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「埼玉観光日誌」#1|春日部|首都圏外郭放水路

2021年12月4日(土)晴れ。外は少し肌寒いと思ったが、強い日差しを受けながら運転していると、冷房でも入れようか入れまいか迷うくらいになり、結局窓の開け閉めで車内温度の調節は間に合った。今日は出かけるには良い天気になるだろう。
ついこの間誕生日を迎えたばかりの次女ノノも買ってもらったコートとイヤマフラーで完全装備して車に乗り込んで来たが、10分もするとそれらは後部座席に追いやられていてお喋りに夢中になっていた。

・ 久し振りにノノと観光

「しかし、何でこんな休みの午前中に渋滞なんだ・・」とつい不満を口にしてしまう。久し振りのノノとのお出かけなので楽しく行きたいと思っているのだが、このノロノロ運転では目的地に遅れてしまいそうだ。
埼玉県春日部市にある「首都圏外郭放水路」の見学の予約時間は11時集合となっていて、遅れたら参加できません。もちろん返金もいたしません、と明記されていたので焦りを感じていた。だいぶ余裕を持って家から出てきたつもりだったが・・あとはもう・・開き直るしかない。

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「お父さん、私ね最近すごく興味のあることがあるの」とノノ。
ゲーム大好きのノノのことだ。おそらく“ゲーム”とは言わないだろうが、きっと私に喜ばれそうなことを言うに違いない。
「何に興味持っているの?」
「星」
「星?」
そう言えば、時々夜空の星を見て、あれは何々星座だとか話していたことがあった。そうか・・随分前だが一緒にプラネタリウムにも行ったことがあったな・・その影響かな、と思った。
「図書室から星の本をたくさん借りてきて読んでいるんだ」と嬉しそう。
「へえ~いいね」
「宇宙のことを考えると面白いんだよ。宇宙の果てはどうなっているのかとか」
「それは天文学だね。お父さんもそう言うこと考えるのは好きだよ。一説によると、宇宙は今も膨れ上がっているんだって」
「そうなの?」
「ビッグバンって言うんだよ。宇宙が爆発して今もそれが広がっているとか・・。何か天体望遠鏡で星とか見てみたいね」
「見たい」
「でもさ、星を勉強する上で大切なことがあるよ」
「え、何?」
「それはね。目を大切にすることだよ。天体望遠鏡で星を観察する時、見えないと困るでしょう」
「うん」
「だから、ゲームをやり過ぎたり、暗い中でスマホやタブレットを見たりしてはいけないよ」
「は~い」
・・といった微笑ましい親子の会話。
ちょっと説教くさいが、実際何も言わなければひたすらYouTubeでゲームの解説番組を観ているか、タブレットでゲームをやっていることが多いのでつい釘を刺してしまった。なかなか聞いてくれないけどね。

10時半から受付が始まっているので、もう始まっている頃だ。少し前よりは渋滞も緩和されていた。

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そして11時15分前に到着。
「良かった。ギリギリだったね」と喜び合い「庄和排水機場(龍Q館)」(写真下)と表示のある建物の前の駐車場に停めて中に入る。

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・「地下神殿コース」に参加

事前にカードで支払っておくこともできたが、今回は“当日現金払い”を選択していて左奥受付でチケットを購入した。大人子ども関係なく参加料はお一人様1,000円の「地下神殿コース」。1時間のツアーだ。
受付係の人のちょっと長い説明が始まり、ここから外に出て集合場所への案内を聞く。最後にお手洗いに行くことを強く勧められたような気がした。地下神殿にはお手洗いがないということだ、聞こうと思っていたのでちょうど良かった。

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ノノとともに建物の真向かいにあるお手洗い(写真上)で用を済ませ。いざ集合場所へ向かう。中央の白い小屋のようなところで見学者は集まることになっていた(写真下)。ちなみに左側はサッカー場である。子どもたちが試合をしていた。

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時間になるとガイドがやって来てツアーの注意事項などを説明し始めた(写真下)。あれ? 先ほどの受付窓口の人だ。

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もう何十回何百回も同じことを話しているのだろう。速いテンポで説明される内容に無駄がない。一つ覚えておかなくてはいけないのは、ここから下へ降りる時の階段では“撮影は禁止”ということだ。ガイドはもう一人いて2名でツアーにあたっていた。

ということで撮影はしなかったが、なるほど階段の足の踏み場は決して広いわけではないし角度も急である。撮影などしていたら踏み外すことも十分あり得るだろう(きっとあったに違いない)。そんな階段だから気を付けなくてはならない。
「うわ~すご~い」と前を降りて行くノノが声を上げた。
その先には、私にとって見てはいけない光景があるようだ。リアルな高さとコントラストのある空間が目の端でわかった。何とかやり過ごして5分ぐらいで下に到着。
そこは・・神殿と呼ばれる空間が広がっていた(写真下)。

