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23 その日

その日、私は出張で早めに家を出なければならなかったため、ちょっとの散歩を妻に頼んだ。さて出かけようと思った時、呼び鈴が鳴った。妻がちょっとを抱いている。呼び鈴を押したのは、日常的にそれほど接点の無い高年の男性だ。妻の手とちょっとの体が赤く血で汚れている。後ろにいた男性が「ウチの犬が咬んでしまいました」と言った。2016年9月7日の事だ。
妻がちょっとを連れて砂浜を歩いていると、音もなくいきなり背後から大型犬が襲って来た。大型犬は初め愛犬に襲い掛かり、妻は愛犬が咬まれるバリバリという音を聞いた。とっさに愛犬を守ろうとした妻を、大型犬は執拗に攻撃し続けた。大型犬が遠ざかったところを見計らい、妻は知人の家に助けを求めようと愛犬を抱いて走った。妻・愛犬ともに出血がひどい中、折よく海岸の出口で1台の軽トラックに遭遇し、妻は助けを求めた。実はこの軽トラックの主こそが大型犬の飼い主だった。
妻は両手を15ヵ所以上咬まれる重傷を負った。傷を見た医師の言葉を借りると、「ガブガブ咬まれている」との事。愛犬・ちょっとは全身を咬まれ、内臓にまで傷がついている可能性があるとの事で、飛行機で検査設備の整った鹿児島の動物医療センターに送ることになった。動物病院から保健所に通報が為された。残念ながら先方は狂犬病や混合ワクチンなどの予防接種も怠っていた。

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