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週刊めいろま Vol.147 保育士の給料はなぜ安い?/ 経済学の前提/合理的な買い手/英米の保育士も給料は安い/なぜ保育業の収入は増やすのが難しいか?/保育士の報酬を増やすにはどうしたら良いか?/保育の本当のコストとは何か?

Vol 147

目次
保育士の給料はなぜ安い?

今週は読者の方の質問への回答特集です。保育士の給料はなぜ安いのか?経済学的な視点から考えてみましょう。

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1. 保育士の給料はなぜ安い?

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@tsukemen1986 様からの質問:

質問です 報酬が需要と供給で決まるのであれば保育士はどうなのでしょうか? 保育士・保育所の不足により多くの待機児童がいるようですが 保育士の給料は安いとのことです この問題に関しては特殊な事例なのでしょうか? 逆に実際は待機児童はそんなに多くないとかですか?

回答:

●経済学の前提

まず保育士の給与がなぜ安いかを考えるにあたって、自由市場において物の値段が決まる基本的な仕組みを整理します。

自由市場(free market)ににおいて、一つの商品の値段というのは一つです。値段を決めるのは、「需要」(demand) と「供給」(supply)のバランスです。自由市場には売り手と買い手がいますが、例えば買い手がその商品をもっておらず、売り手から入手したいと思った際に、妥当だと思う値段を支払います。これを「市場均衡」(market equilibrium)と呼びます。

また、自由市場においては、「買う」という行為は、「価値の交換」で、現代においては、物々交換だと不便なので、「価値」を「貨幣」で表して交換することになっています。

その商品があまり出回っていない場合や、買いたい人が多い場合は、値段は上がります。売り手が値段を上げても、どうしても欲しいという買い手がいるからです。反対に、その商品が沢山でまわっており、欲しいという買い手があまりいない場合は値段が下がります。値段を下げなければ売れない、つまり「価値の交換」が発生しないからです。

自由市場では商品の値段は随時変化します。その理由は、「市場均衡」我変化するからです。その商品が高い場合、売り手は売れば儲かるということがわかるので、次第に商品を売る数を増やします。

するとその商品が入手しやすくなるので、値段が下がっていきます。

さらに、買い手が商品を高いと考える場合は、似たようなスペックでより安い商品を選ぶようになるので、競争するために元の商品の値段が下がります。

その商品が売れるということを知った他の業者が売り始めると、商品の数が増えるので、値段が下がります。値段があまりにも下がってしまうと、元の売り手は商売をやめてしまうことがあります。これを「市場への参入」(entry to the market)「市場からの退出」(exit from the market)と呼びます。

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