koki

旅行、小説、食、酒、珈琲 日々、感じたことを文章にしています。

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最近の記事

旅の始まりと終わりの匂い【台湾⑤-最終日-】

台湾の旅の終わりは線香の匂いだった。最後の一日を無駄にしないために、宿を朝早く出て市街へと向かった。特に必ず行きたい目的地はなかったのだけれど、最終日ということで台湾らしい雰囲気を少しでも味わいたいと思い地元民向けの朝市へと足が向かった。 到着したのはまず観光客は来ないであろう朝市だった。メインとなる大通りがあってそこを背骨として魚の骨のように細い路地が何本も伸び、個人の商店がところ狭しと連なっていた。 バイクの排気ガスの匂いと線香の香り、そして至るところから立ち上る屋台

    • 子供の頃、縁日の屋台飯ってピカピカに見えてた【台湾④-夜市グルメ-】

      なけなしの小遣いを握りしめながらソースが焦げる香ばしい香り、たばこと酒の匂い、人混みをかき分けながら眺める裸電球に照らされるりんご飴はどうしてあんなに輝いて見えたのか。子供の頃はお祭りというだけで何週間も前から浮足立って、当日は自分の懐具合でいかに最大限楽しむかを脳内で計算しながら立ち並ぶ出店の前を何往復もしていた。土曜日のお昼ご飯に家で食べる焼きそばとほとんど変わらないはずなのに、屋台の鉄板の上で焼かれたというだけでただの焼きそばがとてつもない引力をもち、誘蛾灯のように子供

      • インディーズ時代から好きだったバンドがメジャーになってしまった感覚【台湾③-九份-】

        猫村の猫たちに別れを告げて、私は再び電車に乗った。次の目的地である九份へは、瑞芳まで電車で向かいバスに乗り換え10分くらいで到着するようである。今朝のうちにホテルで調べておいたので、乗り換えも問題なくできるであろうと思っていたが、そもそも瑞芳駅に着くと九份行きのバス停に多くの観光客が並んでいたため、迷うことなく私もその群へと加わることができた。時間にも余裕もあるし、特に急ぐ旅でもないので九份のメインエリアの数駅手前のバス停で降車し、歩いて山道を登ることにした。天気も良く、景色

        • 青春は車窓を流れる景色のように【台湾②-猫村-】

          昼食で心行くまで堪能した餃子と麻婆豆腐とビールの存在感とそれに伴う満足感をお腹の中に携えながら、私は台北駅発のローカル線の電車に揺られていた。目的地である猫村へは電車で約一時間、うたた寝でもしていればすぐにつくだろうと座席にもたれて目を瞑る。電車が動き出してから数駅過ぎたあたりだろうか、向かいの座席からにぎやかな声が聞こえてきて、ゆっくりと目を開けると現地の高校生らしき男女数人が楽しそうにおしゃべりをしていた。もちろん話している内容はわからなかったが、お互いにケータイの画面を

        旅の始まりと終わりの匂い【台湾⑤-最終日-】

        • 子供の頃、縁日の屋台飯ってピカピカに見えてた【台湾④-夜市グルメ-】

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        • 青春は車窓を流れる景色のように【台湾②-猫村-】

          スーツを脱ぎ捨て旅に出た【台湾①-台北市内-】

          2018年9月、就職活動という名の正当な言い訳を携えて大学の教授に頼み込み、研究室を約一週間留守にするといって私は一人台湾に向かった。といってもやはり、就職活動を全くしないで一週間まるまる休むのはさすがに憚られ、言い訳程度に一社だけ企業説明会を受けるついでに台湾旅行を行うという強攻策に打ち出たのである。赤坂での企業説明会を終え、私はその足で成田空港へ向かった。スーツは空港のトイレで脱ぎ捨て、スーツケースへと押し込んだ。 格安の航空会社の窓口でチェックインを終えて飛行機に乗り、

          スーツを脱ぎ捨て旅に出た【台湾①-台北市内-】

          鬼滅について考えてみた

          ネタバレを壮大に含んでいますまず最初に申し上げないといけないのは、この文章には壮大なネタバレが含まれているという事です。すでに結末を知っている人に是非読んでもらいたいです。 私の現在の鬼滅の知識の状態は、アニメ、映画(無限列車編)視聴済み、漫画は最終巻まで読破済みという状態です。 しかし、何度も見返した、読み込んだわけでもなく、年末に暇だったので見てみたという程度の「にわか」であるという事をご容赦ください。 また、この記事はあくまで私個人の意見です。なんやかんや書いてますが鬼

          鬼滅について考えてみた

          モチベーション向上には薬草を

          悩みがないことが悩み私は自分のことを悩むことが全くなく、落ち込むこともめったにないポジティブな人間だと思っていました。しかし、友人との会話がきっかけで「それは落ち込んでないんじゃなくて、落ち込んだ後のリカバリーがめちゃくちゃ早いだけなんじゃない?」と言われ、確かにそうかもと思い今回の記事を書くことにしました。 結構みんな悩んでる仕事も勉強もモチベーションの維持がめっちゃ大事といわれてるけど、モチベーションを常に高く保つのってめちゃ難しい。 私の場合は、大学院での研究が生活の

          モチベーション向上には薬草を

          だから私はお店を辞めた

          一番の理由は「納得」できたから二人でお店を始める際に決めた、絶対に譲らないコンセプトは「とにかくおいしいものを作る」、「利益ばかりを求めない」、「一人でも多くの人に十勝の小麦のすばらしさを伝える」という3つである。 とにかくおいしいものを作る 私たちは開店から閉店する日まで、常に自分たちが自信を持って提供できるものを追求し続けた。製パンの工程や、配合、原料にとにかくこだわった。自分たちが持っている知識や技術を総動員して、どのメニューも自信を持って提供できるクオリティに仕上げ

          だから私はお店を辞めた

          私がカフェを開業した理由

          【カフェ開業のきっかけ】 カフェをやろうと思ったきっかけはいくつかあって、大きくそれは戦略的な理由と感情的な理由の二つに分けられると思う。 【戦略的な理由】 1、専門性を活かせば必ずおいしいものを作れる確信があった 私は学部3年から今に至るまで約7年間、小麦の加工に関しての研究を行ってきた。研究者の端くれとしていくつか論文も出してきたし、知識だけでは不十分だと思い、国家資格である「パン製造技能士」の資格も取得した。また、ともにカフェを開業した五嶋君は小学生のころからパン職人

          私がカフェを開業した理由