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「東京観光日誌」#18|上野|上野の森美術館

1月26日(水)曇りのち晴れ。今日は妻のリコと上野の森美術館へ行くことにしていた。「子どもなしで二人で美術館でも行きたいね」と言っていたことがここに来てやっと実現したわけだ。
上野の国立西洋美術館や東京都美術館にはよく訪れていたが、上野の森美術館へ行くのは初めてであり一度訪れてみたかった。展覧会も開催前から気になっていた深堀 隆介ふかほり りゅうすけ展「金魚鉢、地球鉢。」が行われていて、これは絶対観に行こうと決めていた。
ビジュアル的にもインパクトのある作品でもあるし、
「良い展覧会があるから久し振りに一緒に行こうか」と妻を誘ったのが今回のお出かけになったわけである。

ただし、チケットは予めローソンチケット(O-チケ)で取っておいたものの、二人のスケジュールがなかなか合わず結局最終日に近いこの日に行くことになってしまった。もしこの記事を読んでいただき“行きたい”と思っても、残念ながら生の作品を観る機会はあと残り数日となっているだろう。
申し訳ない。せめてこの記事を読んでもらい雰囲気だけでも感じてもらえれば嬉しい。

なお、今回もローソンチケットで購入。料金は以下の通りだ。
「当日券(一般):1,600円」+「システム利用料:110円」=合計:1,710円
二人で3,420円。
会場で直接当日券を購入する場合はシステム利用料はかからないと思うが、チケットを購入してあればすぐに入場できる。

10時ちょっと過ぎ。「上野」駅に到着。
去年6月頃のホテルの取材以来になるが、ここ公園口から出るのはそれ以上前のことで本当に久し振りだ。そしてその様変わりに驚いた。

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「駅の前を通っていた道がなくなっている!」とつい声が出てしまう。
公園とつながってすっきりした景観に変わっていた(写真上)。空はどんより曇りだが心は清々しい気持ちになった。
ちなみちょっと前はこんな感じであった。

さて、先を急ごう(写真下)。

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右手に国立西洋美術館の敷地前(写真上)。「世界遺産の価値を高める工事を行っています」と書いてあった。2016年に都内初の世界遺産に認定されて、今年の春頃まで館内施設整備を行うということで休館中になっている。リニューアルが待ち遠しい。
目的地はだいたいわかるが・・念のため案内図を見よう(写真下)。

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ここから左に折れて真っ直ぐ歩けばすぐ着きそうだ。
左側の建物が「東京文化会館」。確かクラシック音楽の会場だね。ここも一度も入ったことがない(写真下)。近いうちに入ってみようかな。

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「見つけた!」駅からここまで5分ぐらいだったかな(写真上)。壁面に大きな宣伝パネル(写真下)。でかい!

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ここが入口だ(写真上)。行列がなくて良かった。平日だし只今10時20分。今日もゆっくり観させていただこう。
入り口前には無料ロッカーがあるので荷物を入れて100円投入。(お風呂屋さんにあるロッカーのようだ。)

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中に入るとすぐ右横が展示場入口となっていた。リコがお手洗いに行っている間そこを撮影しておこうと思ったが、すでにここから撮影禁止であることを案内人から告げられる。う〜ん・・ちょっと厳しい感じ。
ただし、展示場内には撮影がOKのところもあるということだそうだ。

展示場内に入るとやや照明が落とされた中で、早速ますに入ったリアルサイズの金魚の作品「金魚酒」が均等に置かれ展示されていた。年代が現在に近いほど立体感が増していることが伺える。

「・・思った通りすごい」息を呑む。

これは案内文にもあったが2.5次元の表現方法なのだ。2次元は平面、3次元は立体、これはその中間地点にある。平面の描画を透明樹脂によって何枚も重ねることで立体感のある形を生み出していく・・と簡単に言ってしまえばそういうことになる。
言うは易く行うは難し、この表現に達するまでには試行錯誤の繰り返しだったに違いない。当然マニュアルがあるわけではない、経験と勘が頼りの職人の技術である。
後から耳にしたが、宣伝にある「金魚絵師」というのは本人が名乗ったわけではないようだ。しかしこれは言い得て妙、こういう大きな展覧会を企画し成功させるためには必要なコンテクストと言えるだろう。

次の部屋に入ると和紙に描かれた2D金魚の縦に長い大作が壁面に展示されていた。さすがに描写力が素晴らしい。2.5次元を形にするためにはこの描写力は欠かせない。
本展の展示は作者自ら行ったというふうに聞いている。見せていく順序にも自己表現であるはずだ。
最初の撮影スポットを発見。「緋照ひしょう」というアクリル絵画の作品だ(写真下)。

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これは「職人」という枠には留まらない表現の試みを感じる。ここを撮影OKにしているのは作家の気概だろうか。所狭しとキャンバスを泳ぐみやびな金魚が美しい。

大きなスペースを仕切ったもう一方のスペースへ行くと、そこには作家の主に初期のさまざまな作品が展示されていた。
壁面には和紙に描いた金魚のドローイングが数多く貼られ、それらは安価で販売していたようだ。吊るされたTシャツも原宿のお店で販売していて生活の糧としていたらしい。作家の生活感が漂う親近感のある展示空間となっていた。

