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マーケティング観察 #009 AmazonのITインフラストラクチャサービス「AWS」

こんにちは。matsumotoo(@matsumotoo988)です。

今回は最近話題になっているIaaS(Infrastructure as a Service)の中で最もシェアのある「AWS(Amazon Web Services)」について、観察していきたいと思います。

AWS(Amazon Web Services)について

Amazon社内のビジネス課題を解決するために生まれたITインフラストラクチャのノウハウをもとに、2006年から提供開始されたサービスです。

AWSでは多岐にわたるサービスが提供されており、企業で必要な IT リソースを網羅的に提供しています。
(ECのAmazonと同じ様に必要なモノがすべて手に入るという考え方)

毎年既存サービスの改善と新しいサービスを増やしており、以下のようにサービス数や開発数が非常に伸びています。

またAWSでは190ヶ国で利用でき、データセンター群存在する物理的「リージョン」といわれる12 のエリアがあります(Azureでは、140ヶ国で利用可、54リージョン)
※利用できる国はAWSの方が多く、リージョン数はAzureの方が多ですが、データセンター数や規模なども関係するため、一概にリージョン数での比較は難しいかもです。

業界全体の中でのAWSのポジショニング

まずはこちらの記事にある2016年-2017年の Iaasサービス市場の売上とシェア率の資料をご覧ください。見てわかる通り、AWSが圧倒的なシェア(50%以上)を確保し、Microsoft Azureと続くようになっています。

また参考までですが、TOP4のサービス提供開始時期を調べてたのですが、AWSが最も古い時期からスタートしており、市場開拓をしてきたと考えられます。

AWS:2006年3月 ←最も古い時期!
Microsoft:2010年1月
Alibaba:2009年9月
GCP:2008年4月

ビジネスモデルについて

基本的にはAWSのサービスを提供し、ユーザー企業から従量課金制で収益を得る仕組みです。また自社環境(オンプレミス)からの移行や開発などはパートナー企業にやってもらい、AWSとしてはあくまで自社サービス提供のみに注力しているようです。またマーケットプレイスなども設置しており、ECのAmazon同様に独自のエコシステム構築もされている様です。

世の中の流れを読み取る(PEST分析)

経済⇄社会⇄テクノロジーがちょうど噛み合わさった結果、Iaas業界の発展に結びついているように思えました。

つまり、以下の様に自前でインフラ環境をもつ時代→Iaasへ移行する流れが成り立っているように思えました。

■サービス⇄Iaas企業の役割最適化サイクル
(1)インターネットの爆発的普及・テクノロジーの発達
(2)単一サービスでのインフラ運用限界に近づく(高負荷リスク上昇)
(3)Iaasサービスを活用(クラウド推進)
(4)規模拡大やテクノロジー進展により、Iaasサービスコスト削減
(5)Iaas企業がさらに成長し、クラウド基盤が効率化する

また以下の例を見ても、一時的もしくは一部サービスに限定した流れでないことはみて取れると思います。

前提:売上の考え方

基本的にAWSは従量課金のため、ユーザー企業数×サービスの使用量が増加するほど売上が上がります。

また以下の様に単価自体は非常に安価なため、売上を最大限拡大しようとすると、サービス使用量の高い業界や企業の獲得が命題となると思われます。

以下参考までにAWSの利用料例です。
詳細は割愛しますが、リザーブドインスタンスという事前に料金を支払い、時間辺り料金から割引を受けるモデルで購入しており、予約金(年一回)252,890円と月額55,005.5円の支払いが必要になります(金額1ドル=110円計算)

日本での全体戦略について見ていく

2009年の資料ですが、日本での戦略を示したものがありました。
考え方としては、AWSでは顧客を接点の多さで分けており、以下の様に考えていた様です。

■顧客層(接点区分け)
ダイレクトタッチ:顧客に寄り添って進めていく
ワンタッチ:一回ガイドすると、導入先で進めれる
セルフサービス;ガイドなしでできる

(出典:商品はファンには売るな!?AWSマーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術

上記のうち、コアとなっていた「コミュニティ」「ビジネスパートナーエコシステム」について見ていきたいと思います。

(1)コミュニティ戦略について

先ほどの資料の1つ目のポイントであるコミュニティがビジネスにどのような効果があるのか?を見ていきます。AWSコミュニティについては、以下の記事が参考にしました。
(コミュニティの詳細についても書いてあるので、気になる方はぜひ)

まずは日本でのAWSのコミュニティについてです。

■AWSコミュニティのポイント
全国70以上もの巨大なネットワークが存在している
勉強会や懇親会などが頻繁にされている

コミュニティの効果としてありそうなことを並べてみました

(1)潜在顧客の獲得
こちらの記事にも記載がありますが、AWSを好きな総数を増やす→口コミ(エンジニアの横のつながり)などでインフラ選定時などに候補に選ばれることに繋がっているのではないでしょうか?

