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(社長命令)半年以内に彼女作って来い!!

ある日の昼間。仕事中、俺は唐突に偉いおっちゃん達に呼び出された。

会議室のソファに深々と腰掛けて偉いおっちゃん達二人が 、俺が来るのを待っていた。

俺は二十代前半。社会人二年目、名前は淳。
一週間に三十本はアニメを見る重度のアニメオタクだ。

一体何の用だろうか?
呼び出されるようなことは何もしていないが・・・・・・

俺に座るように促した後、彼らは用件を切り出す。

偉いおっちゃんA「お前・・・・・・今までに彼女は?」

俺「はあ? いませんが」
偉いおっちゃんB「一度もいないのか」

俺「ええ、一度も」

偉いおっちゃんA「じゃあ、お前半年以内に彼女作って来い」(命令)

俺「・・・・・・は!?」

偉いおっちゃんA「彼女ができれば自信がついて仕事もできるようになる」
俺「・・・・・・はあ」

偉いおっちゃんB「まずは服装を変えないとな。眼鏡じゃなくてコンタクトにしてみてはどうか」
偉いおっちゃんA「好きな芸能人は誰だ? 」
俺「基本的に興味ないのですが……木村よしのでつ」
A「オレも好きだぞ」
B「服装も変えよう」
A「床屋はどこだ?」
俺「1000円のとこです」
A「他のやつにどこ行ってるか聞け」
A「風俗行ったことあるか」
俺「・・・・・・キャバクラ?」
A「それは風俗じゃねえ。わかった。お前今度あいつと服買いに行って来い」
俺「まじすか」
A「ゲーム機は何持ってる」
俺「Xbox」
A「マニアックだな」
B「カラオケは?」
俺「アニソンしか歌えません」
A「アニソン禁止!」

俺「ひー」

A「車は?」
俺「ペーパーです」
B「練習しろ」

こうして彼女を作るため、俺は後日先輩の一人に付き添われて地元の大型ショッピングモールへ、服を買いに行くことになったのだった。

第二章【アニメを禁止にされるぐらいなら俺は・・・・・・】

週末。金曜日の夜。

室内にて。
先輩Aが俺を呼び、パソコンの画面を指差した。そこには、地元の大型ショッピングモールのHPが映っていた。

明日、先輩Bと回る店をこれから言うから、メモをしろという。

ユニクロ、GAP、BANANAリパブリック、ユナイテッドアローズ、DIESEL、コムサ、AVIREX、THE NORTH FACE、Levis、アズビー などなど。

最初の二つぐらいしか知らなかった。



翌日、土曜日の朝11時30分。先輩Bと地元の大型ショッピングモールで待ち合わせ。

せっかくの休日をこんなオタクのために時間を使わせてしまって申し訳ない。

しかも、その先輩は彼女さんに「自分の服もロクに選べないのに、ひとの洋服のコーディネートなんかできるわけないでしょ!」

と言われたそうである。

さて、私の服装であるがそれは想像にお任せするとして

持ち物のバッグについて。
いつもはそこらへん(駅の端っこの出店? など)で買ったような1000円リュックを背負っているのだが、その日は違った。

F1レースのときタダでもらったHONDAのバッグ(確かエコバッグ) を持っていった。

自分ではお気に入りのバッグだったが、会って早々に先輩にダメだしをされた。

「お前、そんなもの持っているやついるか? 周りを見ろ」と。

そのF1レースでもらったHONDAのバッグには、F1マシンが大きく描かれてはいたが、 協賛企業のロゴが入ったいたりした。

自分ではお気に入りの品物でも、世間一般では通用しないらしい。

ズボンを買いにまずは、ユニクロに突入。
しかし……
オレの体が細すぎて既製品では対応できず。27インチは女性用しかない。レディースだと股が浅いのでやめたほうがいいといわれる。
男性の最小28とかにするときんちゃくみたいに横がぶかぶかになる。
上着もそう。Sだと丈が短く、Mだと横幅がでかすぎる。
身長と体重のバランスが悪い。
背がもっと低い方がつりあいがとれると言われる。
先輩Bは「サイズがないとは思わなかった……」と言って途方にくれた。
彼は携帯を取り出して、先輩Aに電話した。
A「(コーデイネートが)難しい。どうしよう」
B「GAPキッズにいいけ」

