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伝統工芸士 古井正弘さんの工房を訪れる

部屋のドアを開けると、塗料のにおいがツンと鼻をつく。チャッチャッチャッチャッと、小気味良い音が聴こえる。ここは、若狭塗の伝統工芸士 古井 正弘(ふるい まさひろ)さんの『古井箸工房』。
若狭塗の伝統工芸士は現在小浜市内に5人。古井さんは他の伝統工芸士とは違い、箸だけを専門とした塗師(ぬし)。塗師とは漆工芸に従事する職人の呼称。

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住宅地の中にある『古井箸工房』

「今年は全然雪降らんで良いなぁ〜」
挨拶を済ませ横に座らせてもらうと、古井さんは手を動かしながら話してくれた。この日は、朱に塗った箸の上に、黄色の塗料を塗り重ねていた。

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軽快な作業の音に温かな日差しが心地良い古井さんの作業場

『若狭塗』は、江戸時代のはじめ慶長年間(1596-1615)に小浜城下の松浦三十郎という漆工(漆職人)が海底の様子を模様として「菊塵塗(きくじんぬり)」を草案して開祖となり、その弟子 西脇紋右衛門が、海辺にさざなみの打ち寄せる様子を文様化した「磯草塗(いそくさぬり)」をあみだすことで生まれた。17世紀の中頃には卵の殻や金箔、銀箔で加飾するという現在まで伝わる方法が完成。当時の藩主がこれを『若狭塗』と名付けた。

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この日は、漆ではなくカシュー塗料で仕上げる箸を塗られていた

古井さんの部屋は、ゴミひとつ落ちていない。職人の作業場と聞くと、薄暗い中、作業道具や材料などが所狭しと…なんて想像してしまうが、むしろ真逆。古井さんの回りには、塗る前の箸、塗った箸を収める五十板、塗料、筆などその日に使う必要最低限のものしか置いていない。部屋が広すぎると感じるほどだ。そして、身なりが美しい。膝の上に敷いてある汚れ避けと思われる布に塗料がついているが「この布を替えたのは、半年前くらいだったかな?」と言う古井さん。たくさんの塗料を使う仕事をこなす職人の言葉とは思えない。

美しい箸は、美しい現場から生まれている。
これからこのブログでは、若狭塗伝統工芸士 古井正弘さんの仕事を学び、みなさんに伝えていこうと思います。

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約400年の伝統を持つ若狭塗の箸は、今もここから生まれている

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photo & text 堀越一孝

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