祭谷 一斗

人生迷子のドラ息子/最近は主に創作/あと飛火野耀研究/今は伊藤計劃研究に復帰中/etc…

祭谷 一斗

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    基本的に資料収集と読解です。地味。もっとも、中には世界中でここにしかない情報も……。

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    主に90年代~ゼロ年代前半のライトノベルを振り返ります。

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    作品そのものを丁寧に読み解きます。基本的に引用シーンも指定してありますので、お手元のソフトと併せてどうぞ。

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『虐殺器官』エピローグの「大嘘」とは何か?

『虐殺器官』のエピローグには「大嘘」が存在している。  この事実は一時期まで有名だった。  2007年。刊行直後に読者(稲葉振一郎氏)が疑義を呈し、それに対し作者(伊藤計劃氏)が婉曲に答えた。そんな事件もあり、よく知られていたのだ。  しかしながら、肝心の「大嘘」とは何だったのか。具体的にとなると、意外に分かりにくい。  随所に痕跡らしきものはある。だがそのヒントは作中に散りばめられており、生半可なことでは掴めない。そう思っていた……つい昨日までは。  本日とある手法を試し

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    • 【『飛火野耀読本』より】飛火野耀スレッドには何が書かれていたか?

       「飛火野耀=真行寺のぞみ説」検証のきっかけが匿名掲示板だった、とは 既に書いた 通り。  この点であの掲示板は、筆者にとって恩義あるサイトではある。  けれども一方で、数々のガセが書かれていたのも確かだ。  惜別の意も込めて、ここでは雑多な情報も残しておこう。  以下、引用はすべて当時の2chライトノベル版、『「飛火野アキラ(字がでねえ)」消息求む』による。 ※くどいようだが、このくだりはあくまで「書かれていたガセ」である。  そしてひとつ、明らかに関係者のものらしき描

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      • 【『飛火野耀読本(仮)』収録コラムより】飛火野耀 『もうひとつの夏へ(上)』初版の回収事情と異同点

           ・  数年前までは、2ch(当時)の飛火野耀スレッドがある程度の解答を提示していました。最近ではスレッドの過去ログに触れることすら困難なため、以下、個人的な調査を行った上で記しておきます。 記事の内容 ・文庫カバーでの回収版か修正版かの見分け方。 ※版数は同一。 ・回収版と修正版の違い。 ・初公開の比較画像3枚。    ・  初版かつ未修正版(以下、回収版)かどうかは、いくつかの目安で識別できる。  文庫のカバーを見て、以下に当てはまれば回収版という事になる。

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        • 『ハーモニー』最終読解に必要なポイント1つ。/伊藤計劃読解

           またつらつらと考えてまして、霧慧トァンの意志(なぜ『ハーモニー』を記したか?)を確定させるに際し、以下の一点が必要と考えるに至ったため、ひとまず記しておきます。  まず、「大調和後の霧慧トァンは意志を持っている(自身は大調和の影響を受けておらず、また回避手段も持っていた)」のは既に書きました。  その上で、 ・大調和後の生府社会で、御冷ミァハはどう語られているか?  が情報として必要だなと。  これは仮定を2つ置けば明瞭です。 1・ミァハが語り継がれる存在であった場

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          三麻で魂天達成した感想。

           去年の大晦日までの話ではありますが、あるいは魂天目指してる人の参考になるかも……と思い、ざっくり書き残しておきます。基本的に地道な話で、雀聖到達から1年半ほどかかりました。  雀聖到達まで(玉の間)  三麻独特のオリを覚えればあまり苦戦することはないと思います。三麻のオリってのはつまり「一枚切れ字牌は結構危険」「筋もまあまあ当たる」「中盤以降は基本ダマ警戒」辺りですね。四麻の感覚で粘ったらだいたい放銃してました。  クソ速い先制リーチが飛んで来ても安いとは限らず、だいぶ

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          【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」/伊藤計劃『ハーモニー』読解

           年末の進捗報告です(挨拶)。色々やってるんで自分でもこんがらがる可能性があり、まあ後に続く研究者もいるかも、て感じで書き残します。  本題。「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」ですね。ここ数ヶ月ほど引っかかってまして、この問いが本当の最終問題なのかなーという気はしています。  まずそもそも、『ハーモニー』本文では、たびたび重要な事実が隠されています。たとえば、一部の旅路。霧慧トァンが父と別れた後、最終目的のチェチェンに向かう。その過程で実は日本に寄っている。

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          【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたの…

          都市伝説が証されるとき~作家・飛火野耀と真行寺のぞみ~

           伝説的な作家・飛火野耀と、謎の女子高生作家・真行寺のぞみ。  今でこそ二人は同一人物と見なされていますし、説に異議を唱える人はほとんど居ません。  では、その「飛火野耀=真行寺のぞみ」説はどのようにして広まったのか?  そもそも「飛火野耀=真行寺のぞみ」は本当に事実なのか?  事実ならどんな根拠が存在しているのか?  最初期からの経緯を踏まえつつ、事実確認し広めた側の目線からここ20年を振り返ってみようと思います。    ・まずは風説あり(2002年頃?)  最初に情

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          【小ネタ】『虐殺器官』と『CURE』『戦争広告代理店』