次の撮影スポット。再び「金魚酒」が現れた(写真下)。注目されたこの作品からこの作家の道が定まった、ということなのだろう。

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『金魚酒「「鈴夏すずなつ」』(写真上)。『金魚酒「夢静ゆめしずか」』(写真上)。

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こういう手のひらサイズの作品、一つ欲しいな・・と思う。ぼーっと眺めていたい。
そう言えば・・うちにも金魚がいる。金魚を長く飼う上で一番大事なのが“水を清潔に保つこと”である、ということをハウツー本から学んだ。そのため、年代の違う金魚を二つの水槽に分け、毎週交互に新鮮な水に入れ替えて掃除をしている。
おかげで一方の金魚は、長女が保育園の時に金魚すくいで持ってきた以来だから・・12、3年生きている。確か6匹ぐらいいて今は1匹だけ。もうあまり餌も求めずおそらく何も見えていない。どこかにぶつけた背中の傷が痛々しい。すでに生きた化石になっている(写真下)。

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もう一方の水槽には次女のノノが、同じく金魚すくいで取って来て5、6年経っている。こちらも6匹ぐらいいたが、今は3匹になってしまった。そのうち1匹は普段腹を上に向けて水面をぷかぷか漂っている・・そんな状態が2年近く続いているのだが・・ちゃんと生きているのだ。餌の時間になると元に戻って猛ダッシュでアピールしてくる。

作家がアートの道を半ば諦めたときに出会った金魚の生命力、とても共感できるエピソードだと思った。

展示会場では始終風鈴のような音が流れていて耳に残る。

さて後半、金魚を軸に据えて2.5次元からそれ以外の表現方法などさまざまな試みの作品が展示されていた。作家の創造力が弾けているようだ。そこには升から別の環境へ移した金魚の姿をいろいろな形で観ることができる。こんなところに?というところにも自然にいたりする。
時には大きな水(樹脂)溜まりに群れをなして泳いでいたりする。
止まっている金魚なのだが、活き活きとしている。本当によく観察しているのだ。

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次のスペースに入ると・・ここは随分賑やかな雰囲気になっていた。
撮影スポットになっている『新作インスタレーション「僕の金魚園」』(写真上)。作者からのメッセージはこう書かれていた。

日本にはお祭りなどでよく目にする金魚すくいがあります。金魚すくいは海外にはなく、日本独自の文化とも言え、日本の夏の風物詩になっています。今回、僕は金魚すくいの屋台をモデルに新しい自分の金魚観に挑戦しました。この作品は、水面の上から金魚を見るだけではなく、水面を越えて自分が金魚と同じ空間にいるような、金魚を見る側から金魚に見られる側になる、そんな空間構成になっています。

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別方向からも一枚カシャ!(写真上)
撮影スポットはここを含め全部で3箇所だった。展覧会もどうやらここで最後のようだ。ここから降りて行くと最初に入った入口の場所につながっている(写真下)。

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出ると左に通路があり(写真上)、奥にはミュージアムショップがあった(写真下)。

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展覧会関係の品々があって見ていて楽しい。その時の私の気持ちの中には例の展示されていたTシャツがあって、あったら買いたいな~と思っていた。
しかし残念ながら見当たらなかった。もちろん類似品でOK。置いてあったら良かったのに・・と思う。
あのデザインのTシャツは展示場内に置かれたことで作品として昇華していた。ここにかつての商品が置かれていたら・・きっと高くつくだろう。いやいやもうすでに売り切れているだろうな。(後でネット探したら7万円の値が付いていた。)

この後リコとランチして帰る予定だ。
予めリコが好きそうな周辺のお店を選んで12時に予約を入れておいた。
今日は奮発して私のおごりである。

近くに「上野の森さくらテラス」に通じる階段があった(写真下)。ここは3階にあたるようだ。下へ降りて行こう。

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上野公園通りに面したこの建物の1階に「YEBISU BAR(ヱビスバー)」がある(写真上)。この辺りもすっかりお洒落になっていた。

「昔、ここに映画館があったよね」とリコに話すと・・
「私ここで「マトリックス」を観たの」と言う。
「独りで?」とは聞かないようにした。

入ってすぐに「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」(グラス:550円)で乾杯。つまみは「クリームチーズの山葵味噌和え&山葵クラッカー」(480円)を注文する。

「展覧会どうだった?」と私。
「すごく良かった。あなたは?」とリコ。
「そうだね・・あの作品は・・」
「あの作品は?」
「金魚を・・」
「金魚を?」
「深掘りしているね」
「・・・」

・・久し振りのデートである。調子が出るのはこれからだ。
この後、妻はランチメニューから「グリルチキンのジャンバラヤ」(1,000円)。私は「ハニーマスタードハンバーグ」(900円)を注文して2杯目のビール「ヱビス プレミアムブラック」(グラス:550円)をいただきほろ酔い気分で帰ることにした。

「来月もまた出かけようか」

上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
[開館時間]10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
[休館日]不定休
公式ページ:https://www.ueno-mori.org/

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