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ファシリテーションとわたし

「何をしている人ですか?」

ここ数年、いちばん聞かれる質問だ。昔は「リクルートです」というと「あぁそうなんですね」とあっさり終わっていた。パワーワードだった。具体的に何しているか言わず、勝手に想像してくれていた。今は「まちとしごと総合研究所」なので、二言目にはこの質問が出るのだろう。

さて、今の仕事をはじめて6年目。働き始めて12年目なので、約半分のキャリアだ。そして、今の仕事は何か?と聞かれたら「ファシリテーターです」と改めて答えようと思った出来事があった。

一般的にファシリテーターとは、「組織や集団による問題解決や合意形成、学習促進などのコミュニケーション活動において、協働的・創造的な議論や話し合いの過程(プロセス)を設計・運営する人」のことをいう。つまりは、チームでみんながいい雰囲気で発言ができたり活動を進められるよう、気の利く調整役の人のようなものだ。


先日、知り合いの大学の先生から「ファシリテーション」を教えてほしいと相談があった。近年、大学や高校などの教育機関からこの相談が増えている。教え方が変わってきているのだ。一方的な講義だけでなく、学生が能動的に学ぶことができるような授業「アクティブラーニング」が推奨されている。まさに今、目の前で行なっている授業もこれに当たる。そんな経験を踏まえ、先生たち約30名との講座が開催された。「学生により良い授業を届けたい」と想いを持った先生が、土曜のお昼に集い講座を受けてくれた。ファシリテーションとは何か、そのスキルや在り方とは何かを経験を交えながら共有した。そして、講座の中で質問が出た。


この質問で、改めて僕が普段大切にしていることを知った。「ファシリテーターが大事にしてほしいこと」としてこんなことを伝えた。

□ 参加者の自立性・モチベーションを高める
□ 答えはファシリテーターが持っていない 答えは参加者の中にある
□ 枝葉を切り落としては、幹は育たず
□ 常に全体を見据える 参加できてない人はいないか?
□ 聞く・聴く・訊く 本質を探り、共有するために
□ つまりは、みんなで考える、みんなで決める

そして1人の先生から、質問が出た。
「ファシリテーターは答えを持っておらず、答えは参加者にあるというのはわかるが、先生は答えを持っていると思っている。そんなときにどうしたらいいと思いますか?」

たしかに、先生は何かを教える人なので「答えを持っている」のが正しいはず。これは大きなネックだと思った。ただ、質問を聞いて考えずに言葉が出てきた。

「そもそも僕自身、先生とは学びや経験が人よりあるだけであって、答えを持っているものではないと思っています。なので、役割として今までの学びや経験をまずは共有し、その上で見えてきた「問い」を学生たちに投げかけ、一緒に考えたらいいと思うんです」と。このとき、先生が持っているものは「答え」ではなく「答えのはず」だと思ったのだ。


振り返れば、先生として呼ばれたときはいつも「進行役」なんだと訂正し、あくまで自身の話は経験として共有し、その後に参加者の経験や想ったことを引き出しながら、参加者の中の答えを見つけている。そして、参加者が議論し見出して行動が生まれ、新たな関係が構築されるとき、嬉しいと心から思う。

この質問をもらったとき、自分が好きなことを思い出した。ひとりじゃできないことをみんなでやってみること。誰かだけでやるのでなく、そこに集った人たちでやること。そして、それを促せるのが「ファシリテーター」なんだと。だから改めて、今はこれが自身にピッタリだと思ったのだった。

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