人生で初めてブスとデートした日
令和3年3月14日のホワイトデーに僕はよく知らない女性とデートした。
数週間前に彼女と別れたのでマッチングアプリを人生で初めてインストールした。同期と酔っ払っいながら始めたから適当にマッチングした人とデートの約束を取り付けていたことさえ殆ど覚えていなかった。
気晴らしだと思い、花粉症で重くなった目と足を動かしてデートに向かった。
待ち合わせ場所にて待っていると写真の人物とは別人が現れた。僕の守備範囲は相当広い方で友達からは「イチロー」と呼ばれているほどだがその僕でさえエラーするほどのブスだった。加工で自らの醜さを誤魔化そうという魂胆も醜いこと極まりない。
紳士な僕はブスであろうと帰ったりはしない。人は外見じゃない、中身で見るべきだ。相手に失礼があってはいけない。食事に向かった。
僕が必死に話をふると女は得意げに話し始めた。一つも面白くない。僕の感覚がおかしくなったのかと錯覚を起こす程面白くない。
食事もそこそこに会計を呼ぶと女は「お手洗いに行きます」と言って席を立った。コイツは金を出す気は無いようだ。人生で初めてブスに飯を奢った。
後輩や女の友達にご飯を奢ったことは何度もあるがいつも「ありがとう。ご馳走様」と言ってくれる。その一言があれば奢るのなんてお安いご用意だ。
しかしコイツは何も言わずに当然であるかのように店を出た。僕はその時思い出した「初回のデート費用:全て男性が出す」という項目を。
ブスは「カラオケ行きた〜い」と言ってきた。正直行きたくない。ここでも僕は「初回のデート費用:全て男性が出す」これが引っかかって頭から離れない。
到底僕とは釣り合わないブスに飯を奢りブスの歌を聴き金を払う。
僕は自身の軽率な行いを恥じた。これは僕自身の成長に繋がるかもしれない。適当に生きてきたツケが回ってきたんだ。そう思い「カラオケ行きましょう☺️」と返事をした。
女は歌い続ける。僕は聴き続ける。なんだこれ。意味がわからない。僕の順番が回ってこない。誰か教えてくれ。助けて欲しい。
1時間半の地獄が終わった。本当の地獄は屍泥処でもおう熱処でもない。あそこだ。永遠に感じるほどの時間だった。
隣のブス鬼はほざく「10%オフのクーポン使っといた!」3000円の10%オフのクーポンを使われてドヤ顔されても殴りたくなるだけだ。ほんま殺したろかな。
僕は帰路についた。一言も話さず最後に「今日はありがとうございました。では。」とだけ言葉を放ち別れた。僕は最後まで紳士だった。
時間と金を無駄にした。何も残らない。教訓も何も得られない。我此処に記す。ブスとデートはするな。己が信念の旗のもとに。
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