見出し画像

加藤純一にとって2020年は衰退の年であった

1. 加藤純一

加藤純一とは主にYoutubeで活動しているゲームストリーマー(以降ゲームを省略してストリーマーで統一)である。多くの日本人ストリーマーの中でもトップの人気を誇り、ニコニコ動画を除く全ての配信サイトから活動契約のスカウトを受けるほどである。中には年俸1億円を提示してきたサイトもあるとか。恐らく、普段からストリーマーを見ている人なら誰でも知ってる人物ではないだろうか。


そんな加藤純一にとって、2020年は人気が低下した衰退の年であった。

2. ストリーマーの"人気度"

ストリーマーの人気度は、その人の配信の同時接続数で語られることが多い。一口に同時接続数と言っても様々な統計値があるが、本稿では配信技研の出している月ごとの平均同時接続数(Average CCU)を利用する。その配信の同時接続数を時間ごとの増減がなく一定値でならした場合にいくらになるか、と思えばよい。
配信技研は、今年の4月から全ストリーマーの月ごとの平均同時接続数をまとめており、そのデータが企業の案件先の検討(や荒らしによる対立煽り)などに利用されている。

配信技研は広告価値という観点から、平均同時接続数にその月の配信時間を乗算した視聴時間のランキング形式を取っている。時間配信が長くなればそれだけ視聴時間も増えてしまう点で、人気度は視聴時間ではなく平均同時接続数の方が適すると判断した。
広告価値ではなく人気度という観点であるから平均同時接続数を利用するのであって、視聴時間という指標を否定する意図はないことを念押しする。


3. 加藤純一と他ストリーマーの平均同時接続数

以下は、配信技研が公開した加藤純一の2020年4月~11月の平均同時接続数の推移である(謹慎でデータがない10月は0で集計)。

加藤純一の平均同時接続数の推移

2020年4月を1とすると以下のようになる(縦軸の数値が変わるだけである)。

4月の平均同時接続数を1とした場合の推移

1を上回ったのは8月のみである。さらに、下回るときは0.8前後まで低下する。コロナ禍でゲーム配信が視聴される時間は約2倍になっているが、加藤純一の平均同時接続数は増加していない。では、加藤純一以外の人気ストリーマーはどうなっているだろうか。ピックアップした以下のストリーマーの推移を見てみよう。
stylishnoob(DeToNator所属・生身)
兎田ぺこら(ホロライブ所属・Vtuber)
葛葉(にじさんじ所属・Vtuber)

4月を1とした他のストリーマーの同接推移

この中で1を割った月があるのは葛葉のみである。その葛葉も7月以降は1前後を維持している。stylishnoobは6月や11月に大きく跳ねるなど、概ね増加している。そして注目すべきは兎田ぺこら。11月の平均同時接続数は4月の約2.2倍となっており、この4人の中では圧倒的に視聴者を増やしている。

12月にYoutubeLiveの同接カウントに関して仕様変更がなされ、同接の減少が見込まれるらしい。関連性は不明だが、12月3日に一斉に同接が約半分になる瞬間が複数のVtuberで確認されており、同接については11月以前と12月以降で比較が難しくなることを補足する。


4. 視聴者が離れつつある理由

他ストリーマーにとってはバブルのような状況も発生している中で、加藤純一は平均同時接続数が増えていない。他と比較すると減っているとすら言える。少なくとも長期間の配信休止(冬眠)がなくなってからここまで伸びなかった年は初めてではないだろうか。この原因について、以下の2点を考える。

①配信のやる気の喪失
雑談枠で言及しており本人も自覚しているようだが、コロナ禍で外出することができず配信のやる気が低下、いわゆるコロナ鬱を発症してしまったようである。その結果、去年よりもオンラインゲームのプレイをひたすら垂れ流すだけの配信が増加して、力を入れる通常配信が減少した。更に特筆すべきなのは、オンラインゲームの垂れ流し中に雑談をすることがかなり増え、配信時に心がけているという「ゲーム中に関係ない話はしない」という信念が崩壊したことである。また、垂れ流しゲームがPUBGからAPEX LEGENDSに変わった影響か、銃声などのゲーム音量が大きすぎて何を喋っているのか聞き取れないシーンも非常に多くなった。

