雑踏の中の私は、存在していない
人通りの多いところで、ふと端っこに避けたり、近くのベンチに腰かけたりしていると、自分だけそこにいないような感覚になる。
自分は止まっている。
周りの人たちは、隣を歩く誰かと楽しそうに話しながら、通り過ぎていく。
まわりに人はたくさんいるけど、その人たちだけの世界に包まれながらどんどん歩いていく。
だから彼らの視界に、多分私はいない。
一度目を向けられたとしても、その1秒後には忘れられているだろう。
となるとやっぱり、そこに私がいてもいなくても、同じなんだ。
人はいつ消えても、きっと代わりなんていくらでもいるし。世の中そんな風にできている。
そんなことを考えてたら、たしかに私を認識したであろう人が現れた。
私の目の前にある花壇にゴミを放り投げながら「こんばんは」だって。
こんばんはで話しかける礼儀はあるのに、ゴミを捨てないというマナーはないんだなぁ。
…
結局私はその人の存在を消した。いないも同然。
そしてその人も、きっともう私のことなんて忘れているんだろうな。
とっくに歩いて行ってしまって、雑踏に紛れてほんとうに消えてしまった。
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