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「夫婦別姓」で誰かに迷惑かけますか?

塩谷舞さんのnoteを読んで、驚いた。何に?日本での「夫婦別姓」の現実の煩わしさに。

銀行で、ID提示の度に、各種カード使用時に、ビジネスシーンで、契約時、印鑑二種持ちなどなど、ただでさえあれやこれやある日常にこれほどの煩雑さを持ち込んでくるとは!たかが「夫婦別姓」に、一体全体なぜそこまで振り回されなければならないのか?

塩谷さんはじめ、このような状況下、夫婦別姓を選ばれた方には頭が下がる。根性があるというか辛抱強いというか… 自分にはきっと無理だろう。

国際結婚した私は旧姓を名乗っている。子供は主に旦那の姓、場合によっては私の姓(例えば日本のパスポート)、または両方の姓を使う。私の住んでいるカナダでは、父方母方両方の姓をハイフンでつないで自分の姓として使っている人も多い。

例えば私の姓が田中で、Mr.Smithと結婚し、太郎という子供が生まれたとする。その場合、子供は以下のどれを選ぶこともできる。

Taro Tanaka
Taro Smith
Taro Tanaka-Smith
Taro Smith-Tanaka

同僚でOllivier-Goochという姓(長すぎ!)を使っている人もいた。 私の周りの日本人で、パートナーの国籍に関わらず結婚時に旦那の姓に変えた人の割合は6-7割といったところか。

自分のアイコンである名前。その名前さえ好きなように選択できない日本の現実。複雑な社会を生きるために利便性にのっとった選択がいまだ許されないのはなぜだろう。

今回の参院選でも「選択的夫婦別姓」が争点となった。

夫婦同姓が求められる中で、女性が我慢を強いられる日本の様子は男女差別に値すると感じていた。実際に世界でも、夫婦別姓を選択できる国がほとんどだ。日本では、男性の姓に統一する家庭が96%というように、女性の姓に統一することは、過去の習慣やジェンダーステレオタイプからみてもハードルの高いことだと感じる。
夫婦別姓で共同親権を持つという、私にとっては当たり前の主張をなぜ日本は許してくれないんだろうか、と初めて痛みを感じ、恨めしく思った。

深沢真紀さんの上の記事では夫婦同姓自体が「日本の伝統」ではないのにもかかわらず、現在の日本では95%以上の女性が改姓しているという事実とともに、明治時代から現代に至るまでの「夫婦別姓」をめぐる歴史が紹介されている。

日本の保守派が夫婦同姓にこだわるのは、それが「日本の家族や戸籍制度の解体」につながると考えているからだ。
しかし戦後の「個人」を尊重する日本国憲法と新民法では、住民基本台帳(住民票をとりまとめたもの)があれば管理できるし、今では個人にマイナンバーまであるのに、戸籍制度と三本立ての運用は、煩雑なだけだろう。諸外国でも個人だけ管理する国が多く、家族で管理する制度の国は少ない。
そもそも夫婦別姓に反対する人たちは、「夫婦別姓なんて、リベラルやフェミニストや"反日"のやることだ」と思いがちである。

しかし一人っ子のために、実家の姓や墓を守りたいという女性など、さまざまな事情の人たちが夫婦同姓の強制に困っているのだ。自民党や保守派でも、旧姓使用する女性議員が多いし、夫婦別姓を支持する女性議員も少なくない。

「夫婦別姓」反対派のこだわりが「日本の家族や戸籍制度の解体」ならば、こう申し上げたい。

シングルペアレントに同性親、事実婚、生涯未婚率の増加、どれもこれも21世紀の「日本の家族」の形である。未婚の一人住まいでもペットが家族という人はたくさんいる。この「多様化」を「解体」と呼ぶのなら、日本の家族はとっくに「解体」しているのだろう。

そして悪名高き「戸籍制度」。これがあるばっかりに、なにかを申請する際にそろえる書類と手間が無駄に増える。

深沢さんも指摘されているように、マイナンバー+住民票で事は足りないのだろうか。家族の形がこれだけ多様化している現代、家族単位で国民を管理する利点があるのなら、勉強不足の私にどなたか教えていただきたい。

最後に「夫婦別姓」支持者は「反日」という声。「夫婦別姓」と「愛国心」とは何の関係もない。「夫婦別姓」は個人がその人らしく生きるための「選択肢」であり、それ以上でもそれ以下でもない。

だからこそ、何の躊躇も遠慮もなしに好きな姓を選べるような社会になってほしい。よく言われることだが、誰かが「夫婦別姓」を選ぶことで他の誰かの迷惑になるのだろうか?反対派にはPros and Consをよく考えてみてほしい。

働き方の多様化に伴い、会社名でなく個人名で仕事をするフリーランスも増えている。キャリアの分断を避けるためにも旧姓を使いたいと希望する人はこれからも増えるのではないだろうか。

長く親しまれてきた慣習を変えるのには抵抗がつきものだ。今の日本は、社会の変化のスピードと現実にあわせた「カイゼン」のスピードに大きなずれがある。そのずれこそが、「強制されて困っている人」を生み、塩谷舞さんをイライラさせ、石井リナさんに涙を流させる。

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