どんなアドバイスだよと思いつつ、行った。

やっぱりダメ。
とりあえず先にユニクロで皮ジャン(10,000円)、防寒用にタイツ(1、500円)、あとタートルネックのセーターを買った。

かさんでいく出費に異議を唱える俺。

オレ「フィギアに一万は出せるが、服に一万は出せない!!」

との一言に、先輩がキレた。

しかし私も譲らない・・・・・・。

「アニメを禁止にされるぐらいなら俺は多摩川に身を投げるか、樹海で首を吊る!!」

「いいか初対面の相手(女性)にオタだとばれないようにしなければならない」

いつになく難しい任務だった。会話から生活すべてを変えなければならないだろう。

第三章【はじめてのおしゃれ前編】

Asbeeでコンバースの靴を買う。生まれて初めてコンバースの靴を買った。ハイなんとかというブーツみたいになっていて、履くのと脱ぐのに時間がかかる。めんどくさい・・・・・・。

昼は、佐世保バーガーを食った。まいうー

夕方4時ごろ解散。その後ジーンズメイトと洋服の青山を見るがやっぱり27インチない。

午後6時渋谷で先輩Cと合流。
ズボン買えませんでしたと報告したら、 丸井に細いのがあるというので案内してもらう。
キャサリンハムネット。結構いい感じだがズボン1本が¥15,000もする。ありえねー高さ。

その次は丸井でて別の店、トゥモローランド。こっちもいい感じだが¥25,000。ゲーム機(PSPとか)買ったほうがいいな

そのときは持ち合わせなく見ただけ。

結局ズボンはキャサリンハムネットで¥15,000のを買った。

夕飯はハワイアンのハンバーガー(KUA`AINA)を食う。昼、夜と続けてハンバーガだった。

翌日、地元にできたばかりの床屋へひとりで髪を切りに行った。初めて入った店でカットだけのお店だった。

20年以上、物心ついたときから、髪型を変えたことなど無かった。 よって、どんな髪型が世の中にあるのか、何が流行っているのか全くわからなかった。店でカットの順番を待っている間に雑誌でも読んで研究しようかと思ったが、別の客がずっと雑誌を眺めていて、結局雑誌を手にすることができなかった。

髪をカットしてくれた兄ちゃんは、頭の真ん中でモヒカンのように髪を立てていた。

めんどくさかったので、「一緒のにしてくれ」と頼んだら↓こんな感じに。切ったときはワックスでもっと髪がツンツンにとんがっておりましたが。

それから、肌が荒れているので育毛剤をつけた方がいいだの、ワックスについて講義を受けた。

リア充は準備をするだけでも疲れるな・・・・・・。

第三章【はじめてのおしゃれ後編】

イメチェン完了から一週間ほどが経ち、オレは再び偉いおっちゃん達に会議室に呼び出された。

偉いおっちゃんB「髪はいいよ。よくなった。ばっさり短く切ったな」
淳「店入って店員と同じのにしてもらいました」

散髪1,400円 まゆかっと 500円。あわせて2000円いかないリーズナブル。

偉いおっちゃんA「服が元に戻ってるよ。Yシャツきるなら、その上にトレーナーじゃなくてジャケット着たほうがいい」
淳「はあ」
服なんか興味なく今まで気を使ったことがないのでさっぱりわからなかった。つかトレーナー系がダメだとぶっちゃけ着るものがない……

偉いおっちゃんA「服はどうしてるんだ?」
淳「母者が買ってきたものをそのまま着てます」
自分で買うと金かかるからな。

偉いおっちゃんb「母者のいうこと聞いてるから彼女できないんだよ」
淳「○×△◇!?」

おっちゃんAにスーツセレクトだかスーツカンパニーがいいと言われる。どっちだか忘れた。渋谷109の地下って何があんだ?