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到着してすぐにガイドの説明が再び始まった。

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・ 「首都圏外郭放水路」を学ぶ

116段の階段を降り、現在地下22mのところにいる、ということだ。温度は14度。湿度48%と正確な数字が並べられていく。ここは「調圧水槽」と言うところで、長さが177m、高さ18m、幅78m、トンネルから流れてきた水の勢いを弱め、スムーズにこの近くの江戸川へ流すための巨大なプールとしての役割を持っている場所なのだ。そのスケール、そびえ立つ柱の様子から“防災地下神殿”として、国内外で広く認知されているとのことであった。
そう、このビジュアルを体験したかった。
施設に水を取り込むのは年平均7回程度ということで、最も多い時(平成27年(2017年)9月の台風17号、18号)には約1,900万㎡の排水を記録しているということだ。ガイドさんからのわかりやすい説明によれば、学校の25mのプールの水が1秒で無くなるスピードで、それを約4日間かけて排水したということである。・・途方もない水量があったという訳だ。

近年雨量が増して水害が多発するようになった。この辺りは元々水害の多い地域であったらしいが、この施設ができることで水害も減少したらしい。また守備範囲が広範囲に渡っているようで、江戸川、中川・綾瀬川の治水対策として沿川区市町に貢献している。東京方面では足立区や葛飾区も含まれる。
ガイドの説明の始めにスマホアプリのインストールを勧められた(写真下:リーフレットより)。よろしければどうぞ。

QRコード

国土交通省の江戸川河川事務所の「首都圏外郭放水路ARアプリ」をインストールし「ARで体験する」を選ぶと・・

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目の前に水が流れ込んで・・あっという間に水の中・・ぶくぶく・・。
「貸して貸して」と私のスマホを横取りするノノ。こういうのが大好きなのだ。つい私もノノに貸したスマホの目の前で泳ぐ真似をしてしまう。

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いただいたリーフレットの「首都圏外郭放水路のメカニズム」の絵図(写真上)を見ると、右側の「調圧水槽」には5つある立抗たてこうのうち「第1立抗」(写真下)がすぐそばにある。

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周囲には縄が張ってあって中を覗き込むことはできないが、説明では「第1立抗」は深さ約70m、直径が約30mもあり、“スペースシャトル”や“自由の女神像”がすっぽり入ってしまうほどの大きさだと言う。
大雨により各河川の水位が高くなると、自然に施設への流入が開始され、第2立抗~第5立抗へ水を地下へ取り込んでいく。その水はトンネルを通して第1立抗へ送られ、さらに調圧水槽に貯められて、江戸川へ排水されるという仕組みになっている。
前述の通り、調圧水槽に水を取り込むのは年平均7回程度あるようで、水だけではない土砂も含まれているため、排水後は地面に多くの土砂が溜まってしまうという。そのためその除去作業に何とブルトーザを施設に入れて掃除を行うという説明もあった。どこからブルトーザを入れるかというと・・上の天井を指差した(写真下)。
「すき間が見えますでしょう。あちらから降ろすのです」とガイドさん。

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一通り施設の説明を伺い、残り時間は自由見学となった。歩き回れる範囲は限られているが、ツアーの参加者は思い思い記念写真を撮り始めていた。

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では、私たちも記念写真を一枚、カシャ!(写真下)

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こう見ると・・何か背が高くなっているな・・小学校5年生で160cmはあるって言っていたような。

「気軽に参加できる! 地下神殿コース」はこれにて終了。
他にはマニア向けにこういったコースも用意されている。
①「【新コース】見どころ満載!インペラ探検コース」遂に開放された調圧水槽最奥部にある巨大なインペラ(羽根車)を特別装備でご見学。(所要時間:約110分。参加料金:4,000円)
②「迫力満点! 立坑体験コース」深さ70メートルの立坑内の階段を途中まで降りていく。(所要時間:約110分。参加料金:3,000円)
③「深部を探る! ポンプ堪能コース」首都圏外郭放水路の心臓部であるポンプをメインに構成したコース。(所要時間:約100分。参加料金:2,500円)
詳細はこちら・・

さて帰り道。116段の階段(写真下)を今度は昇って行かなくてはならない。家族ごとにひと塊になって間をあけて出発。来た時と同様「撮影は禁止」と念を押される。ここで解散だ。

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無事地上に上がって深呼吸。ひと仕事を終えた気持ちだ。空が青くて気持ちいい。こう見ると「調圧水槽」の上がサッカーグラウンドになっていたんだな(写真上)。看板には「首都圏外郭放水路多目的広場」と書かれていた。

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ああ、やっぱり。ここに説明があった(写真上)。

「いろいろ体験したいんだ」と車の中で話していたノノ。またどこかへ見学しに行こうね。

首都圏外郭放水路
住所:埼玉県春日部市上金崎720
電話:048-747-0281(見学会受付)
[開館時間]9:30~16:30
公式ページ:https://gaikaku.jp/

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