松﨑 丈

宮城教育大学 特別支援教育専攻 教授。しょうがい学生支援室 副室長。 ろう者(先天性風…

松﨑 丈

宮城教育大学 特別支援教育専攻 教授。しょうがい学生支援室 副室長。 ろう者(先天性風疹症候群による重度感音性難聴)。主な意思疎通手段は手話と文字。 ここでは日々思索していることをしたためています。 本文の最初にある画像は、その風景に心惹かれる度に撮っておいたものです。

最近の記事

専攻長から新入生の皆さんへのメッセージ

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。 ようこそ宮城教育大学特別支援教育専攻へ。 私は、専攻長を務めている松﨑です。生まれつき聴覚障害があり、手話と文字で意思疎通を図っています。ここで皆さんに挨拶するときも、こうしてあらかじめ文章として作っておいたものを見せています。長文なので、ゆっくりスクロールしながら読んでいただきます。 皆さんを新たな仲間としてここにお迎えすることは、私たち特別支援教育専攻教員にとってもたいへん喜ばしいことであり、お祝いと歓迎の意を表します

    • 自己紹介。

      1977年広島生まれ、別府育ち(2~18歳頃)。 先天性風疹症候群による重度の感音性難聴(両耳共110dB)。 手話と文字で意思疎通。 教育歴 ・広島県山彦園 ・大分県立聾学校幼稚部 ・別府市立上人小学校 ・別府市立北部中学校 ・大分県立別府羽室台高等学校 ・宮城教育大学教育学部   中学校・高等学校教諭一種美術免許状、専門は油絵。   学士(教育学)を取得。 ・宮城教育大学大学院教育学研究科   聾学校教諭専修免許状、修士(教育学)を取得。 ・東北大学大学院教育学研究科

      • 宮城教育大学大学祭にヘラルボニーがやってきます!

        10月28,29日に宮城教育大学で大学祭が久しぶりに開催されます。新型コロナウィルス感染拡大の影響で大学祭開催中止が続き、その間に実行委員会のノウハウや資金などの引き継ぎが難しくなっていた現状において、本学学生約90名が集結して、ゼロの状態から大学祭を実現させようと頑張って取り組んでいます。 宮城教育大学大学祭実行委員会HP https://camp-fire.jp/projects/view/690745?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_my

        • 多くの皆さんに『聴覚障害×当事者研究』が届きますように。

          2018年、2019年に宮城教育大学で開催した「聴覚障害当事者研究シンポジウム」。 聴覚障害領域における様々な「困りごと」と「当事者研究」とをつなげた実践事例をシンポジウムの場で紹介する取り組みは日本で初めてであり、シンポジウムの反響は大変大きいものでした。この取り組みに関心を持ってくださった金剛出版の編集者の藤井さんから書籍化の話をいただきました。 本書では、シンポジウムで紹介した事例に新たな事例を加えるとともに、「聴覚障害当事者研究」の考え方、進め方、気をつけておきたいこ

        専攻長から新入生の皆さんへのメッセージ

        マガジン

        • 「自己/当事者」の話。
          39本
        • 「心理」の話。
          24本
        • 「教育」の話。
          43本
        • 「障害」の話。
          14本

        記事

          「聴者を演じるということ 序論」とろうの子どもたち。

          2023年5月6日。東京の北千住駅近くにある「BUoY」で開催された「~視覚で世界を捉えるひとびと」というアートプロジェクトに行きました。 そこで発表された作品の1つに「聴者を演じるということ 序論」がありました。この作品は數見陽子さんと山田真樹さんが役者として出演し、演出家は牧原依里さんで、舞台監督は雫境さん。全員ろう者です。ろうの役者2名がクライエントを見送った社員2名がカフェでやりとりする場面で演じるのですが、興味深いのはその社員2名が聴者という設定です。この作品の発

          「聴者を演じるということ 序論」とろうの子どもたち。

          言語としての手話に対する不当な評価や否定的態度。

          Grosjean (1982) は,アメリカのろう者は,自らの独自の言語と文化を持っていること,教育や就業面で多大な差別と偏見を受けてきたこと,自らの言語と文化に対する主要グループの否定的態度を受容していること,そして,彼らの大部分が少なくともある程度はバイリンガルであること,と述べている。 この主要グループの否定的態度とは何だろうか。日本の先行研究をレビューすると、次のようなことが確認できる。 日本においても,文部省関係者やろう教育の指導的な立場にある専門家に,言語とし

          言語としての手話に対する不当な評価や否定的態度。

          ろう重複障害教育の実践的認識。

          上記タイトルに関して以下のような紀要論文を出しました。 松﨑丈(2023)ろう重複障害教育担当教員の実践的見識 : 聴覚支援学校で20年以上の経験を持つ教員のインタビューから. 宮城教育大学紀要, 57, 111-124. 以下のURLから本全文ダウロード可能(無料)。 https://mue.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_

          ろう重複障害教育の実践的認識。

          難聴児の「ことば」を考える。

           本記事は、上記タイトルと関連して、2007年度に掲載した論考の一部を引用する形で紹介したものです。  これまで難聴児とご家族の相談支援に関わっていますが、現在も以下の内容にあるような問題がまだ見られますし、論考を読んでくださった様々な種類や程度の難聴がある聴覚障害当事者からも15年ほど経った今もつながる内容であり、大切だと思うと指摘してくださっています。何かの参考になればと思います。 文献情報 松﨑丈(2007)難聴児の教育・ことば・コミュニケーション. 難聴者の明日,