その後、おっちゃんがもってるTシャツを着させられたりした。自分にはサイズが大きすぎてぶかぶかだた。

着替えてる間、

偉いおっちゃんA「ブリーフだったらどうしようかと思った。」
さすがにそれは無い。
鞄もリュックじゃなくて別なのがいいかなとか思い始めたり
あと身体が細すぎるのでズボンはレデースで十分だろうと言われた。

後日、おっちゃんAからマンダムのワックスもらう。髪をもっと立てろとのこと。

おっちゃんA「コーディネーとしたやつがだめなんだな。今度別のやつに付き合わせよう」

またか・・・。



第四章【アニメじゃない アニメじゃない 本当のことさ~】

とある冬。

冬コミを意識し始める頃……

大学生のときに知り合った仲間同士(サークルみたいなもの)で、忘年会をやろうということになり
5人ぐらいが集まった。(男3、女2)
ちなみにオタクの集まりではない。

幹事は俺だったが、仕事でトラブり2時間ぐらい遅刻していった。

そのころ俺は、ちょうど服装とかを変え始めたばかりで、友人達はその理由を知っていた。

で出席者の一人の女の子が酔った勢いか「私最近失恋したの~」と愚痴をこぼした。
俺は少し前から彼女がほしいと言っていた

その子は新しい彼氏を探している・・・

何を思ったのか友人の一人が
「じゃあお前ら付き合っちゃえばいいじゃん」と言い出した。

内心ではそうなったらどんなに嬉しいかと思いつつ
「まさか、そんな、じょうだんでしょ。ははは」

と笑っていたら

女の子「じゃあ付き合おうか」
俺「え――?」

まさかのありえない展開に耳を疑う
彼女は容姿抜群でめっちゃもてる。
しかも俺は彼女のことが前々から好きだった
でもオタクの俺なんか相手にしてくれるはずがないと思っていた。
ファッションがカッコいいわけでもなく、トークが上手いわけでもない、流行の歌も唄えない。
いつももっと仲良くなりたいと思いつつ、彼女が普段以上におしゃれをしてみんなの前に現れたりしたときには、どきっとした。

(ちなみにいつもオタクの世界にどっぷり浸かっている私が、 現実の世界の異性を好きになることなど滅多に無い。)

酒に酔った冗談でしょと思いつつ、ちょっと期待して

俺「いいの?」
女の子「淳くんならいいよ」

なんじゃそりゃ!!

第五章【クリスマスイブっていつだっけ】

友人達も驚くありえない展開に突入。
世間ではクリスマスを控え、今度一緒に二人で食事をしようということになった。

場所は渋谷。
しかもクリスマスイブ

俺「イブっていつだっけ・・・」
と慌ててケータイのカレンダーを開く俺に

『おいおい、大丈夫かよ・・・』

と、その場にいた全員が突っ込む。

渋谷なんて完全にAwayだよ(元ネタ:電車男)

忘年会の夜は酒と話に夢中になり、その場にいたメンバーの全員が、終電のことなどすっかり忘れていた。

慌てて帰る仕度をして店を出る。

最寄の駅にはいくつかの地下鉄の路線が乗り入れていたが、携帯等を使用し各自家に帰る手段を検討するも、とき既に遅し。殆どの電車が終電の時刻を過ぎていた。

メンバーの一部はどこかに消え、俺と彼女とそしてもう一人の参加者(男)が残った。

三人とも同じ方面で帰る電車を探していた。

彼女「どうしようか。3人じゃラブホとか入れてもらえないだろうし」

その言葉に唖然とする。
いや、物事には順序というものが・・・
まだデートすらしてないじゃん。

なんと言えばいいのかわからず流れるまま、とりあえず駅へと急いだ。そこに着いてから、何本も地下鉄の路線が乗り入れる広い構内を、あっちへこっちへと走り回る。

駅員の『~方面行き、終電でーす。急いでくださいー!』という声が響く。

三人で急いで相談した結果、「電車に乗り、帰れるところまで帰ろう」ということになり、終電に飛び乗った。

彼女はJRが乗り入れる都内の駅で先に降り、俺ともう一人は私鉄が乗り入れる都内の駅で降りた。

それから俺は地元近くのJRが乗り入れてる駅まで電車に乗り、そこから自宅まで歩いて帰った。

30分以上かかったと思うが彼女とずっと電話していたので、気づくといつの間にか家に帰り着いていた。


第六章【クリスマスプレゼントってどう選ぶんだ?】
彼女と食事をする前に俺はクリスマスのプレゼントを選びに行った。

彼女からは事前に↑はいらないという連絡は受けていた
がそれでも(初めて彼女が出来た)記念に何か渡そうと思いとりあえず横浜に行くことにした。

彼女の好きなものは知っていた。横浜の地下街をふらふらと歩いていると
彼女の好きそうなものが置いてある店が現れた。
店に入って物色してみたものの
その中から何を選べばいいのかさっぱりわからない

