お母さんは学校の応援団長_トップ画_201908

【 第3回 】新任の先生は「一年生」

最近は「五月病」ならぬ「六月病」という言葉があるそうです。学校にも、たくさんの新任の先生が配属されて、がんばっていらっしゃることと思いますが、中には少々お疲れ気味の先生もおられるようです。今回は、そんな新任の先生方への保護者の想いについてお話したいと思います。

◆学校は不思議な組織

学校って不思議な組織だな、と感じることの一つに、「新任の先生が担任を持つ」ということがあります。
 一般企業であれば、新入社員に、いきなり「仕事を任せる」ことは考えられません。ある程度の研修期間を得て、重要度の低い仕事から段階的に任せていくのが常識です。
 それが学校では、いきなり「クラス担任」を任せます。いくら優秀な新任の先生であろうと、たいへんな重責をいきなり振られては、相当ご苦労されるのでは・・・というのは容易に想像がつきます。
昔からそういう仕組みになっているのは、それ相応の事情があるのでしょうが、配属については、もっと柔軟に対応できるといいのではないかと思います。

◆新任の担任は「ハズレくじ」?

新学期が始まって、「担任の先生が新任」とわかると、多くの保護者は少なからずショックを受けます。
 どうしてか?それは、不安材料がたくさんあるからです。
  クラスをしっかりまとめてくれるだろうか?
  子どものことをしっかり見てくれるだろうか?
  授業をちゃんとわかるようにやってくれるだろうか?

 言うまでもなく、これらの不安は「経験のなさ」からくる不安です。
 「誰でも初めは一年生」と言われるように、最初は何もわからなくて当たり前、勉強して経験して成長していくものだ、ということは、保護者だってわかっています。
 しかし、我が子にとっては、一生に一度しかない「その一年」なのです。何かトラブルがあったらどうしよう・・・と保護者はとても気がかりです。頭では「先生の成長を見守らなければ」と思っていても、本心では「今年はハズレくじをひいてしまった」と思ってしまいます。
 そんな保護者の気持ちは、子どもたちの心にも影響を与えてしまいます。子どもたちは、毎年どんな先生が担任になるのか楽しみにしていますが、「新任の先生」となると、子どもたちなりに不安を持ちます。そこへ追い打ちをかけるように、お母さんが「え~新任の先生なの?はぁ~」とため息をつけば、子どもはさらに不安に感じてしまうでしょう。保護者も不安、子どもも不安、さらには当の新任の先生も不安。不安のスパイラルです。

◆学校全体でバックアップ

この不安のスパイラルから抜け出すには、やはり他の先生方のフォローが不可欠です。
 新任の先生には、指導員がついて、さまざまな指導がされています。また、新任の先生は「初任者研修」で出張する機会も多いので、指導員や他の先生が代わりにクラスに入ることもあります。
 このように、一見バックアップ体制は整っているように見えます。でも、保護者が望んでいるのは、もっと積極的なフォロー体制です。

 保護者も、新任の先生に経験がないことは十分に承知しています。ですから、何か問い合わせたいことがあったときに、すぐに回答が得られなくても仕方がないと理解しています。自分だけでなんとかしようとせず、先輩の先生方に頼ればいいと思います。他の先生方の力を借りながら、一段ずつ階段を上っていけたらいいですね。
 新任の先生に頼られた先輩の先生は、もちろん丁寧に教えてあげることと思います。それが保護者からの問合せだったなら、そこでもう一歩踏み込んで、新任の先生と一緒に(あるいは代わりに)、保護者への説明に関わってあげられるといいのではないでしょうか。問い合わせの事案によっては、新任の先生からの説明ではいまいち信頼感に欠けることもありますが、ベテランの先生から直接説明を受ければ、保護者は十分に納得する場合もあります。また、新任の先生から説明を受ける場合でも、ベテランの先生が同席することで、保護者が学校の対応に大きな信頼を持つことができます。

 まずは、学校が「新任の先生のことは、学校全体でバックアップします」という姿勢を示していただくことが大切ではないかと思います。学校の姿勢が保護者へ伝われば、「新任の先生はいろんな先生がバックアップしてくれるから、『ハズレくじ』ではなく『当たりくじ』だったね」となるかもしれませんね。


◆「学級づくり」が心配です

いきなり「担任」を持つ、ということは「学級づくり」をしなければならない、ということです。
 これは、大学を卒業したばかりで、社会経験のない新任の先生にとっては、とても難関だと思います。おまけに、この「学級づくり」については、大学でもほとんど学んでいないのではないでしょうか。
 「学級づくり」は、先生の仕事の中でも大きなウエイトを占めていると思います。
保護者の一番の不安材料は「クラスをしっかりまとめていけるだろうか」というところにあります。「クラスが荒れる」のは、子どもにとってもつらいことですし、保護者もとても心配です。ですから、「学級づくり」に関しては、より積極的に、より具体的に、他の先生方や学校全体で支援をしていただけるといいなと思います。
 新任の先生にとっては、それまで経験のないことですから、どうしたらいいのかわからないことだらけだと思います。面倒かもしれませんが、ベテランの先生方が、どのようにクラスをまとめているのかを、「具体的な方法」で一つ一つ示してあげられると、新任の先生も取り組みやすくなるのではないでしょうか。
 最近、いわゆる「発達障害」と言われる子どもたちがクラスに何人もいる、という話をよく聞きます。おそらく、新任の先生は、そのような子どもにかかりきりになってしまうのではないでしょうか。しかし、それでは、クラスの大部分の子どもたちが置き去りになってしまいます。新任の先生には対応が難しい状況かどうかを、他のベテランの先生方が早急に判断して、積極的に手を差し伸べてあげていただきたいです。

たくさん勉強をして、難関を突破して、せっかく「憧れの職業」についた新任の先生方が、絶望して職を辞されることが、少しでも減るといいなと思っています。新任の先生は「一年生」なのですから、学校全体で、また保護者も一緒になって、見守り支えながら育てていく環境を作っていけるといいですね。

(2013年6月10日)

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「愛される学校づくり研究会」HP内の教育コラム「お母さんは学校の応援団長」リード文

★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。

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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。

保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。


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