垂れ流し配信はTwitchで行われる(開始ツイートはされない)

今まで貫いてきた信念がないどころか、音量バランスというストリーマーとしての初歩の初歩にすら気を配っていない有様では、極めて適当に配信していると言わざるを得ない(音量バランスについては当然コメントでも指摘されるがスルーしている)。そして、そのようなオンラインゲームの適当な配信が増えた影響か、力を入れているはずの通常配信でも「なんか違うんだよなぁ」と感じる場面が増えた。悪い意味で加藤純一らしからぬ配信が増えたと言った方がよいかもしれない。その結果として、酷く適当な配信ばかりなことに嫌気がさしたり、今までのような配信が好きで見ていた視聴者が最近の配信に違和感を覚えて、離れていっているのではないかと考える。

②企業系ストリーマーの台頭
要は商機を見た大人達が本気を出してきたわけである。
2020年初頭あたりから多数のストリーマーを擁するVtuber企業が注目を浴び始めた。例を挙げると、前述の兎田ぺこらが所属する「ホロライブ」や葛葉が所属する「にじさんじ」などである。このような企業はストリーマーが配信で稼ぐお金のうち何割かをマージンとして受け取り、自社のタレントをストリーマーとして人気にするために企画・営業・広報など全方面に力を入れて活動している。しかもVtuberに限って言うと、中身は元々そこそこ人気だったストリーマーと言われている。Wikipediaを参照すると資本金はホロライブが4.5億円、にじさんじ3.7億円であり、この規模のお金をつぎ込んで元々そこそこ人気だったストリーマーを企業が本格的にプロデュースして育てているのである。
また、同じ企業に所属するストリーマー同士のコラボも多く、マイクラなど多人数でできる強みを生かした配信も多い。更に、女性Vtuber限定の現象ではあるが、「可愛い絵が可愛い声を出しているから言葉が分からなくてもとりあえず見る」という海外の日本文化好きが見るようになったようだ。特に「ホロライブ」については視聴者のうちの3割~半分が海外視聴者らしい。(前掲したグラフで10月と11月に兎田ぺこらの視聴者が急増したのは海外で人気が出たからだと思われる。)

その結果として、前述の兎田ぺこらは活動開始から僅か1年4か月で平均同時接続数約4万人を達成している。そして加藤純一にとっては、企業系ストリーマーという本気の大人達の出現によって視聴者が流れていっていると考えられる。

前述のstylishnoobが所属しているDeToNatorも多数のストリーマー擁する企業であるが、eSports業界に貢献することを目的としていると思われる。(母体のGamingDの理念がHP上で見つからなかったので厳密には分からない。自チームの元プロプレイヤーが引退後にストリーマーとして活動しつつeSports競技シーンの解説などをしているあたり大きくは間違っていないと思う。)そのため、所属ストリーマーそのものの広報活動などにはそこまで強く関わっていないのではないかと思う。このあたりがバーチャルでのエンタメを明確に掲げているホロライブやにじさんじとは異なっているため、これまで加藤純一が大きな影響を受けなかった理由ではないかと思う。


以上の「①配信のやる気の喪失」と「②企業系ストリーマーの台頭」が同時に発生したことがより事態を悪化させている。配信のやる気が無くても他に見るストリーマーがいなければ視聴者は留まるし、企業系ストリーマーが台頭したところで気合の入った配信を続けていれば視聴者は流れにくい。しかし、やる気のない配信が増えてきたところに、多数の企業系ストリーマーが頭角を現していれば、視聴者が離れて行ってしまうのも当然ではないだろうか。


5. その他雑記

・配信の面白さと同接について
人気と面白さは相関はあれど別の観点であると考え、これまで「面白い」という単語を避けて記述してきた。未だにアンチや対立煽りが煽り材料として利用しているが、加藤純一は面白さを数値化したものが同接である旨を主張したことがある。確かに同接と面白さは相関はあるが、厳密にはこれは誤りであると考える。現在の配信の面白さが現在の同接に影響するのはそこまで大きくなく、より大きく影響するのは未来の配信であるはずである。この人は面白い配信をしてくれそうだ、という期待からそれ以降も見に来る人が多いのではないだろうか。反対に、現在の配信を見て面白くないと思ってしまったら、それ以降は離れてしまう。つまり同接は、面白い配信をしてくれるだろうという期待としての数字であると考える。