好みを全く聞いていなかった、もしその子の趣味と違ったものを選んでしまったらという意識が働きその店を後にする。
無難なものを贈ることにしようと思い、とりあえずデパートに向かう。

小物や雑貨を中心に見ていったのだが、これといった決め手が無くCDショップでみつけた楽器の置物に決定。

あとは・・・・・・店か。

・クリスマス
・渋谷
・デートで使える雰囲気ある店

会社は渋谷にあるものの、知っている場所はラーメン・とんかつ。夜は居酒屋チェーン。

年齢=彼女いないの俺が急にそんなスポット出てくるはずがなく、知ってそうな友人もいない。
とりあえず本屋に行って雑誌で情報収集したが、めぼしい情報は得られなかった。


第七章【一緒に過ごしたい!?】

夜、20時。仕事帰りに彼女と渋谷で待ち合わせ。
結構ギリギリだったがなんとか遅刻せずに済んだ。

彼女「どこに食事しに行こうか~」
俺「会社は渋谷だけど、いつも昼どきに入っているのはとんかつ屋とかカレー屋で夜デートに使うような店は知らないんだよねー」
彼女「そうだよねー。じゃあ、いくつかいい店知ってるからそこ行ってみよう」

と彼女に促されるまま、京王線の発着するマークシティの裏や東急プラザの裏などを何軒か
回る。

当然、クリスマスイブなのでどこも予約で一杯。
なかなか空いてない。

肌寒い夜、ようやく辿り着いたのは雑居ビルの地下1階にあるBARみたいな店

店は狭いものの、照明は落としてあり、静かで雰囲気もよし。

腰を下ろしてピザ等の料理を注文。そして乾杯した。

彼女「じゃあ今日はもっと話をしてお互いの親睦を深めようか」
俺「あ、ああ」

完全に向こうのペースである。
それから互いの家族・兄弟のことについて話したり
大学時代の話をしたりした。

彼女とは知り合ってから結構長いものの、知らないことが多かった。

そして適当な頃あいを見計らって、用意しておいたクリスマスプレゼントを渡した。

彼女「どうしたの!? 好みとかわからなくて大変だったんじゃない?」
俺「・・・うん。気に入らなかったら部屋の隅にでも置いといて」

それから確か年末年始の話になった。

クリスマス、正月とイベントが恋人達を待ち受けるこの季節。
お互いどう過ごすのか気になるのは当然だ。

しかし彼女は実家に帰るのだろうと思い込んでいた俺は

「初詣どうするの?」
との彼女の問いに

「例年通り地元の川崎大師に行くよ。田舎帰るの?」

「うん」

しかしその後、
「あーあ、また正月は恋人と過ごせず一人か・・・・・・」
と彼女がぼやくのをきいた。

ここは無理やりにでも引き止めるべきだったんだろうか

次に年明けてからどこに行こうかという話になり思案の結果
ジブリ美術館に決まった。

俺がアニメ好きなのと彼女がジブリなど可愛いキャラが出てくるアニメが好きなのでそこに決まった。

会計は彼女がトイレに行ってる隙に済ませておき、それから俺達は店を出て駅前で別れた。

第八章【告白】
年明け、夜。自分の部屋で彼女とメールをしていた。
どうやら彼女は年末に失恋したショックをずるずるとひきずっていて、いまだにふっきれていないらしい。
(周りの女友達の話から察するに原因は他にもありそうだが)
詳しいことは何も聞いていなかった。
聞こうかどうしようか迷ったが、そのうち話してくれるだろうとも思った。

そんな彼女とのメールのやりとりの中で

「もう人生やりなおしたいよー」

という一文が目にとまった。

彼女自身が今置かれている現状(おそらく仕事・恋愛・家庭環境など)
に対して、「いままでの選択が合っていたのか? 今後どう行動すればいいのか」と
悩み嘆いているようだった。

誰でもそんなことを考えるときがある。

だが、他人に話を聞いてもらったとしても、たいてい解決できる類の問題ではない。

答えの出ない問い・後になってみないとわからない問いにいつまでとらわれているのか

しらねーよ。自分で選んだ道じゃないのか? と思った

しかし放っておくわけにもいかないので、励ましのメールを送る。

すると返ってきたメールには

「淳君、無理に好きになってくれなくてもいいよー」

と書かれていた。

いつかは伝えようと思っていた。

無理になんて好きになってませんよ

元々好きだったんですから!!