          当時から有名な話として、『虐殺器官』は黒沢清監督の『CURE』から発想を得ている話があります。別に目を引く話ではなく、作者当人が述べていたことです。 『CURE』のもう一方の主役、殺意の伝道師・間宮。彼の行動対象が民族単位だったら、と。 そして『戦争広告代理店』。今でこそPR会社の話は珍しくない、けれども刊行当時は衝撃的でした。紛争の風向きでさえ、情報戦が支配しかねないのだと。 「虐殺」の影の、黒幕の暗躍。これまた、『虐殺器官』の元ネタのひとつです。 では、『CURE』と

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          【雑記】伊藤計劃、カズオ・イシグロ、小島秀夫/『ハーモニー』と『わたしを離さないで』

           おそらく影響関係がある(『ハーモニー』の執筆難航中に『わたしを離さないで』を読んでいた)ことまでは把握していましたが、いま読み返すと、 「この小説で使われたテクニックについて話し合った」とのことで、もう少し意味合いが変わってきますね。『わたしを離さないで』でのテクニックについて両者ある程度把握していて、なおかつ話し合っていたと。  加えて、  との言及もあり、『日の名残り』で使われていたテクニックとの差異についても注目したほうが良さそうです。   (ひとまず、了)

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          クラヴィスと悪夢――「死者の国」再訪/伊藤計劃『虐殺器官』読解

           死者の国とは悪夢であり、中盤以降のクラヴィスには心休まる存在でない ――そんな記事を以前書いた。  本稿はその続編にして増補版であり、全編を通してのクラヴィスと「死者」の関係を取り上げるものだ。    ・ 『虐殺器官』を通読して分かるのは、死者の国はあくまで全体の一エピソードということだ。そもそも「死者の国」とは、作品中盤までにのみ現れる言い回し」なのだから。  注意深く読めば、「死者の国」は最初から夢と示されている。  中盤、ウィリアムズの指摘後なら、この示唆は明

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          【雑文】ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』感想/伊藤計劃読解

          ・原作を知らない立場から率直に書いてるので、思い入れある人はたぶん回避推奨。 ・なぜこう書くのかというと、遠からず「知らない状態」ではなくなる予定なので、印象が変わる可能性もあるからですね。 ・んでは、何回目か読んでみての感想です。    ・ ・純粋な事実として、作家の作品としてこのノベライズが語られることは(『虐殺器官』『ハーモニー』の二作品と比較したならば)少ない。 ・なぜか。第一に考えられるのは、固有名詞の問題である。 ・『MGS4』時点での総集編的ノベライ

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          ETMLが持つ「真の意味」とは何か。 『ハーモニー』読解/伊藤計劃研究

          基本に立ち返った話をしよう。すなわち、 「なぜ『ハーモニー』でETMLは表示されているのか?」 刊行から今年で15年。あまりに当たり前過ぎて、これまで見過ごされて来た観点だ。    ・ ETMLは現実のHTMLに想を得ている。 ある意味、当たり前の話ではある。本文冒頭のETMLからして、HTMLに加筆される形で表現されているのだから。 〈!DOCTYPE 「〜」〉は〈「〜」形式で書くとの宣言〉であり、これは現実のHTMLでも使われている形式だ。 ETMLはHTM

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          飛火野耀 生誕70周年に寄せて

           以前の記事 からの引用も交えてです。  私事でしばらく原稿を仕上げるまとまった時間がとれそうにないため、ひとまず「存命なら70歳」と書き残しておこうと思います。  数年前にあるいは、と思ったときは空振りでして、消息は変わらず不明。何とかご身内やお知り合いと連絡がつかないものでしょうかね……。

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          『ハーモニー』における「語り」の重奏構造/伊藤計劃研究

          要旨:『ハーモニー』本編は複雑に時間軸が絡み合っている。本稿では、記述の時間軸について簡易的に扱う。    ・ 『ハーモニー』本編の構造は、整理すれば以下となる。  明示的な過去描写――たとえば〈recollection〉タグ内の記述――もあるが、それだけではない。  本編の記述は必ずしもリアルタイムではないため、各々の描写には微妙な齟齬が存在している。  分類のヒントは作中にある。それも、かなり堂々と。序盤、全世界同時自殺事件が起きた後の、霧慧トアンの捜査シーンがそ

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          『ハーモニー』における「語り」の重奏構造/伊藤計劃研究

          ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』研究のための手引き /伊藤計劃読解

           オリジナル長編『虐殺器官』『ハーモニー:』と比較し、ノベライズ長編『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』(以下、N版『MGS』表記)の研究は現状ほぼ成されていない。時期上は『虐殺器官』と『ハーモニー』の合間に位置し、一時中断していた『ハーモニー』の完成にも寄与した可能性が高いのだが。  残念ながら、N版『MGS』の謎は『ハーモニー』の謎よりなお知られていない。私事でしばらく忙しくなる事情もあり、以下、読解としての基礎事項を示しておく。興味ある方は自力で挑んでみて

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          ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオ…

          「御冷ミァハの子供姿」の真相究明 『ハーモニー』読解/伊藤計劃研究

          『ハーモニー』には複数の裏プロットが存在しており、その内ひとつが「霧慧トァンが事件を振り返るうち真相に気づき、カリスマと思っていた御冷ミァハの実態に直面する」である。本稿は「ミステリアスと思えた描写が実は違う意味を持つ」事例を扱い、『ハーモニー』を捉え直す一助とする。    ・    ・  ごく素直に読んだ場合、御冷ミァハはどんなキャラクターか。気まぐれでミステリアスな、カリスマあるイデオローグ、そんな具合だろう。  これは当初の霧慧トァンが抱いていた印象でもある。『ハ

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          「御冷ミァハの子供姿」の真相究明 『ハーモニー』読解/…