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エモい

最近クーラーをつけていない。

湿り気がなくなった風は気持ちが良い。

秋だなあ。

先日、とある収録をしていた時のこと。

女優さんへ、喋り方の雰囲気を変えたいというディレクションをしていた。

「もう少しエモい感じで話してもらえたら良いですね」

「?エモい?」

「はい。エモいってご存知ないですか?」

「知らないです。何ですかそれ?」

「そうですね。例えば(女優)さんが、昔から好きな曲がああったとしますよね。」

「はい。」

「そんな曲がたまたまテレビで流れてきたりしたら、それはエモいんですよ。」

「へー、そうなんだ。…でもよく分からないわ。」

「あれ。」

「その事と、私が話す感じがエモいってどういう事なのかしら?」

「あー、そうですね。」

「例えば…昔住んでた街に、その事は忘れててたまたま降りた時に、『あ!ここ前に住んでたわー。』これ、エモいですよ。」

「どういう事??」

「あら。」

説明すると難しい事に気づいた。

便利で良く使ってしまっていたが、演出する際に使うには言葉の範疇が広すぎるのだ。

うーん、と悩んでいたところ、近くにいたADさんが助け舟を出してくれた。

「(女優)さん、菅田将暉はエモいですよ」

助け舟かと思いきや迷宮に入り出してしまった。

「え!そうなの?」

「はい。中村倫也もエモいし、坂口健太郎もエモいっすよ!」

「ますます分からない…。」

それエモいっていうかイケメンなだけでは…?

「それとラーメンもエモいっすね!」

「マジか!」

思わず声が出てしまった。ラーメンの感じで話されてしまったらどうなるのか気にはなるが、軌道修正しなければ。

「えっとですね…エモい、はエモーショナルから来てるんです。感情を揺さぶるような、人に思いを起こさせるような雰囲気で、一人一人に話しかけるように話してもらえますか?」

脳内で必死に言語化しながら、最初からこう話せば良かったと思った。

「あー!なるほどね!わかったわ!」

そして女優さんは無事にエモかった。

「はい、オッケーです!」

「私いまエモかった?」

「エモかったです。」

「イェーイ」

「エモかった?って聞いてくる『女優』さんもエモかったですよ」

「え?どういう事??」

その日の収録は事あるごとにエモいが飛び交った。

エモい旅はまだまだ続く。

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