画像5

同接を煽る動画は下品に思う(公認切り抜きから引用

視聴者が離れつつある2020年でも、3月にはポケモンプラチナのポケセン封鎖で初の同接10万人達成の他、8月にはポケモンBW、11月には金ネジキやポポロ異世界でも同接10万人を達成している(非常に不名誉な記録だか謹慎復帰配信では14万人を達成している)。同接は面白さの期待値であるとすると、最高同接を更新して平均同接が減少している今年の状況は、年数回だけある話題性の高い配信はまだ面白い配信を期待している人が多いが、その他の通常配信はもう面白い配信を期待している人が減り始めているとすら言える。

・バネ理論について
3月にあったポケセン封鎖の配信は、最高同接は11万人を達成した。しかし、最終回以外の道中の配信は6万人にすら届いていない。11月にあったポポロ異世界の配信は、最高同接は10万人を達成した。しかし、1~20Fの低層ループ時は4万人前後であり、80Fに到達しても6万人程度であった。

画像6

ポポロ異世界クリア時の同接グラフ:80F到達は21:50頃(botから引用

この手の高難度ゲームの配信は、クリアに至るまでの過程を加藤純一と共に苦しみ、最後の最後でそれまで感じた全ての苦しみを解き放つようにグチャグチャになりながら楽しんでこそである。いわゆるバネ理論であり、加藤純一はこのような血の通った視聴者を増やしたいと言っていた。しかしこの1年では、高難度ゲームのクリアの瞬間という上澄みの部分を見るライトな視聴者は増えたようだが、それまでの過程を共に苦しめる視聴者は増えていない。ライトな視聴者は、今年のようなやる気のない配信を見るとすぐに離れてしまうのではないだろうか。

6. 初心を取り戻してほしい

加藤純一の1番の魅力は、誰もが無理だと思っていることでも実現できると本気で思っており、そのためにがむしゃらに突き進む点であると思っている。同接1万人を初めて達成した時期あたりに、ヒカキンかセイキンか忘れたが突発配信で5万人集めたときはコミュ掲示板が絶望に包まれた。しかしその後「ヒカキンも倒す」「10万人集める」と意気込んだ結果、今や日本人ゲームストリーマーの頂点に上り詰めた。
ゴー☆ジャスとの対談で回答していたが、結婚しない限りは同接100万人を目指しているらしい。別に結果として100万人集めることが出来なくてもいい。ただひたすらに100万人に向けて突き進んでほしい。今年の様子を見るに、本当に同接100万人を目指す気があるのか、甚だ疑問に思う。また、来年にはチャンネル登録者数100万人を達成できると思っているようである。特に炎上したわけでもないのに登録者数が停滞はおろか減少に転じているYoutuberなんてうじゃうじゃいるのに、どうして自分はそうならないと思っているのだろうか。
現在は海外ストリーマーのxQcを目標にしているようだが、それ以前に国内ですら危うい状況になっている。stylishnoobは12月のCRカップ配信で8万人を記録している他、Vtuberは10人くらい集まって配信をすれば簡単に10万人を集めるほどまでに成長している(裏方がどれだけ準備をしているかは知らない)。いくら相手が群れてこようが、たった1人で黙らせる雄姿を再び見せてほしい。

画像7

ちなみに、「じゃあどうすればよいか」という具体的な手段の議論は、加藤純一に対しては無意味である。加藤純一は加藤純一がやりたい手段で突き進むしかない。唯一言えることがあるとすれば、目標に向けて突き進む意思を持ち続けてほしい、ということだけである。

7. 最後に

2020年、加藤純一にとって衰退の年になったと思う。「女はすぐに去るが男は不満を言いながらも見てくれる」と言っているが、1年もこのような状態が続いていれば男でも去ってしまう。不満を言いながらも見る人がいたのは、それでもたくさんの人が楽しめる力強い配信を続けていたからである。やる気が無いような配信が続いている今、長らく不満を言っていた人も徐々に去っているのではないだろうか。
2021年は加藤純一の復活を祈るばかりである。