不思議の国のヤバいおじさん(ミョーチキリン日記 #126)

大学から帰宅。
すっかり日も暮れていた。

ドアに鍵を差し込み回すが、いつもと感覚が違っていた。
鍵をかけ忘れていたみたいだ。

ほんとにおっちょこちょいだな自分は!
とテヘーっとした気分でドアを開けた。

すると玄関には見慣れない大きなサンダルが一足あった。
一瞬、部屋を間違えたかな?とも思ったが、見渡す限りでは確かに自分の部屋だった。

いや、待てよ…。
奥の方でなにか得体の知れない気配がする。
顔をあげて居間の方に一直線に目線を向けると、電気のついてない部屋にぼやーっと人影が動くのが見えた。

その人影がぬら~っとこっちに向かってくるので、慌てて台所の電灯をつける。
アパートの一階の奥に住むヤバいおじさんだった。


「人の部屋に勝手に入って何してるんですか…?」
「あぁ、エツくんおかえり。いやあね、ねずみを追っててね」
「はぁ…」
「うるさいでしょ?ねずみ」
「いや、ねずみなんて見たことないし。っていうか勝手に人の部屋入るなんて何考えてるんですか?今すぐ出てってください」

あまりにも予想だにしない突然過ぎる出来事に平常心を装いながらも、私がそう注意すると

「エツくん、ネズミには気をつけるんだよ」

と意味不明なことをぼそり言って、意外にも素直に私の部屋を出て行ってくれた。


暗闇で一体なにをしていたのだろうか?
部屋をとりあえず確認する。
一見なにもされてないようではあったが、実際はどれくらいあのおじさんがいて、なにをしていたかわからない部屋は気持ち悪くてたまらなかった。

うん、貯金箱も大丈夫だ。
窃盗目的ではなさそうだ。
物色といったところかな…。
いや、ほんとにねずみがいたのかな…?

ひとまず気持ちを落ち着かせながら考えてみたものの、なにかの親切心だとしても、やはり「ねずみがいたからといっても勝手に人の部屋には入らないだろう」というのが当たり前の結論である。

「ねずみを追ってて」とかどんな言い訳だよ!
不思議の国のアリスでも気取ってたのかな?
まるでうさぎを追って穴に落ちたアリスを彷彿とするような言い草だったな。
それから「ねずみには気をつけるんだよ」ってなにかの比喩かな?
警告かなんかかな?
とか考えると意味深で急に不安になる。

たまたま鍵をかけ忘れた日にたまたまおじさんはドアを開けたのか?
思い返せば何度か施錠せずに外出したことあるな…。
まさか毎日律儀に確認されてたりして…?

私はもう考えるのを止めた。

この日以降、神経質にも必ず何度も施錠をチェックするようになった。
当たり前のことか…。

私はおじさんのヤバさを甘くみていたかもしれない。
想像をはるかに上回る狂気を感じる。
もっと警戒しなければならない相手だった。




文・挿絵:ETSU

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【コミックエッセイ】ミョーチキリン日記(時系列まとめ)

くだらない話・不思議な話・ホラーな話を集めたコミックエッセイ。みょうちきりんな話が多いのでたぶん閲覧注意!
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コメント2件

ネズミを追って天井裏から入ったに違いない。
そ、その手がありましたか!なんとういうプリズンブレイクな!サンダルを玄関に揃えてるあたり土足じゃないあたりとても礼儀正しくおもう…
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