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会社より、自分に忠誠を尽くす時代

柳井社長は「優れた人材にはチャンスを与え、それに見合った教育や待遇が必要だ」と説明する。問題を改善し物事を変えていく力や常に新しい事に挑戦する積極性といった資質を重視する。

カナダで働いて20年ほどになる。ここ15年ほどは大学職員をやっていた。

上の記事を読んでまず驚いたのは、柳井社長のこの発言。えっ?日本の企業では、こんな当たり前のことがまだ実施されていないの?能力も違う、資質も違う人間の扱いを一律にしていたら、それこそ「不平等」というものだ。

「不平等」だけではない。企業にとっても本人にとっても「損失」だ。時間もリゾースも有限なのだ。各人の強みを伸ばす教育や経験にひたすら投資し、本人の成長をうながすことこそが企業の成長を支える。企業に余裕があった好景気とは話がちがう。個人の能力を最大化するのに最短距離を選ぶ必要がある。

終身雇用制を前提とした企業と社員のつながりは、もはや幻想でしかない。一生のつきあいになるであろう社員に対し、自社に最適化する教育はもはや無用の長物。なぜなら、今後は「生涯一企業」のほうがめずらしくなるだろうから。

雇用の流動化がますます進むご時世においての社員教育というのは、日本式の数倍も「ドライ」で「効果にフォーカス」した北米型にならざるを得ないと考える。

北米型の社員と企業のつながりは、あくまで「スキル・能力の提供」と「個人が能力を最大限に発揮できる環境づくり」Give and Takeである。誰も勤め先に自分の人生をまるごと依存するようなことはしないし、企業のほうも依存させない。

そして「自分の足で立って下さいよ」というからには、副業も禁止しないし、残業も強制しない。パフォーマンスで合格点さえ取っていれば、企業はそれ以上個人の人生に踏み込んでこない。スキルアップのためのトレーニングの機会もたくさん与えられる。やるかやらないかは、本人の意思に因るところが大きい。

「能力と積極性+α」さえあれば、年齢も入社時期も関係ない。チャンスさえあればどんどん上にあがっていける。「+α」というのは、例えばアピール力。大した仕事をしていなくてもアピール力に長けている人間は、マネージメントから高評価を受けやすい。外資で働くならとにかく「言った者勝ち」の鉄則をお忘れなきよう。謙遜?Forget about it!

アピールもせずにたんたんと縁の下の力持ち的タスクをこなしていく私のような人間は、仕事の成果がまわりに伝わりにくい。よって私の半分の仕事量でもアピール力に長けている同僚に評価で負ける。

「見て見て~!私こんなにすごい仕事したのよ!」小っ恥ずかしくてこれが言えないばっかりに、何度悔しい思いをしてきたことか(笑)。北米は「罪の文化」であり、「恥の文化」ではないのだ。

「自己責任」は「個の(選択の)尊重」と表裏一体。裁量権を与えられるからこそ責任も負う。これからは、マネージメントだけでなく、フロントラインで働くぺーぺーも、ただただ従順な人間よりも、自分軸をもつ人間が評価されるようになる。

上の言うことには絶対服従、文句も言わず言われたことだけをひたすらこなす受け身精神が染みついている企業人は気をつけた方がいい。年功序列時代は、それこそが大切なスキルだった。しかし求められる人材は変わりつつある。

今後は、今まで以上にダイレクトに「あなたはわが社に何をもたらすことができますか」と問われることになる。

「なぜ他の候補者を差し置いてあなたを雇わないといけないのか」と問う面接官を説得するには、もといた場所(企業や業界や役職)だけで通用するようなスキルや常識を差し出すだけでは弱い。「真面目に」「従順に」「一生懸命に」働いてきたのは大前提。相手が聞きたいのは、あなたの積極性であり、過去にとったイニチアチブやリーダーシップ、そしてその結果何を達成したかである。

参考までに、以下北米社会における面接の典型的な質問をあげておく。どれも私自身が過去に受けた質問でもある。「従順性」を否定する気はないが、北米型リクルートではより「積極性」が評価されている現実がこれらの問いにもあらわれている。

o Why should we hire you over someone else?
o Why are you interested in working for our company/organization?
o Why should we hire you over someone else?
o What did you do in your last job that kept you organized?
o Describe the most creative thing you have done.
o What motivates you?
o What type of boss do you work best with?
o Do you prefer working with others or by yourself and why?
o What do you think it takes to be successful in this job?
o What is your greatest strength?
o What is your greatest weakness?

いつ会社から放り出され、再就職難という荒野をさまよう羽目になるかわからない。会社に忠誠を尽くすより、自分に忠誠を尽くす時代である。

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コメント2件

まだ年寄りではないつもりだけど、理解力が萎えているのか、せっかく良いことが書いてある記事だと思うのに理解できない。
アメリカで学んだ経験から、記事にある北米文化、北米の価値観はそのとおりだと思う。これまでの日本的な就業観、会社や仕事との関係には問題があることも同意。
しかし、
>日本の企業では、こんな当たり前のことがまだ実施されていないの?
これは、少し傲慢では?北米では当たり前かもしれないが、北米以外ではそれぞれの地域で歴史や文化や価値観があり、たとえ北米の価値観でそれらが古く悪く見えても、もう少し敬意を持って指摘しても良いのでは?北米の当たり前は無条件で正しいこと?
> いつ会社から放り出され、再就職難という荒野をさまよう羽目になるかわからない。
このような状況は道徳的に正しいこと?いい社会なの?日本は日本の未来に適した新しい就業観、会社や仕事との関係を独自に作っていくことが必要では?北米の価値観がそのまま良いとするのは短絡過ぎない?
日本は今のままではダメだ!という、日本への叱咤激励が記事の趣旨だと思うが、そのように素直に受け取れないほど自分の理解力が衰えたのを実感しました。
rosさん、コメントをありがとうございました。お返事を書きましたのでお時間のある時にでもご覧ください。https://note.mu/matsuzo/n/nf04e6b9fcac2
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