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最初の一歩はなんだって大変に感じる

最初の一歩というのはなんだって大変に感じる。新しい楽器にチャレンジする、入ったことのないレストランに入って、食べたことないものを食べてみる、新しいスポーツを始めてみる、などなど。

そしてこの「最初の一歩」を踏み出すのが一番大変なところだ。なんとか踏み出してしまいさえすれば、二歩目はずっとやさしい。

ところがこの最初の一歩は、歳を重ねるごとに踏み出すのが難しくなる。わざわざそんなことをしなくても既にある程度快適な世界があるなら尚更だ。例えば、そこそこ名前の通った会社に勤めていて安定した仕事に就いていたら、転職や起業なんて恐怖以外の何者でもない。このまま同じ会社に居続けたからといってさほど出世しそうもないが、だからといって今もらっている給与や安定した生活を投げ捨ててまで新しい一方踏み出すべきなのかと、考えてしまうだろう。そうやって迷っているうちに時間だけが過ぎ去り、僕らは少しずつ確実に老いていくのだ。

失敗をしたり、恥をかいたりするのは誰だって怖い。いい年こいてあんまりみっともない思いもしたくない。そんな気持ちは誰にだってある。こうして意識が縮こまってくると、転職はおろか、新しいお店を開拓するのさえ億劫になってくる。よくわかっているハズレのない店に行き、いつもと同じメンツで、同じようなものを食べ、新しい趣味やスポーツにはチャレンジせず、なんとなく日々をやり過ごしていくようになる。仮に新しいお店にチャレンジするにしたって、食べログで評価を確認してからじゃないと、とてもじゃないけど怖くて行けない。

曲がり角
以上は、42歳までの頃の自分だった。困らない程度にお金も稼いでいたし、有名な会社でそこそこの地位にもいた。「これがオレの暮らしなのだ」と納得してしまえば、かなり快適だった。いつも同じようなレストランで外食を楽しみ、新しい趣味も開拓せず、毎年海外旅行に出かけた。

ところがこの年に限って、なぜか不幸が続いた。父が亡くなり、義弟が亡くなり、幼なじみが亡くなり、部下が亡くなり、そして子供の担任の先生まで亡くなった。気味が悪いほど死が身近に押し寄せてきて、「お前いったいは残りの時間をどうやって過ごしたいのか?」と問いかけられているような気がした。人生はたった一回限りなのだという当たり前の事実を、鼻先に突き付けられた。

2年後に僕は会社を辞め、妻と2人で保育園を開業した。考えてみたら大きなチャレンジをするのは実に8年ぶりだった。最後の大きなチャレンジは36歳の時の家族を連れてのアメリカ移住だった。保育園は幸い数年で軌道に乗ってくれ、ひょんなことから出版の話が舞い込み、生まれて初めて本を書いた。幸いそこそこ売れてくれ、講演を頼まれることが増え、それまでやったこともなかったような仕事が舞い込むようになった。3年前からは新たにフィリピンで語学学校を始め、今年からは日本にも事務所を開いた。今や、新しいことをしない時がないほど新しいことだらけの毎日になった。

新しい体験は人生に彩りを与えてくれる
今考えてみると、別にこんなに大それたことしなくても良かったとも思う。あのままアップルにいてもよかった。でもその一方で、日頃からもっと小さなチャレンジを積極的に楽しんだらよかったなぁとしみじみ思う。例えば、新しくお店ができたら、躊躇せずに飛び込んでみればいいのだ。仮に失敗したってたいして美味しくないものが出てくるだけのことで、別にそんなに困るわけでもない。逆にもしも美味しかったらめっけものだ。旅行先だってあちこちに行ってもよかった。ミートアップとかに参加して新しい友達を作っても良かっただろう。家族を連れてヨーロッパに行こうと思っていたのに、なんとなく行きそびれてしまった。あるいは長年やりたいと思っていたスノーボードもついにやりそびれた。何をあんなに臆病になっていたのが今になってみるとよくわからない。

ところが一度小さなチャレンジに慣れてくると、もう少し大きいチャレンジをするのもあまり怖くなくなってくる。要するに慣れの問題なのだ。大変に感じるのは最初の一歩だけ。そこさえ踏み出してしまえばハードルは一気に下がる。

そんなわけで、最近は何でも自分で確かめてみようと、今まではネットの評判を鵜呑みにして素通りしていたレストランに入ったり、フィリピンの小さな島に遊びに行ったり、前評判を気にせずに映画を見に行ったりしている。当たり外れはもちろんあるが、毎回驚きがあってこれはこれで楽しい。

人生は一回きりだし、新しいチャレンジは人生に彩りを与えてくれる。

そんなわけで皆さんも、小さなチャレンジから新しいことを始めてみませんか?


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