出発ロビーにみる人生

数年間空港で働いていたこともあり、空港という場所に愛着がある。理由がなくても時々ふらっと行きたくなる。

季節感あふれるディスプレイを眺めたり、飛行機をまじかに見ながら美味しい物を食べたり、行きかう人々を観察したり、聞こえてくる会話を盗み聞きしたり、涙の別れを目撃したり、一日中楽しみはつきない。

特に好きなのは出発ロビー。これから旅立つ人々の、少しばかりの不安と恐れ、しかしそれらを凌駕するわくわくで充満している空間。出発ロビーに身を置くと、必ず旅に出たくなる。明日の予定なんか全てほっぽって。わくわくの伝染力は強力だ。

その反面、悲しみや失意のなかでの出発や、後ろ髪をひかれつつ全てをここに捨てていくといった悲壮感漂う旅立ちというものもある。

日常と非日常が混在し、悲喜こもごもの感情が渦巻く。まるで人生そのものではないか。生き生きとした人間ドラマに満ち溢れている空間、だから私は空港が好きなのだと思う。

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