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#小説
小説?|ブルーハワイ・フロート
前置き
文学的な問題は一切孕んでいません。
本編
午後一時半の中心業務地区は酷暑と言っても差支えがないほどに大気が煮えていて、アスファルトの照り返しが私の脚をストッキング越しに刺す。何故こうも高層ビルばかり空を埋め尽くすように建っているのか――それは地価が高い以上そうせざるを得ないのだ、そんなことわかってるのに――ただ、これではまるでコンクリートの雑木林と形容せざるを得ない。植林地でもいい。
人生草露の如し(番外編) 『告白』 / 【小説】
美也子さんと出会って10年になる。
俺はそれまで勤めていた販売の仕事を辞めて、あるメーカーの営業職についた。
洋服の販売の仕事は楽しかった。自分にとても合っていると思っていた。昔から洋服やファッションに興味があって、幼少の頃からお洒落に気を遣うことが、日常の中でごく普通のこととして育った。それは紛れもなく、母の影響だった。
母はとても美しい人だった。俺がようやく物心ついた頃、朝目覚めて隣で寝
人生草露の如し vol.3 / 【小説】
仕事は滞りなく定時に終わって、待ち合わせの店へと向かった。
仕事帰りに男性と待ち合わせて食事をするなんてとても久しぶりだ。美也子は弾む心を落ち着かせるために、何度も深呼吸しては手持ちの小さな手鏡を覗いた。
よし、メイクは完璧だ。さっき会社を出る前に念入りに直した。パウダーをつけすぎると乾いてシワがくっきりと目立つので、なるべく自然に仕上がるように、丁寧にパフを叩く。そして一日経って疲れが目立つ
人生草露の如し vol.2 / 【小説】
企画会議は思った以上にスムーズに進んだ。来シーズンの主軸となる美也子の提案する新製品は、従来の人気商品をバージョンアップさせたデザインだった。対象となるユーザーの年代がいわゆるマダム層なので、キーワードは「 着て楽、取り扱いが楽、見た目がスッキリ 」という三つに絞り込んだ。本来ならもう少しデザインに凝って、繊細でモード感のあるマテリアルを使いたいところだが、いかんせん「売れる物作り」を意識すると結
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