偉人が自らの人生を振り返って語る――。そんなフィクション小説はあるが、映画では珍しい。しかも、ドキュメンタリー映画というのが、面白い。ゴッホ役が人生を回顧する、そのセリフはもちろんフィクションだが、ゴッホが雲の上から、自身のドキュメンタリー映画を作る人たちを観ながら、当時を思い出すという構造になっている。

ゴッホの穏やかな語り口が、その劇場の人生を際立たせることに成功している。全くと言っていいほど思い通りにいかない人生のなかで、絵を描いて、描いて、描き続けた。そして、自分を支えてくれた弟テオへの思い。有名な「耳切り事件」にも触れながら、なぜ、自ら命を絶ったのか、ゴッホ自身が振り返ることで、その人生を追体験できる。

生前評価されなかった偉人は多い。その代表的な人物がゴッホだろう。自分が心血注いだ作品が後世にこれほど支持されていることを、せめて天国から観て知っていてほしい、と僕らは思う。そんな夢の体現ともいえるドキュメンタリー映画である。

ゴッホについても、またメルマガで紹介したい。

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