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チョコレート嚢胞になった

"チョコレート嚢胞"という病気を初めて知ったのは、ちょうど18年前。宇多田ヒカルさんが19歳で罹患し、卵巣を摘出したというニュースを見たときだ。

そういう病気があることは知っていたが、今年の8月に自分が緊急搬送されるそのときまで、自分に関わることだとは思っていなかった。なぜなら、私は30歳になってから5年間、毎年欠かさず子宮がん検診を受けていたし、生理も順調だったから。しかし、その考えがとてつもなく甘かったことを身をもって知った。

発覚した経緯

私がこの病気に罹患していることを知った経緯は劇的だった。

とあるパーティの帰り道に、自転車を運転していたところ、突然今までにない激しい腹痛を感じた。距離にして自宅まで1分以内。あまりに激痛に自転車から落ちるかと思った21時頃。

なんとかして自宅にたどり着き、同行していた夫に鍵を開けてもらい、自転車を任せ、玄関に倒れ込んだ。それから1時間半、途中何度か嘔吐(痛み止めも吐いた)しながら耐え続けても一向に回復しなかったため、救急搬送を依頼した。

その時も、まさか婦人科の病気だとは夢にも思わなかった。パーティでそこそこたくさん飲み食いし、嘔吐もしていたし、生理とも全く関係ないタイミング(排卵日から3〜4日くらいの日)だったからだ。

痛みの経過

これは個人差があると思われるが、メモしておく。

30分おきに10段階評価で 

9 → 10 → 10 → 9 → 7(搬送後) → 7 → 7 → 7 → 7 → 6(帰宅時)

見てわかるとおり、最初からほぼMaxの痛みが来た。9〜10の状態では冷や汗が止まらず、立っていることは愚か、座ることさえままならず、床に這いつくばってひたすら悶えることしかできない。1時間半その状態で耐えたのは中々の苦行だった。

子宮がん検診では見つからない卵巣の異変

ここで言う「子宮がん検診」とは、会社の健康診断の際にオプションで受けられる「子宮頸がん検診」のことだ。だいたい、問診・膣鏡による視診・細胞診によって行われる。ここで、卵巣に関する検査は行われない。

健康診断で受けられる婦人科のオプションは乳がん・子宮頸がんである。男女共通の消化器系がんの次に死亡率が高いのが乳がん・子宮頸がんなのだから、このチョイスは正しい。https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

しかし、チョコレート嚢胞を始めとする子宮内膜症関連の疾患は、いわば"女性の生き方"に関わる疾患だ。甘く見ていると、妊娠の希望があろうがなかろうが、女性のQOLを著しく下げてしまう恐ろしい疾患である。https://medical.jiji.com/topics/737

世の女性は痛みに慣れすぎている

この病気になってから何人かの同年代(30歳以上)の女性と病気について話したが、皆一様に「生理痛が重い」という自覚症状があり、そのことに対応する方法が痛み止めを飲んで耐えることしかないと考えていた。かくいう私もそうだった。

ただ、私自身何もしてこなかったわけではない。20代前半の頃には婦人科を受診し、生理痛が重いと何度か訴えてきた。しかし、婦人科では「特に異常がなし」と言われ、ロキソニンを処方されるだけだった。何度かそういったことを繰り返すうちに、この痛みは耐えるべき痛みなのだと刷り込まれてしまったように思う。

生理痛は我慢すべきもの。みんな我慢しているのだから。

常にエラーメッセージが出ていると、本当に不具合が出たときに見逃してしまうシステムと同じで、毎月痛いのが普通になると、正常な痛みと異常な痛みの区別はつかなくなる 。

子宮内膜症(チョコレート嚢胞含む)の詳細な症状

下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛などの疼痛、不妊。稀に消化器・泌尿器・呼吸器症状などが起こる。

個人的には前述したとおりの痛みの症状がある日突然来た。本当に突然来るし、当日と翌日くらいまではかなり痛い。今までMax激痛は2回来たが、どちらも来たのは排卵後3〜4日だった(偶然かもしれない)。

また、子宮内膜症については腸と隣接している位置関係から、癒着して人工肛門になることもある。https://medical.jiji.com/topics/1076

何しろ知らなかった

病気になってから思い返すと、ここまでの痛みになるまでに、前兆らしきものはあったように思う。疲れやすさ、痛み止めを使っても耐えられない生理痛、排便痛などだ。ただ、これらはあったりなかったりするので、いつから起こったかはもうわからない。

ここまでの事態に至ったのは、知らなかった、ということに尽きる。これらの痛みが、重大な病気のサインだと知っていればもっと警戒したかもしれない。

女性の生き方について

不妊という症状だけでも十分に大きなことだが、子どもがいらない人には特に問題ではないかもしれない。しかし、人工肛門となったらどうだろうか。毎月訪れる激痛に怯えなくて良いとしたら、もう少し人生を楽しめるのではないか。

生きるためのがん検診はもちろん必要だ。それに加えて、子宮内膜や卵巣に関する検査と病気の予防が本当に重要だと思う。

検査と予防

この病気になっていろいろ調べた結果、2つ後悔したことがある。1つは経膣超音波検査を定期的に受けるべきだった、ということ。もう1つは若い内にピルを飲んでおくべきだったということだ。

経膣超音波検査では、ここで述べた子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣の疾患を網羅できる。早期に発見できれば、苦痛を味わう前に対応できる。http://www.marunouchi.or.jp/health/examination/keichitsu/

ピルとは避妊や月経困難症を和らげるためのものだと思っていたが、チョコレート嚢胞の治療の一つとしても選択されるように、排卵によるダメージから卵巣を守ることができる。https://doors.nikkei.com/atcl/column/19/020400041/030500004/

将来の妊娠に備えてコンディションを整えるという意味でも、子宮内膜症・卵巣疾患を予防して苦痛を避けるという意味でも、若い内はピルを飲んでおいた方がよい。ついでに生理痛を軽減することもできるし、予期せぬ妊娠も防ぐことができる。もし自分に娘ができたら、結婚するまで飲ませると思う。

最後に

現代の女性は妊娠回数が少なく、晩婚で月経の回数が多い傾向になっている。子宮内膜症による激しい生理痛は、放置しておいても決して良くなることはなく、悪くなる一方である。毎月冷や汗が止まらないくらい痛みがある人は、一度経膣超音波検査を受けてほしい。そしてそれを年に一度は継続してほしい。

女性は、私のような床を這いつくばる経験をする前に、月経の回数を重ねるごとに疾患リスクが高くなっていくということを認識してもらいたい。

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