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奈良美智個展 「The Beginning Place ここから」

青森県立美術館で開催中の奈良美智個展「The Beginning Place ここから」を見てきた

2023年10月14日から始まっていて、ずっと行きたい、行かなきゃ、と思っていてようやく時間も心の余裕もでき、開催期間終わりに近いぎりぎりの2月16日に行くことができた

数日前に来館者6万人突破のニュースを見て、今日は自分が7万人目だったらどうしよう、インタビューされたらなんて答えよう、なんて考えていたけれど残念ながら私は違ったみたいで

でも時間差で本当に7万人目に到達した日だったよう
あー惜しい

青森の平日にも関わらず駐車場はまぁまぁいっぱいだったり、タクシー乗り場には列ができ、雪が降っていても建物の外にはあちらこちらに人がいて、しかもほとんどが海外からの来館者で、いつもの県立美術館からは想像できない風景があった

やっぱり世界的なアーティスト奈良美智なんだなぁと入館前から実感した


チケット代を支払い入館しエレベーターを降りたら、いつもの入り口ではなく、アレコホールを抜けてから展示の入り口があって、今までにはない始まり方で新感覚

「The Beginning Place ここから」は5つの章に分かれていて、初期の作品が展示された第1章の「家 House/Home」から始まる

1984年の作品で、地図に描かれた赤い三角屋根の家が3つ並んだ絵にすごく惹かれた(Untitled)
そこらへんにあるような裏紙や封筒なんかに絵を描く奈良さんのスタイルが好きで、その始まりを見せてもらったような気分に
赤い屋根の家からも奈良さんらしさを感じたのかもしれない


次の章、「積層の時空 Space-Time in Layers」に展示された「Midnight Tears」は2023年の作品
青森市内中に飾られた展覧会のポスターやCMなどでほとんど毎日というくらいよく目にしていたけれど、実物はずっとずっと立体的で色深く、瞳から溢れる涙が本当にこぼれ落ちそうなくらいきれい

過去の女の子の作品が積層となってこの絵の下に隠れているような、とても深い奥行きと優しい雰囲気を感じた
とにかく圧倒的な存在感に吸い込まれ魅了された


「Midnight Tears」の反対側に置かれた2017年の作品「I Want to See the Bright Lights Tonight」をベンチに座りながら見比べて、「瞳のここが違うね」、「I Want to See the Bright Lights Tonightの方がお姉さんっぽく見えるね」なんて一緒に行った小学生3年生の姪っ子とゆっくり話をした

姪っ子は作品に描かれた文字を読んでいたり、「どうして泣いてる絵が多いんだろう」、「眼帯をしてる子が多いね」、「この絵とさっきの絵と似てる」とか、ちゃんと作品を味わっている様子が伺えて、この個展から感じた何かが刻みこまれたかなと思った

姪っ子は絵を描くのが好きで、私からも見てもびっくりするくらい上手だから、いつかこんな作品を描くようになってほしいなぁと

作品の前に置かれたベンチに腰掛け、タイミングよく対峙するように静かに見る時間ができて贅沢な空間を堪能できた

閉館時間に近いこともあって、徐々に人が少なくなってきていたのも幸運だった


第3章の「 旅 Travel」の「山子妹」「旅する山子妹」もものすごく好き

ダンボール紙に描かれた山子姉と山子妹
制作当時、山子姉は大きすぎて車に乗らなかったらしく、連れて帰れるサイズの山子妹との旅の思い出の写真が展示されていた
窓枠いっぱいの山子妹が可愛くておもしろくて思わず笑ってしまう
ダンボールの山子妹を運んでいる奈良さんの姿を想像しても微笑んでしまう

振り返ると山子妹の実物があって思わず「本物!」と言ってしまった
私も「山子妹」と一緒にいろんなところで写真を撮ってみたい
山子妹欲しいなぁ


第4章「No War」の部屋は好きの塊で何周しても見飽きない
新しい発見に溢れている

「My Drawing Room」に飾られたコレクションは奈良さんの頭の中を覗いているようで、わくわくドキドキしてしまう

イカゲームのだるまさんがころんだの女の子の人形を見つけて思わず「あっ」と歓喜の声がもれた
アーティストとの共通点があったような嬉しい気持ちになる

台座としての「森の子」はなんだか贅沢な使い方
森の子が台座?
頭の上には犬がいっぱい
森の子が大きすぎて上の犬がよく見えないよ、と「?はてな?」がいっぱい


最後の章「ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体 Rock Café “33 1/3” and a Small Community」

旅の章に置かれた「Ennui Head」のあたりから音楽が聞こえてきて、その姿が見えた時には自然と早足で向かってしまうくらい吸引力のある建物「ロック喫茶「33 1/3」」

建物内は本当にお店ができるくらいの精巧なつくり
ボトルキープの中に「奈良美智」の札があったり
この場所で楽しく仲間と過ごしている奈良さんを想像できる
そして、こうして建築物の作品もできてしまうことにも感動する

たくさん飾られたレコードからも奈良さんの原点を窺い知れた


5つの章はこれで終わりだけれど、奈良さんの常設展示もそのまま見られるようになっていて、やっぱりあおもり犬は大人気

あおもり犬ももちろん好きだけれど、私は「HULA HULA GARDEN 」が好き
穴から覗いて作品を見るのが本当に好き
奈良さんが作る小屋や部屋には小さな穴があって、そこから覗くと全然違う世界が見える
こんなに小さな穴なのに「視点の違い」をはっきりと体感することができて、感心しきりっぱなしで毎回すごいと思う

私よりもずっと背が高い人しか使えないような高所にある穴からは何が見えるんだろう、もっと身長があればなぁ、台があればなぁと思うけれど、私がその穴から簡単に覗くことができないのもまたアート

多分私が一生見ることのない世界がそこにはある
そういう視点もあると知っているだけでも何か違うのだろうか


22年前に弘前の吉井酒造煉瓦倉庫(現:弘前れんが倉庫美術館)で開催された「 I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.  」で奈良美智さんのことを知り、大好きになった

その弘前の作品展でご本人から直接図録にサインをいただき、「弘前」の「前」のハネが手が滑って本の地にインクがついているところが特にお気に入り
「あっ!これも良いよね」って失敗して笑っていた奈良さんの姿が目に焼きついている

それからしばらく本やグッズを集めて、今でも宝物

Pup King のぬいぐるみも時代とともに価格が高騰し、現在の販売価格を見てびっくり
ずいぶん高級なぬいぐるみがベッドに横たわっているのだなぁと

時々床に落ちてたりしてごめんね、と思う



このブログを書いていて思い出したけれど、10数年前に京都に行った時、駅で奈良さんを見かけて「わっ!!うそ!」ってなって、その後も市内で見かけてその時ばかりは「あぁ運命かも」と思った笑

そんなわけで、これまで何回見に行ったかわからないくらい奈良さんの作品展には足を運んでいる

自分なりの作品の楽しみ方を身につけて、個展に行くたびに「また会えたね」という気持ちになるし、どこか使命感のようなものを感じている


こんなにも素晴らしいアーティストと同郷であることが誇らしい

これからも変わらず奈良さんを追いかけ続けます


▪️青森県立美術館


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