フォレスタネット_連載用画像

第6回 「地域・家庭」と連携・協働しよう

●「社会に開かれた教育課程」の実現

2020年度から施行される新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程の実現」がうたわれています。
これまでは学校のものだった「教育課程」を社会に開きましょう、というスローガンに戸惑っている学校関係者のボヤキが、あちこちから聞こえてきます(笑)。
ことさら「社会に開きましょう」と強調するには、それなりの理由があります。
それは、この先の未来はどんな社会になるのかが見通せない「予測困難な社会」になる、と考えられているからです。
また、教員の多忙が社会問題化しているように、学校の置かれている状況が変化してきています。
そこでこれまで以上に、地域や家庭と連携・協働して教育を行っていこう、という思いが強く反映されているのです。

「社会に開きましょう」というコンセプトは、私はとても良いことだと思っています。
子どもの成長を見てきて思うのは、子どもを育てたのは私たち親だけではない、ということです。家族だけでなく、学校の先生方や友達もそうですし、地域のおじさんやおばさんも、子どもの育ちを支えてくれました。
ですから、これまでもそうであったように、これからも「社会で」子どもを育てていこう、という考えには共感できます。
ただ残念ながら、昨今の時代の変化で、どこでもそういう教育が行われているわけではない、という事実があるからこそ、わざわざ学習指導要領に書かれることになったのでしょう。

価値観が多様化しています。
保護者はもちろん、地域の人もさまざまな考え方を持っています。昔のように、教員を尊敬し、学校を大切に思ってくれる人ばかりではありません。
そんな中で「社会に開かれた教育課程」を実現していくのは、けっこう大変なことなのではないだろうかと気掛かりです。
まるで関心のない保護者や地域の人たちに興味を持ってもらい、さらには当事者意識を持ってもらわなければなりません。
そして一方で、学校自体(教員自体)も「社会に開こう」という意識にならなければなりません。実は、ここもかなり厄介なところです。
外から見ると、学校はとても閉鎖的です。その印象を変えない限り、外部の人の意識を変えるのは難しいだろうと思っています。

「社会に開かれた教育課程」とセットで語られる用語に「カリキュラム・マネジメント」があります。
簡単に言うと、「『社会に開かれた教育課程』を実現するために、どのような教育課程を編成するのがいいのか、よく考えてね。それが『カリキュラム・マネジメント』だよ」ということですね。
「カリキュラム・マネジメント」と聞くと、若い先生方は「管理職とか、上の先生たちの仕事だから、自分には関係ないよね」と思われるかもしれませんね。
たしかに学校ごとの教育課程の編成は管理職や教務主任が行いますので、編成作業に携わることはないでしょう。
ですが、編成された教育課程を実践していくのは、新人もベテランも同じことです。
その教育課程にどのような思いが込められているのか、子どものどのような成長を目指しているのか、少しでも関心を持って考えていただけるといいですね。

●これまでの「地域の人と協働する」に視点をプラス

「地域の人と協働することが求められるようになる」といっても、若手の先生方にとってはピンとこないかもしれませんね。それこそ管理職の仕事でしょう、と思われるでしょう。
でもよく考えてみてください。
小学校であれば、校区探検や社会見学、昔遊びや地域で農作業をすることがあり、いろいろな形で地域の人と協働していますね。中学校でも、職場体験などのキャリア教育で地域の人と関わります。そうした機会を上手に活かしてほしいなと思っています。
多くは「前年踏襲」の活動になっていて、担当者同士も「これまでと同じような感じでお願いします」程度の打ち合わせになってはいないでしょうか。
とくに若手の先生方が担当することになったとき、前任者との引継ぎの際には「どうしてその活動をするようになったのか」「その活動で子どもにつけたい力は何か」「地域の人の思いは何か」といった活動の背景の部分を丁寧に見直してみてはいかがでしょうか。
学校の中でそのような活動の意義を整理したら、次は関わってくださる地域の人ともその意義を共有できるといいのではないかと思うのです。
地域の人との打ち合わせのときに、「学校はこのように考えていますが、地域の皆さんの思いはどうですか」と問いかけてみると、実は地域には活動の意義が伝わっていなかったり、地域の思いは別のところにあったり、といった新しい気づきが生まれるかもしれません。
「地域の人と協働する」というと、何か新しいことを始めることになって、またやらなきゃいけないことが増える…ということではないと思うのです。
今やっていることに、少し視点をプラスして、うまく活用してもらえるといいなと思います。

●仲間として思いを共有する

保護者や地域の人にとって、学校には見えない壁があって、足を運ぶには勇気がいる場所です。
それでもまだ保護者であれば授業参観や懇談会などで学校へ行く機会がありますが、地域の人にはそうした機会はほぼありません。
そんな中で学校に関わってくださる地域の人は、「子どもたちのために力になりたい」という思いを持ってくださる優しい方々です。そういう方々を大切にできる学校であってほしいなと思っています。

前項でも書いたように、地域との協働のために何か新しいことをやってほしい、とか、特別な配慮をしてほしい、と言うのではありません。誰にでもすぐにできることをしてもらえるといいなと思っています。それは「あいさつ」です。
不審者対策で、今はどこの学校もずっと門が閉ざされています。
地域の人たちは、ドキドキしながら学校へ足を運ぶのです。そんなときに校内で出会った先生に「こんにちは」「ありがとうございます」などとにこやかに声をかけてもらえれば、それだけで「来てよかった」とホッとできます。
頭から「自分には関係のない人だ」と思っていると誰に会っても関心がわきませんが、「自分たちの仲間なんだ」と思えば何度か顔を合わせるうちに会話も生まれます。
あいさつを交わして関係づくりをし、会話ができるようになったら、ときには「学校の思い」や「地域の思い」を語り合えるようになるといいですね。
若いから、ベテランだから、管理職だから…そんな役割に縛られずに、みんなが「自分にできること」をしてくだされば、きっと学校は変わります。
立場を超えて思いを共有することが、「協働する」ための大切な一歩ではないかと思います。

子どもたちは、将来地域を支える役割を担う大人になります。そしてそれは、若手の先生方にも言えることです。若い先生方が、これからの教育を作っていくのです。皆さんにその気概を持っていただきたいです。
都市部と地方では、地域の形も大きく違います。
学校は、地域の思いにも耳を傾けて、地域の実態に合わせた教育を、保護者も含めた地域の大人と協働して進めていけるといいですね。
先生・子ども・保護者・地域の人・・・たくさんの笑顔が見られる学校であることを願って、私はこれからも「学校の応援団長」でいようと思っています。

(2018年10月)

**********

教育コラム「お母さんが見ている学校の風景」に込めた思い

子どもの教育に携わっているのは教師だけではありません。保護者も当事者として教育に関心を寄せています。先生方の中には、保護者対応を負担に感じている人も多いようですね。「教師と保護者は子育ての仲間」と考えているお母さんが見ている学校の風景を通じて、大人の在り方や協働を一緒に考えてみましょう。

ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、ついでにブログにもお立ち寄りくださいませ(^o^)→https://mattaribetty.hatenablog.com/