見出し画像

モネ特化型甘噛み受けとめ兵器スガナミ やっと噛みついてくれたね『おかえりモネ』第17週

「もう別れる!(意訳)」って、カップルにとって最強の甘噛みです。ある種の自傷行為でもあります。理性で抑えきれなくなった本能的な爆発をパートナーに向かってぶちまけて、受け止められるもんなら受け止めてみろ!受け止められないんだったら、もう知らないっ!ってやっちゃうわけです。

モネが爆発しちゃうのも仕方なくて、菅波先生が「あなたと私には時間がない」なんて、刹那的なことを言っちゃうのが悪いのです。

ただ、モネも悪いのです。モネがいつまで経ってもエゴをさらけ出してくれないから、菅波先生としては、このエゴとエゴのシーソーゲームは釣り合いが取れていないのではないかと弱気になっていたのです。

だから、うちの中までぼくの中まで会いに来てI NEED YOU!と必死で伝えることで、少なくとも自分の方の想いは重いことを、菅波先生はモネ(の手前の出入り口)にタックルしてしっかりとぶつけたつもりでいたのです。

たしかに菅波先生は、今週の頭からエゴ丸出しでした。「見せつけますか?」は、動物的オスの本能であるところのマーキング欲そのものです。だから、私も華丸さんも、最初は、こんなエゴ丸出し青年は俺たちの菅波ではない!菅波先生はいつだって理性的なのが持ち味なのにと戸惑ってしまったのです。菅波先生の大脳新皮質ちゃんと仕事しろ!って思っていたのです。

だけど、それこそが恋に堕ちた証拠だったんですね。理性を失うほど利己的に相手を求めてしまうのが恋だって、菅波先生の方が先に気付いていたわけです。そして、モネも遅ればせながら、仕事で忙しいのを分かった上で、やっぱりあなたを独占する時間が欲しかったのと、理性がどこかに吹っ飛んで利己的に菅波先生を求めている自分、ワガママな自分がいることを菅波先生に告白するわけです。

そりゃあ、菅波先生にとっては、待ちに待ったモネからの「会いに来てI NEED YOU, TOO!」だったわけで、すべてを捨ててでも愛に行きますよ。モネが「もう別れる!(意訳)」とか言いだして、どんなに噛みついてきたって、むしろやっとサメみたいに噛みついてきてくれたねと大喜び。

ちなみに、サメは交尾の前に相手の体に噛みついて愛情表現するそうです。

モネに噛み付かれることで、モネも理性で抑えきれないくらいに自分を必要としてくれていると、菅波先生はやっと確信を持てて、
「結論から言うと、大丈夫です。」と自信満々で言えたわけです。

二人の人間が一緒に歩んでいくって、
なんだかんだでエゴとエゴのぶつけ合いだけど、
君も僕も相手のエゴを満たすことに喜びを感じているから、
二人は一緒に歩いて行ける、
大丈夫。←結論
Q.E.D.

自分のエゴを丸出しにして相手に放り投げるって、理性的な人間にとっては本当に不安なことだから、それをしっかりと受け止めてくれた菅波先生にモネがタックルしちゃうのは理の当然です。

それにしても、この画面作りからして、どこまでも“距離感”がテーマのドラマ。二人はどんな距離感に最終的に落ち着くのか楽しみです。夫婦になっても距離感の微調整なんて一生続くものですが。

そして、利己と言えば莉子です。神野マリアンナ莉子が最初に登場した時は、明らかに“莉子は利己”イメージで描かれていたので、どんなワガママ娘なのだろうとみんなテレビの前で震えていたものです。

だけど莉子は、人間はみんな本質的に利己的であることに自覚的なだけの、聡明な好ましい人物でした。だからこそ、周囲はみんな、伸び悩んでいる莉子を何とかして支えたいと思うわけで、朝岡さんの神の一手には震えました。

ウェザーエキスパーツ社としては、視聴率不調問題への何らかの対策をテレビ局側に示す必要があったわけです。テレビ局側には
「新しい気象キャスターを投入して、2人体制にすることで、テコ入れを図ります。」
と伝えつつ、現場には
「新しい気象キャスターを投入して、テコ入れを図ります。」とちょっとだけ情報不足になってもらうだけで、あら不思議!すべてが解決してしまったわけです。ふり返ると、確かに上司チームは何一つ嘘は言っていません。情報がちょっと足りないだけです。

莉子が一皮剥けるためには、自己実現キャラを捨てるという解決策を予想していたのですが、もっともっと“考える”という解決策でした。計算高くて何か問題でも?利己的に誰かのためを思うことに何か問題でも?だって、人間はみんな本質的には利己的なのだから、私はみんなのことを必死で考える、それが私の自己実現にもつながる、利己と利他は両立するものですよね?的な。莉子が“計算高い観音様”として開花することを、私も信じています。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文