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亡き「俺のハニー」を想いつつ俺は俺で生き続ける『おかえりモネ』第18週

菅波先生もなんだかんだでモネに寄りかかってワガママを言うわけです。それでこそパートナー。かと言って、“人”という字のように、お互いがお互いに完全に寄りかかってしまうと、それは共依存です。先週の金曜日にモネもやっと菅波先生にワガママを言えるようになって、お互いがお互いを支える状態になりましたが、かといってベッタリ依存し合う関係にはなっていない絶妙な距離感を今週は描いていたように思います。ワガママはワガママでも、“かわいい”ワガママなんですよね。

医師と気象予報士という国家資格持ちカップルが、お互いの知見を求め合って肩と肩を寄せ合う距離感が近くてとっても良かったですが、だからこそお互いの存在を尊重し合っていて、決して相手に依存しているわけではない。

分かりやすく仲良しぶりをアピールするお友達集団は意外と早めに泥沼の結末を迎えがち問題があるように、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉はつくづく真理で、持続可能な関係には適度な距離感が欠かせないのです。

おじいちゃんが、亡きおばあちゃんのことを「俺のハニー」と呼んで、その関係性が本当に格好良かったですが、おじいちゃんにとっておばあちゃんは、亡くなってなお心の支えではあるけれど、亡くなったからと言って自分も倒れてしまう関係性でもない、その絶妙な距離感が尊いのです。そこに菅モネの未来を見ました。
持続可能=永遠の愛は、適度な距離感を保ち続けることと見つけたり!

そういう、何事も結局は“程度問題”なんですよ、“中庸”が一番なんですよ、という身も蓋もない結論をていねいに描いていくドラマなんだと思います。身も蓋もなさすぎて、朝の連続テレビ小説というていねいな描写を積み重ねられる枠でなければ描けないテーマなのだと思います。

今週は「“あなたのおかげです”は麻薬です」という菅波先生の戒めも、結局は程度問題なんだよとひっくり返す助走のように感じました。他にも、「なんで地元で頑張ってるのが偉いみたいになるの?」問題とか、これまで提示された悩ましい問いについても、結局は決まった答えなんてなくて程度問題を永遠に考え続けるしかないという、身も蓋もないけれど、だからこそ誠実な結論をていねいに描いていくのだと思います。

「本心なんてあってないようなもんです。でもいいんです。毎日言ってることが変わっても」(#俺たちの菅波)

過激にお互いを罵り合う極端な言葉ばかりが飛び交う時代ですが、“答え”は私もあなたも持っていなくて、誰も持っていなくて、いつも私とあなたの間を漂っているものだという、下手すると両方から敵認定されかねない立ち位置をていねいに描いていくドラマ、安易に分かりやすい結論を提示しないで悩み続けることを肯定するドラマ、スゴいなぁ。

そういう意味で、ゴールってどこにもなくて、常にゴールポストは動いているわけで、それってドラマ作りとしてはゴール達成のカタルシスを描きにくいわけですが、結婚を“ゴール”として描いてしまうと、たぶんこのドラマのメッセージから外れてしまいます。どんな形で結婚を描くのか?そもそも結婚するのか?ああ、来週が楽しみすぎます!金曜日のあさイチに菅波先生がゲストに来るのが楽しみすぎます!



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