してきていますから、まるで自分のことのように親身になって相談に乗ってくれます。また、現地語が不自由な者同士で、運命共同体のような感覚も生まれます。この時に知り合った人と生涯の友達になる方もきっと少なくないでしょう。

私もよく小学校の父兄会などに行くと他の日本人の親御さんたちに色々聞かれましたが、こうやってみんなで助け合って行くフェーズが多かれ少なかれ必ず存在します。そして、この時期に知り合った日本人の方々とは、今でもフェイスブックなどでやりとりを続けています。たまに日本に帰国すると、お宅にお邪魔してご馳走になることなどもあります。

だが、いいことずくめではない
しかし、移住当初は本当に有り難みを感じるこの日本人同士の繋がりも、いいところづくめではないのも現実です。父親は日中会社に行ってしまう人が多いためあまり感じませんが、同じ学校に通う子供たちや母親同士は、日本にいた時以上に濃密な人間関係の中にドップリと浸りながら生きていくことになります。

いくつか具体例をあげましょう。
例えば、移住当初はみんな現地語(例えば英語)ができませんから、どの子もESL(English as a Second Language:英語補習クラス)に入れられます。日本人が多い地域だと、クラスの3分の1が日本人などというケースも発生します。するとイジメが発生することもあります。何しろ先生は外人で日本語は皆目分からないのですから、コトが身体的な暴力に発展しない限り、先生に見つかる心配はまずありません。また、付き合うのが日本人だけになってしまい、何年経っても言葉を覚えられない子もいます。

親の方もまた、濃密な人間関係に翻弄されていきます。誰も英語(現地語)がうまくないため、この閉鎖的な人間関係に依存せざるをえないのです。するとボスママのような存在が生まれ、力関係が発生します。やがてボスの仕切るままに持ち回りで飲み会をしたり、連れ立ってキャンプや旅行に出かけたりするようになり、この人間関係からどうにも出れなくなるのです。

また、これだけ毎日同じメンツと会っていれば、すぐに話題がなくなります。そして話といえば噂話や現地人の悪口になってしまうようです。

さらに個人のプライバシーにもズカズカと立ち入られるようになります。夫の収入を聞かれるのは当然のこと、夜の夫婦関係の回数まで聞かれる、なんてことにまで発展することもあるようです。これら全て、実際に自分たちが体験したか、身近で何度も見聞きした話です。

留学生の間でも同じコトが起きる
なお、これと同じことは留学生の間でも発生します。どの人も最初に来た時には、日本人とツルもうなんて思っているわけではありません。みんな勉強する気満々でやってくるのです。しかし、人間なんて弱いものです。言葉が通じない中で日本人に出会えば、ついツルんでしまうのが人間というものです。そして気がつくと帰国の時がやってくるわけですが、案の定言葉は上手くなっていません。また、現地での友達もほとんどできないままです。大半の時間を日本語を喋って過ごしていたのですから無理もありませんが、なんとももったいない話です。

なぜ日本人コミュニティから抜けられないのか?
ここまで読むと、「さっさと日本人コミュニティから抜ければいいのに……」と思うかもしれません。しかし、これがどうしてなかなか簡単ではないのです。いくつか抜け出せない理由を挙げてみましょう。

まず第1に、日本人コミュニティ以外に人間関係が存在しないので、抜けようにも行き先がない人が多いのです。無論、抜け出して行く人もいますが、こういう方は大抵言葉で困っていない人です。また、やりたいことがはっきりしている方も割り切って抜けていきます。

第2に、子供同士が同じ学校だったりすると、断る理由を見つけるのが難しいようです。特に子供同士が仲良しだったりすると、ある程度一緒に遊ばない訳にも行きません。こうして月曜日はXXさんのうちでプレイデート、火曜日は私のうちでプレイデート、といった生活がルーティンになってしまうのです。子供に違う習い事でもさせると比較的距離を置きやすいのですが、親の語学力が低いと、習い事の開拓もままならないのです。また、せっかく何かを習わせても、「じゃあうちの子も〜」なんて言ってまた付いてこられてしまうことも多々あります。

第3に、ある程度子供が自立すると、今度は親同士が暇になりショッピングやランチに連れ立って行くようになり、抜け出すキッカケが失われてしまうのです。思い切って親の方も学校に通い出せばよいのですが、今度は「あの人はカッコつけてる」「学校なんか通ったってしょうがないのに」などと陰口を叩かれるわけです。するとなんだか勇気が失せてしまい、抜け出すきっかけを失ってしまうのです。

第4に、夫同士が同じ会社だったり上下関係にあったりすると、夫の人間関係も考慮せざるを得ませんからそうそう不義理もできないようです。

また最後になりますが、移住直後に世話になった間柄だったりすると、不義理をするのは申し訳ないといった心理も働くでしょう。

日本人の同調圧力の高さはよく知られていますが、これが本当に事態をややこしくします。そうこうしている間に5年、10年が過ぎていきます。夫と子供は語学が堪能になったのに、自分だけは変わらず……といった方も少なくありません。また、夫の方も日系企業勤務で日本向きの仕事をしていると、何年住んでも語学力があまり変わりばえしないままの人も少なくありません。

ではどうしたらいいのだろう?
では一体どうしたら適切な距離感を保てるのでしょうか? 