最終的には意思決定層が決めるはずですが、原案作成時などに盛り込まれ検討されるポジションになるだけで導入確率向上に繋がると思われます。

(2)顧客のAWS導入支援
未導入企業や導入済みの企業などで話し合う場は分かれたりしているようですが、「AWSを採用した理由」や「コストを削減できなかった話」など企業名や発言内容が外部に漏れないという前提で会話されているようです。

また参加者が意思決定層などのメンバーなので、(1)と合わせて、より導入されやすい位置を築けていると考えられます。

(3)ユーザーニーズや改善要望の洗い出し
他サービスと同様にコミュニティ経由で、機能改善/新機能などの要望やヒントを集めていると思われます。またIaasサービスは、一般消費財と比較すると他社への乗り換えも起こりにくい傾向がありそうですが、一度他社へのスイッチが発生すると損失が大きいため、その防止の意味合いもあるかもしれません。

(4)導入後サポートできる環境
AWSは商材が90以上あり、機能も頻繁にアップデートされます。この点でも、ユーザーをサポートできる環境が必要不可欠だと思われます。

ざっくりみてみましたが、新規リード顧客獲得、商談決定率向上、解約率低下など事業に大きく貢献している可能性が非常に高いため、AWSにとってもコミュニティサポートは重要な施策となっていると推測されます。


(2)パートナー戦略について

AWSではAPN(AWS パートナーネットワーク)を構築しており、以下の様に位置付けています。また日本国内でも2018年1月時点で520社以上の企業が参加しています(参考記事

■AWS パートナーネットワークとは
AWS の世界的なパートナープログラムです。ビジネス、技術、マーケティング、および販売促進をサポートすることで、APN パートナーが AWS ベースのビジネスやソリューションの構築に成功するよう支援することに重点を置いています。(AWS サービスサイトより

このAPNですが、AWSがサービス開始以来掲げてきた『クラウドが当たり前になる「ニューノーマル」の世界』の実現構想の中にも含まれており、顧客満足度に直結する重要なポジションと位置付けられています(以下参照)

(出典:AWSが最新のパートナー戦略を発表--クラウド拡大期を意識

また2018年に発表されたパートナー施策でもビジネス領域に合わせて、パートナーも強化していく方針となっており、重要性がわかります。

(出典:AWSの2018年パートナー施策--クラウド移行とデジタル変革の2軸推進へ

上記のように成長のキーとして位置付けられているAPNですが、NTTデータやNECといった大企業もAWSに協力することで1つの事業が成立しているところがこのエコシステムの優れているところだと感じました(APNの総売上向上=AWSの利益向上となり、数百の企業で成り立っている仕組み)


まとめ:観察して感じたこと

今回の観察では、「Iaas業界の中で、最もシェアを持っているAWSはどのような戦略なのか?」を深掘りしました。

気づいたこととしては、以下になります。

(1)顧客創出〜獲得〜利用まで一貫してマーケティングプロセスが繋がっており、インフラ選定や顧客の意思決定などコントロールできない部分にもコミュニティを用いて間接的に影響を与えている

(2)自社リソースの制限をなくすため、ビジネスエコシステムを構築し、AWS/パートナー/顧客の3社にメリットがある形を作り出したこと

また個人的に、以下もAWSの成功に貢献している様に思いました。

(1)AWSがAmazon(EC)の社内で使用されていることの社会的信用
AWSがサービス提供開始した2006年ごろだと、他社のインフラ環境上でサービス展開する事例も少なく、社会的に不安視をされていた可能性があります。ただAmazonで膨大なトラフィック処理を行なっていた実績が信頼に繋がっていた可能性があり得えたかもしれません。

(2)イベント・カンファレンスの規模が超圧倒的
まずは以下を見ていただきたいのですが、数日間に別れているものの、万単位の人が参加しているイベント・カンファレンスを例年開催しており、コミュニティの醸成・発展に貢献していると思われます。ちなみにAdobe MAX 2018(1万4000人)なので、規模感の大きさがわかると思います。

■AWSのイベント参加者
AWS Summit Tokyo 2017(4日間で19,000名以上が参加)
AWS Summit Tokyo 2018(3日間で21,000名以上が参加)
AWS re:Invent 2017@Las Vegas(4日間で約43,000人が参加)
AWS re:Invent 2018@Las Vegas(5日間で約50,000人が参加)

(3)企業の自前インフラで発生していた無駄とリスクが消える
クラウドの場合、自前インフラだと対処しきれなかったキャパ不足と余剰が発生しなくなります。この仕組みはサービスが自前でインフラを用意していたら対応できないことで、AWS(クラウド)を採用する一つの大きな理由となっていると考えられます。

(出典:「AWSを使うことはカイゼンではない、イノベーションだ」 アマゾン データ サービス ジャパン代表・長崎氏が語る、クラウドの真価とは?

お読みいただき、ありがとうございました。他にも色々あると思いますが、今回はここまでとさせてください。

自分なりに解説して見ましたが、もし何かの参考になりましたら、幸いです!今後もマーケティングなどを観察していきますので、よかったらフォローいただけると幸いです。

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