          難聴児の「ことば」を考える。

          自ら発信すれば世界は変わる。

          小学3年から中学3年までの6年間、学校で心ない差別といじめを受けてきました。この状況をどうにかして変えたいのになかなか変わらない不条理な現実にもがき苦しみ、中学3年の弁論大会で決意してもがき苦しんできた6年間の経験を率直に語りました。そうしたら学校でのいじめと差別は嘘のようになくなり、さらに集団会話の内容を伝えてくれたりその時に流行っている面白い話し方を教えてくれたりして皆とよりつながる経験が増えました。自ら発信すれば世界は変わる。そういうことを確信できたのです。この確信は、

          自ら発信すれば世界は変わる。

          軽度・中等度難聴者支援体制の整備について

           軽度・中等度難聴者は、現在も身体障害者福祉法において認定対象外とされています。障害者手帳を交付してもらえず、本人や家族は「あなたは法的に障害者ではありません」と言われてしまうという状況が起こっています。学生時代から、大学で勤務している軽度・中等度難聴の職員とこうした問題について情報交換しており、問題意識を持っていました。そして、2005年度に宮城教育大学教員として採用されてすぐに仙台市の受託研究「軽度・中等度中途聴覚障害者生活支援システム構築に向けた研究(仙台市、宮城教育大

          軽度・中等度難聴者支援体制の整備について

          「聴覚障害とひきこもり」

          2020年12月12日(土)に「聴覚障害者の精神保健福祉を考える研修会2020」で聴覚障害とひきこもりについて講演。 斎藤先生の講演内容はどちらかといえば学術的な知見を網羅した総論的な内容でしたので、こちらは当日斎藤先生の話を聴きながら参加者がひきこもりの問題についてより深く理解していただくためにどうしたらいいか考えながら講演してみました。 先日、参加者の方々から感想を頂きましたが、幸いにもその通りにひきこもりの問題を深く考えていただくきっかけになれたようです。講演の内容

          「聴覚障害とひきこもり」

          「誰かと相談してはどうか?」

          8年前の今日に別府で約20年ぶりに再会できた中学校時代の恩師。 小・中・高校時代を生きた中で、私に「誰かと相談してはどうか?」と冒頭の言葉をかけてくれた唯一の教師です。12年間、学校教育を受けていながら現在でいう「合理的配慮」がなかったために教師全員のことばを知ることができませんでしたが、冒頭のことばは、私に語ってくれた数少ないことばの1つであり、今でも鮮明に覚えています。 中学校時代は自殺を何度も考えており、思い詰めていた私の表情に気づいてくださったのか、昼休みだったか

          「誰かと相談してはどうか?」

          自己エスノグラフィー(auto-ethnography)による研究

          現在、自己エスノグラフィー(auto-ethnography)による研究を個人的に始めてからもう6年目。小学校時代に毎日書いていた日記もデータの1つとして収集・分析しています。 当時の日記は、日本語の読み書きを身につけるための指導の一環として行われていましたが、改めて読み返してみると、小学校に入学した時から誰かとつながることができるのかいつも不安と緊張に駆られながら自分なりに生きようとしてきた足跡がみえてきます。 例えば、聴こえる同級生と遊んだことについて「楽しかった」や

          自己エスノグラフィー(auto-ethnography)による研究

          ろう幼児の語りに見る「手指休止」

          1.自己編集を示唆する停滞現象としての有声休止  人間は、いろいろな出来事や情報を一つの物語としてまとめて一方的に語るとき、あらかじめ何をどのように話すかを考えようとします。こうした思考活動は、心理言語学では「自己編集」とよばれています。  これは発達心理学者の岡本夏木(1985)のいう「二次的ことば」の特徴の1つであり、言語によって分析したりまとめたりするといった思考活動を示しています。ようするに、考えながら話す、または話しながら考えるということです。  ただ、自己編集は

          ろう幼児の語りに見る「手指休止」

          超巨大地震が発生した瞬間に起こった心理状態。

          東日本大震災が発生した2011年3月11日14時46分。 その時、自分は宮城教育大学3号館3階にいた。3階にある松﨑研究室の時計の針は、過去に経験したことがない異常な揺れ方で床に落ち、動くのを止めた。止まった時計の針は自分の当時の震災記憶そのものだ。 毎年3月11日になると、当時自分が見てきた映像が写真のようにモノクロで映し出され、その写真を見ている自分も静止したかのように映像を見つめているような感覚にいつも襲われる。 最近、当時の記憶を少しずつ言語化できるようになって

          超巨大地震が発生した瞬間に起こった心理状態。

          東日本大震災3.11でどのように活動してきたか

          東日本大震災3.11を通して自分はどのような活動をしてきたのか。 当時の状況を記録してきたメモをもとに活動記録資料の1つとしてここに残しておきます。 <東日本大震災の前に備えていた防災対策> ・10年前頃(2000年頃)から宮城県の映像メディアで30年以内に大震災が発生すると言われていたため、防災対策を練り始める。 ・仙台市の洪水・土砂災害ハザードマップ等を参考に安全と思われる地域の賃貸マンション(仙台市青葉区八幡)に決定。  ・大家に毎月水道代を現金払いする時、筆談で室内

          東日本大震災3.11でどのように活動してきたか