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ポジティブ・ディシプリン②エキスパートお墨付き「10の実践法」

ポジティブ・ディシプリン①で紹介した「Positive Discipline」の著者、 Jane Nelsen, Ed.D. (教育学博士)によると「ポジティブ・ディシプリン」(肯定的なしつけ)のゴールとは、

"to help children develop the belief that they are capable and give them the skills that help them do the right thing,"

「子供たちが自分の能力を信じる気持ちを育むように助け、正しい行いが出来るようなスキルを与えること」だそうだ。

彼女の言わんとしていることをより正確に理解するためにまず、「子供像」について書いておきたいことがある。

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国際色豊かなクラスで、一時期幼児教育を勉強をしていたことがある。クラスメイトは、カナダ生まれのカナダ育ちが数人、あとはインド人、中国人、メキシコ人、モンゴル人、フィリピン人、ペルー人、セルビア人、ドイツ人。幾つものクラスディスカッションを通して印象的だったのは、子供に対しての見方や捉え方が、東洋と西洋ではかなり違っていたことである。

アジア圏において子供は「無知で無力であり、大人の庇護下におかれる存在」として認識されていることが多い。それに対し北米・欧米では、子供は「体は小さくても能力・人格がある一人の人間であり、大人同様その意志と権利は最大限尊重されるべきである」と考える。

子供は「教え導かれる存在」であることは共通している。しかし「子供像」の違いから、期待される大人の役割は当然違う。前者では、子供の教育や暮らしを大人がコントロールする。基本的に、大人の言う通りにするのが「良い子」だとされる。

対して後者では、大人はあくまでも補助的存在だ。子供の持つ能力・志向・オリジナリティー等を伸ばすのが親や教育者の仕事であって、だからこそ、幼児の頃から子供の声を尊重する。

子供に対しての見方や彼らへのアプローチが、東洋社会と西洋社会ではそもそもこれだけ違うのを踏まえて、以下記事に紹介されている「ポジティブ・ディシプリン」の具体的な実践法をみていこう。

1. Treat the cause, not the symptoms.
問題行動ではなくその理由をケアする。


問題の根っこをケアすれば問題行動もなくなる。状況を俯瞰的に眺めることで、行動に隠された子供の思いをケアすることが大切。

2. Instead of saying, 'no,' redirect your child.
だめ!のかわりに子供をリダイレクトする。


出来ないことではなく、子供が出来ることに注目する。「ポジティブ・ディシプリン」の鍵は、罰することではなく、解決にフォーカスすること。

3. Come from a place of empathy and logic.
共感をのぞかせつつ、なぜその行動が良くないのかのきちんとした説明を。


何かをやらかした子供を感情的に責めるのではなく、「こうしたらこうなるからやってはだめ」と、因果関係を説明する。


4. Offer them productive ways to seek attention.
だだをこねることではなく、より建設的な方法で気を引く(認めてもらう)方法を教える。


子供の「できる!」を育むための「これ手伝ってもらえると嬉しいな」アプローチ。なにかに貢献した・やり遂げた体験は自己効力感アップにつながる。

5. Dole out "energy" consequences.
自分の問題行動に対し、代償を払わせる(責任をとらせる)。


例えば子供の問題行動に関し学校の先生から20分の電話があった場合。
「その20分でやろうと思っていたタスクが(あなたのせいで)できなかった。だからその仕事はあなたが片付けるべき」と、代わりに子供にやらせることにより自分の行動の責任をとらせる。




6. Set loving limits.
許容ラインをひく。


無益な言いあいを避けるために「許せるのはここまで」というラインを譲らない。許容ラインを越えたら議論の余地はないと示すことにより、親の言葉は絶対だということを子供は学習する。



7. Give them a voice.
子供に発言の機会を与える。



彼らの言い分を聞く機会を毎週設ける。家族全員の声をきくことで、皆が協力して解決策を考えることができる。


8. Remove shame around making mistakes.
失敗は恥ずかしくないと教える。


失敗を隠さず話すことで、失敗は学びのチャンスであることを教える。夕食時、家族皆がそれぞれの失敗とそこから何を学んだかをシェアすることで、子供は勇気づけられ、尊敬されたと感じる。


9. Prioritize quality time.
子供との意味ある時間を優先する。



親と一対一の時間を定期的に持つことで、子供は所属意識と自分の存在意義とを感じる。自信があり、愛されていると実感している幸せな子供は、問題行動とは無縁である。


10. Be the leader, not the controller.
コントローラーではなく、リーダーたれ。



「歯を磨きなさい」のかわりに「どうすればピカピカの歯になれるかな」という言い方をすると、子供は自分の存在が尊敬されたと感じ、親に協力的になる。親は「場をコントロールしなければ」という思いを捨てることで、より健康的で幸せな大人を育てるレールを敷くことになる。恐れを与えて従わせるのではなく、親が味方になることで、子供は自発的に良い行いをするようになる。



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