ただ実際本人を目の前にして
場所とタイミングを見計らって告白しようと思っていた。

いまここでそれを打ち明けるべきか・・・

あまり時間をかけて迷うのもよくないだろう。
話の流れからちょうどいいと判断し、思い切って自分の気持ちを伝えることにした。

メールを返さず電話を入れる。
こっちから電話することは殆どなかった。

俺「いま時間空いてる?」
彼女「うん」
俺「こういうのは電話より直接会った方がいいと思うんだけど・・・」
彼女「そうだね」
俺「ずっと前から好きだったんだ」
彼女「――」

電話越しに彼女の驚いた様子が伝わってくる。

「ありがとう。嬉しい」

喜んでくれたみたいでよかった。
そのまましばらく話してから、電話を切る。

せっかくロマンチックな場所とかで言おうと思っていたのに――

どこで? どういうシチュエーションで?

とひとりで考えていたのが、全部ぱあになった

話している最中は気づかなかったが、電話が終わってから緊張していたのだとわかった。

感情が昂ぶり何もできないまま糸の切れた人形のようにしばらくベッドに突っ伏した。


第九章【いよいよデートでジブリ美術館へ♪】

いよいよデートでジブリ美術館へ♪

俺の脳裏には同僚からもらったアドバイスがあった。
「手ぐらい繋げ。何かのタイミングですっと彼女に向かって手を差し出すんだ」

同僚は、相手がこちらに少なからず好意を持っていることから、チャンスだと判断したらしい。

俺はそのアドバイスを受け入れ実行しようと決めていた。

年が明けてから、ジブリ美術館へ行く前に彼女とは飲み会とかで2回ほど既に会っていたし

何より女の子と初めて手を繋いで歩くという野望に燃えていた。(二次元の野望)

デート当日、午後に吉祥寺で待ち合わせ。

その日は、天気予報では雨となっていたのだが、実際には曇りで傘の出番はあまり無さそうだった。

彼女の日記(ブログ)で読んだのか、直接本人から聞いたのか定かではないが
彼女は雨が嫌いということを知っていた。
だから
「降らなくてよかったね」

と言ったら

「でもね今日は雨用の格好をしてきたから、雨が降って欲しかったの・・・」

やっぱ女心は俺にはわからん。

バスに乗ってジブリ美術館へ。

彼女は何度もここに足を運んでいるらしい。

館内では短い映画が上映されるのだが、映画を見るため二人並んで席に着いた。

俺はここで彼女に向かって、手を差し出そうと決めた!

部屋の照明がやや落とされ、上映が始まる。

手を繋ぐ前に、彼女の手の上に自分の掌を重ねようかどうしようか、迷った。

何度もそれをやろうかどうしようか迷っているうちに、映画が終わる。

電気が点けられ明るさが戻り

観客達が席を立ち、荷物を手に移動を始める。

俺は意を決して、まだ座っている彼女に向かって手を差し出した。

第十章【「まだ早い」 それが彼女の答えだった。】

「まだ早い」

それが彼女の答えだった。

彼女はこちらの手を取らずに立ち上がる。

俺は手を引っ込めるしかなかった。

どうにも気まずい雰囲気が二人の間に流れる。

そのまま、まだ見ていないところを回り、美術館を出る。

陽は高く、解散するにはまだ早い時間だった
これから別の場所に行こうか。
行けば気まずさは払拭され、お互い楽しかったで一日を終えることができるだろうか。
どこに行こうか

そんな考えばかりが俺の頭の中をぐるぐると回っている

バス停に向かって歩いている途中、彼女は道路の反対側にある自販機を指差し

「ちょっと寄っていっていーい?」

と聞いてきた。

喉が渇いて単純に飲み物を買いに行くのだろうと思っていた。

二人で道路を渡り、自販機の前へ行く。

彼女が飲み物を買い

さあ、行こう。歩き出そうと思ったら

「はい」

と缶を差し出してきた。

え?