まず何と言っても、日本人以外のコミュニティを築いていくのが一番効果的です。別に日本人コミュニティが悪いわけではなく、そこだけしか人間関係が存在しないのことや、言語の壁に守られた密室化しやすいコミュニティであることが難しさの原因だからです。

また最初に移住した時に思い切って日本人から離れてしまうのも効果的です。僕のオススメは最初の1〜2年は積極的に交流しないか、物理的に日本人があまりいないところに住んで現地人との人間関係をしっかりと築いてしまうことです。「今度来た人はちょっと変わってるわね」なんて言われますが、一度そう認識されるとあまり強く誘われなくなり、あとあとラクです。

それから、子供が手がかからなくなったらすぐさま働くなり学校に通うなりして、用事を入れてしまうのも効果的です。日本人以外との交友関係もできていきますし、誘われても断りやすくなります。

なにはともあれ語学力
そしてこのために必要なのは何と言っても語学力です。必要な語学は国によって異なりますが、とにかく言葉ができないと何も始まりません。

そして逆説的ですが、語学力をつけたかったらとにかく日本人から距離を置くのが一番の近道です。語学は結局のところ、使った分だけしか上達しません。最初はしんどいですが、半年〜1年もすれば必ず困らない程度には話せるようになります。いっときの辛抱だと思ってガッツリ勉強しましょう。

なお、移住前に、少々ブロークンでもいいから言葉を身につけるのも極めて効果的です。僕は結局ほとんど日本人コミュニティのお世話になりませんでしたが、それもこれも僕自身が最初から英語が話せたからです。お陰で日本人との関係でノイローゼになるなんてこともありませんでした。

なお、自分が最初に英語を覚えた時には、日本人が一人もいない田舎町に1年、そしてその後4年間は日本人が僕を入れて4人しかいない大学に通いました。こんなところに居れば、言葉が上手くなるのは当たり前です。

滞在期間中のゴールを決めておく
またもう一つ効果的だと思うこと、それが駐在であれ短期留学であれ、滞在中のゴールをしっかりと定めておくことです。それは例えば「観光しまくる!」とかでもいいですし、何か技能を身につけるのでも良いでしょう。僕の知人でも、アメリカ駐在中に大学に通いまくって英語をガッツリと鍛え、帰国後に英語教室を始めた人もいます。あるいは、イギリスに駐在していた方で、帰国後に英国式のマナー教室を開いている方もいます。またさらには、滞在中に契約先を探しておき、帰国後に輸入販売ビジネスを始めた方もいます。必ずしも職業に結びつかなくてもいいと思うのですが、何か資格を取るなどといった具体的なゴールを定めておくと、日本人コミュニティ以外の場所にも居場所を作りやすいですし、帰国後も役に立つ上、よい思い出もできるしで、いいことづくめです。

できれば移住前に勉強しておこう
再び語学力に話を戻すと、移住前に語学力をある程度つけておくと行った後が格段にラクです。僕は何もわからないままにアメリカに移り住んで無理やり覚えましたが、効率も悪い上にストレスも高いです。現地入りする前にある程度底上げしておいたほうが絶対に賢いです。

僕がやっているフィリピンと渋谷でやっている語学学校 Brighture English Academyにも海外赴任が決まった方がよくやって来ますが、駐在する本人はもちろん、一緒に行く配偶者も英語を勉強しておくことを強くお勧めします。結局その方が行ってからが楽です。

そんな海外留学、ワーホリ、あるいは駐在などを予定している方は、ぜひBrightrureにどうぞ!現在、無料で個別相談と無料体験レッスンを受け付けています。

最後に移住や留学を予定しているみなさま、日本人コミュニティとはぜひ賢く付き合ってください。上手に距離を保てば、本当に強い味方ですから。


PS:もしこの記事を気に入っていただけましたら、投げ銭していただけると嬉しいです!

ここから先は

0字

¥ 100

もしこの記事を気に入っていただけましたら、サポートしていただけると嬉しいです!