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#007: プロダクトマネジャーの最初の仕事は「変数」の操作

#004「プロトタイプ設計時に要件を決めるための4つのW」で、プロトタイプを作るための質問について取り上げましたが、実際のプロダクト開発ではこういった質問に対して、ものすごい数の要望と回答が来ることは珍しくありません。そういった「お願い」の海に溺れそうになった時に、プロダクトマネージャーがしなければならない作業というのは、「変数」の操作となります。

ステップ1: 処理すべき変数を決める

検討のはじめに自分たちが欲しいプロダクトをイメージする時、非常にシンプルなものを思い浮かべることが多いと思います。例えば....

・今の作業時間を1/3にできるロボットを作ろう
・誰でも簡単に使える会話システムを作ろう

こんな感じです。

ところが実際にそれを設計しようと検討を始めると、考えなければならないことがあっという間に膨れ上がるでしょう。

・売れる商品にするためには、こんな機能も必要だ! (プロジェクトの内部の議論)
・既存のXXXとの互換性も持って欲しい(外部からの意見)
・我が社の製品の標準耐用年数はYY年です(機能以外に満たすべき要件:非機能要件)


こういった要望を全て反映しようとすると、検討期間もどんどん長くなってしまいますし、コストもコントロールできないものとなってしまいます。
そういった事態を避けるために、プロダクトマネジャーが考えなければならないのは「何を検討対象として、何を考えないか」を決めることです。ものづくり(Engineering)の観点からは、処理すべき変数を絞り込むということになります。例えば....

・最初のモデルでは、バッテリーがどのくらい持つかは検討しない
・試作段階では、耐久性は考慮しない
・機能は"3つ"までにする

のような形で、「検討しないこと」を「最初に」決めるのはプロダクトマネジャーの仕事のうちで最も重要なことの一つです(実際にはこの段階で玉虫色の結論となることが非常に多く、その結果としてプロジェクトがうまくいかなくなるのですが・・・)

ステップ2: 変数ごとの目標を設定する 

ステップ1で、検討する変数を決めることができたら、次にその変数、あるいは要素ごとに目標値を設定します。この目標値は3つのカテゴリーに分けることができます。

1. 理想の値があったて、プラスマイナスで許容可能な幅を設定する
2. 「必ず達成しなければならない値」があって、それより上/下であればよい
3. Yes/Noとか、ある/なしのように、複数ある選択肢の中から一つを選ぶ

目標を設定するというのは一つの決定をするということなので、プロジェクトマネジャーは上の1~3をごちゃ混ぜにして、明確な目標を設定しないでおく・・・という誘惑にかられることもあります。また、ある/なしを決めないといけないのに、「可能ならあり」とか「なしでもよい」みたいな保留事項をつけて逃げ道を残しておきたいという感じる場合もあるでしょう。

そういった曖昧な設定は、結局のところ設計あるいは実装の段階での議論が必要になるので、プロジェクトマネジャーはそういった曖昧さを排除するということを心がけなければならないのです。

検討を進めるにあたって必要なたった1つの要素

上記の①・②は究極的には「考えなければならない範囲を限定する」==「考えなければならないことを切り落とす」ということにほかなりません。全員がこの決定を支持してくれればいいものの、そういう理想的な環境になることはごく稀で、必ず誰かが不満を持った、あるいは少なくとも希望が通らなかったという気持ちになってしまいます。

ですので、プロダクトマネジャーは、そういう自体になることを少なくとも事前に予測をしておくことがとても重要になります。言い換えれば、プロダクトマネジャーは、全員を満足させることは出来ないという割り切りと勇気を持つことが求められるのです。

心配をしなくとも、プロジェクトが上手く動き出せば、最初に感じてた不満は自然と消えていくものです。逆に最初に全員が満足したとしても、プロジェクトの先行きが不安定になると、不満は増していくばかり。
衝突は早めに起こした方が影響範囲も小さく解決が容易なのです。

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