何で彼女が缶を渡してくるのか、最初俺にはわからなかった。

手を握るのを断ったことについての、お詫びだという。

ああ・・・

と言いながら、受け取ったものの

手を繋ぐのを断られた上に、さらに缶コーヒーまで奢られるという
なんとも情けない状況となった。

そして再び歩き出す。
「次どこ行こうか~」という話題に当然なったが

思考が3割ぐらい停止している俺は、この後どこかに行こうにもいいアイデアが全く思い浮かばなかったので

別の場所で日を改めて、なんとか次のデートの約束を取り付けようとした。

とっさに頭に浮かんだのは、横浜や台場。カップルがよく行く場所である。

それを提案してみたのだが・・・

「ちょっと洒落たお店があって海が見えるだけじゃん」
(正確な言葉は記憶に残っていないが、とにかく興味ないという感じ)

横浜も台場もダメ。一般的なデートスポットを提案したが

じゃあ一体どこに行けばいいんだ???

鎌倉はもう何度も行ったことがあるって言ってたしな~。

台場なら、大江戸温泉に行ってみようかと思っていたのに(彼女が浴衣とか好きそうだから)
旅行は 風情のある温泉街(伊香保とか)を考えていたがそれこそまだ早いと言われるだろう。

こちらが考えを巡らしていると、彼女は言った。

「ラブホとか言ったら怒るよ」
「言わねーよ」(怒)

二人の間に再び沈黙が流れる。

もう決定的だった。

そのどうしようもない気まずさを打破するだけの提案力を俺は持っていなかった

次の約束も取り付けられず、気まずい雰囲気のまま「さよなら」することとなった。


第十一章【続かなかった恋】


後日、次のデートはどこにしよう。しかしいい場所が全く思い浮かばない
なんとかしなくては!
と一人思案している自分の元へ、彼女から電話がかかってきた。

彼女からはよく電話がかかってきた。

しかしその日の彼女は泣いていた

「やっぱり好きになれないごめん」
「いまは好きなことやっていても打ち込めないという」

泣きたいのは俺の方だ・・・

彼女が自分のことを好きではないというのは薄々かわっていたことだった

一緒に喫茶店で話していた時、ふざけて腕を掴んだら

ひっ
と悲鳴をあげて驚かれるし

そういう対応を見ていたので、今回の彼女からの電話はむしろやっぱりと思った

電話が終わってから、自分の部屋でどこが悪かったのか独りで長い間考えた。


第十二章【淳はなぜフラれた!?」 坊やだからさ・・・】
思えば、ジブリ美術館へのデートは彼女が風邪を引いて一度流れていた。

それまでは日に4~5通ぐらいの頻度で互いにメールを交わしていた。
「今日は~に行った」とか「~してた」とかいう内容の他愛のないことだった。

それで流れが変わったというか、熱が冷めてしまったのではないか
と自分の中で無理やり区切りをつけることにした。

あと草食の自分と肉食の彼女とは考え方に差がありすぎると思った。

ラブホとかに行くという話しになったとき

こちらが
「デート3回もしてないのにいかないでしょう」
と言ったら

彼女は

「会ってすぐその夜にいくこともあるよ」

と、さらっと返した。

他にも

彼女があるとき飲み会の席で
「エッチしなくていい彼氏が欲しい」
と前に言っていたことを思い出し

彼女と夜、長々電話しているとき(そのときはまだ盛り上がっているときだった)

淳「男ってのは好きな女とはやりたい動物なんだ」

彼女「するのはいいんだけど・・・」

とこんなやりとりいけなかったんだろうか」

ちなみに私の恋愛レベルは中学生ぐらいである(それ未満かもしれない)

それをとうに通り越している彼女との間には
正直、レベルに差がありすぎると思った。

まずはそこを埋めていかなくてはならない。

徐々に女の子相手の会話とか、デートとかを重ねて経験を積んでいかなければならないのではないだろうか

自分がもう少し駆け引き上手だったら、この恋をこんなに早く終わらせることは無かったのかもしれない

と後になってから思った。

#創作大賞2023 #エッセイ部門

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