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噂の心霊スポット

「深夜、心霊スポットに行ってきたよ!」

学食の2階のテラスで、私とコセに話かけてきたのは、学科違いだけど同じサークルに所属する女の子だった。
私は、怖い話には目がない。
コセはちょっと苦手そうだったが、夏休み直前。
このような話題には恰好な時期である。
なので、その一言に飛びついた。



彼女は夜中に同級生の男友達2人と共に、近場にある心霊スポットに夜な夜な乗り込んだという。
そこは、かなり有名な心霊スポットで、行けば必ずなにかしらの災いが起きるともっぱらの噂の場所。
更には、あの霊能力者、宜保愛子が潜入を断念したほどに最恐の場所だという逸話もあった。

「よくそんな恐ろしいところに行ったね。怖かった?大丈夫だった?」
「いや、そんなに〜。なにも起こらなかったよ。ほら今も元気でしょ?」

興味津々に質問すると彼女は楽しそうに語った。
しかし噂にあるような怪異は全く起こらなかったとのことで、肝試しの経緯を淡々と話した。

「またそういう話あったら、教えてよね!では!」
「じゃあ、またね!」

案外、平気なもんなんだなぁ。
あの宜保愛子の逸話もデマかもしれないなぁ。
と思いながら私はコセと共に午後からの授業に備えた。

その話からちょうど7日が経った。
コセが、鬼気迫る勢いで教室に駆け込んでくると私に話かけた。

「今さっき、目の前で人が車に跳ねられてさ!しかもそれが、あの子だったんだよ!大丈夫かなぁ…!!!」

通学中に交差点で信号待ちをしていたときの出来事だったという。
私たちに心霊スポットの話をしてくれたあの子が交通事故にあってしまった。
2人で彼女の安否を心配した。
と同時に「祟り」の二文字が頭をよぎった。

翌日、包帯をぐるぐると左腕に巻いた彼女がいつもどおり学食にいた。
左腕を骨折したとのことだった。
コセと共に挨拶がてら確認するも命には別状がなさそうだったのが何より。
本人も笑顔で「心霊スポットの呪いかな?」と、もうネタにもしている。
ケロリとしている彼女にふたりはホッと胸を撫で下ろした。
それにしても本当に、偶然であってほしいと願って止まない。
このまま他に何も起きなければいいのだが…。

彼女の事故からちょうど7日後。
件の男子学生の1人が、スケボー中に転倒して、同じく左腕を骨折した。

それからまたちょうど7日後。
やはり、もうひとりの男子学生も階段で転倒して、同じく左腕を骨折したという。

その意味深な偶然の連鎖に周囲が騒然とした。
気づけば、心霊スポットを訪れた3人全員が、行った日から数えてちょうど一週間ごとに1人づつ順番に同じ左腕を骨折していた。
「行けば必ずなにかしらの災いが起きる」
その心霊スポットにまつわる噂が現実のものとなっていた。

マジもんじゃーねーか…。

身近な知り合いの恐怖体験を目の当たりにしてしまった私とコセは底知れぬ恐怖を覚えた。
なにがあろうともその心霊スポットには絶対近づかないと誓った。
例え遊び半分でなくとも。
触らぬ神に祟りなし。





文・挿絵:ETSU

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