『文藝春秋』に殺される日~近藤誠氏と守秘義務~(後編)

 (  前編から続く ……)

※本稿は全文無料公開の投げ銭方式です。投げ銭の金額は「近藤誠氏のセカンドオピニオン代金1分」に準じました。

 断りなき場合、引用先はすべて『文藝春秋』2015年11月号です。
 短い記事(全8p)ですので、読むとしても立ち読みのみをお薦めします。

   p192

―― では、近藤先生はどんな治療法を勧められたのですか。
近藤 川島さんは、「切除手術も抗がん剤治療も受けたくない」とおっしゃる一方で、「とにかく初発病巣だけは何とかしたい」との思いを持っておられるようだったので、僕は切除手術に比較して体への侵襲度がはるかに低い「ラジオ波焼灼術」を提案しました。

※p191の「切るなり焼くなり」と矛盾。一方で直後に「~との思いを持っておられるようだったので」と推測しており、このくだりは発言を正確に伝えていない可能性が高い。

近藤 彼女には、「万が一、転移が潜んでいたとしても(中略)焼灼術なら、転移巣が大きくなってしまう可能性も低いでしょう」と申し上げたんです。

※p191の「予後のきわめて悪い」と矛盾。都合良く可能性をねじ曲げることで、自己の治療方針へ強引に誘導していることが伺える。また、自己の歪曲を棚に上げつつ「結局は提案が却下された」と主張することで、「言う通りにすれば長生きできたはず」と無理矢理自己正当化してもいる。

近藤 ラジオ波を提案したところ、川島さんもかなり乗り気の様子で、「今の主治医に相談してみます」とおっしゃっていました。

※川島さんがセカンドオピニオンに行ってしまったのはこの一度きりであり、これ以降の近藤誠氏はいつもの「推測」であることに注意。この局面にしても、額面通り受け取ることはむずかしい。


   p193

近藤 患者が切除手術ではなくラジオ波焼灼でやりたいと言っても、外科医が「胆管がんは胆管に沿って広がりやすいから、ラジオ波ではがんを取り逃がしてしまう可能性がある」とか何とか言って脅しにかかる。

※「脅しにかかる」と批判しつつ、p192で転移の可能性を「万が一」と誤魔化したことには無自覚。かつ、自己の方針が採用されなかったのを外科医の「脅し」のせいと責任転嫁。

近藤 川島さんが切除手術を受けなければ、余命がさらに延びた可能性は高く、あれほど痩せることもなかったと、僕は思います。(中略)その意味では、抗がん剤を拒否した、彼女の選択は賢明なものでした。

※中村勘三郎氏の時と同様、いつもの後出しジャンケン。亡くなった方限定なので(倫理をさておけば)何とでも言えるため、実際は全く意味のない発言。


   p194

近藤 その(筆者註:食事療法で痩せ方に拍車をかけてしまった)可能性は大いにあります。実は、緩和ケア病棟に来るがん患者の8割くらいは栄養失調であり、その主たる原因は食事療法にあるとの事実が存在します。

わざわざ緩和ケアを引き合いに出す意味がない上、勘違いをさらけ出している箇所。「緩和ケア病棟に来る患者さんの8割前後が食欲不振」との論文こそある が、もちろん食欲不振と栄養失調はちがう。一度でも緩和ケア病棟に足を運んでいたならあり得ないレベルのミスであり、『文藝春秋』誌自体の医療校正レベルも示唆している。

近藤 川島さんが僕のセカンドオピニオンにいらした時には、当然のことながらあんなにヤセてはいませんでした。ただ、その時の身長と体重からBMI(肥満度)を割り出してみると16,8しかなかった。

※再びの暴露。具体的な数字を挙げる必然性はどこに?

   p195

近藤 明るく振る舞われていた川島さんの、人知れず追い詰められていた心情を考えると、批判がましいことを口にする気にはなれません。彼女はむしろ被害者です。

※は?

近藤 今井(筆者註:故・今井雅之氏)さんの場合は、あれほどゲッソリとやつれていたのに、まだ抗がん剤を打ち続けていたようですね。ご本人の性格もありますが、医師の責任も極めて重い。どこかの時点で抗がん剤を止めていれば、少なくとももっと楽に、より良く生きられたはずです。(中略)黒木(筆者註:故・黒木奈々氏)さんは治療を再開しすぐに亡くなっているわけだから、抗がん剤による毒性死以外の何物でもないでしょう。

※ここでも憶測。無自覚に憶測から憶測を重ねている。ただし川島さんの時と違い、「ためらいもあります」(p188)との前置きすら一切無い。また、9月19日に亡くなられた黒木奈々氏の記述が入っていることから、この暴露記事は「川島さんが亡くなる直前から死去直後にかけて立てられた便乗企画」と推測できる。

近藤 僕にセカンドオピニオンを求めていた時、川島さんは終始、冷静で理知的で、三十分の相談時間もきちんと守ってくださいました。

※あたかもセカンドオピニオンが常に長引くかのようだが、誤り。近藤誠氏のセカンドオピニオンの本質は「放置しろ」一点であり、中には 10分も経たず終わらされた患者さんも存在 している

近藤 今はただ、彼女の人生の貴重な一瞬に立ち会った医師として、心静かにご冥福を申し上げるばかりです。

※………………。   (了)

 付記(11日9時追記)

 次号の『週刊文春』はよりにもよって「近藤誠特集」とのこと。
 以下、書店への宣伝FAXを引用する。

ここが売れるポイント!
・次号『週刊文春』にて川島なお美さんのがんをテーマにした近藤誠特集が掲載!
・女優・川島なお美さん、タレント・北斗晶さんなど、相次ぐ芸能人のがん治療により近藤理論が再注目!!
・がん治療が話題になっている今こそ再展開で売り上げが見込めます!!
https://twitter.com/choconyachasan/status/652696808452329473

 無論、『文藝春秋』11月の時同様、解説記事を執筆する予定だ。
 該当記事をお読みの際は、今回同様に立ち読みか図書館を推奨しておく。

 付記(12日7時追記)

 近藤誠氏の“研究所”では、個人情報保護方針を明記しておられる。
 以下、その該当箇所を引用する。

 個人情報について

1)個人情報の収集と利用 当研究所が収集する個人情報は業務上必要なものに限り、その利用は、収集目的から逸脱しない範囲とします。

2)個人情報の管理と保護 個人情報の管理は厳重に行います。第三者に対して、本人を特定できる可能性のあるデータを開示・提供することはしません。また個人情報への不正アクセス、紛失、破壊、改ざん及び、漏洩を防ぐための適切な対策を行います。

3)準拠法等 当研究所は、保有する個人情報に関して適用される法令、規範を遵守いたします。

4)個人情報保護管理体制および仕組みの継続的改善 当研究所では、個人情報保護に関する管理の体制と仕組みについて、継続的改善に努めます。
   2013年4月近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン

 この方針が守られているかどうかは、お読みの方のご判断にお任せしたい。

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