推しの結婚発表を受けて「推しの結婚とは何か」を考察してみた話



時は2023年6月30日。
人生で初めて推しの結婚報告というものを体験した。
これを機に推しの結婚とはなんなのかを、いろいろ考察してみたのでnoteにまとめていこうと思う。

おそらく日付でお察しした方もいるだろうが、一応言っておくと筆者の推しは声優の斉藤壮馬さんである。

ご存じない方のために簡単に紹介すると、2014年放送のアニメ『ハイキュー!!』等の出演を機に人気に火がつき、2017年にアーティストデビュー。
作詞作曲やエッセイ・短編小説の執筆なども手掛け、2023年からはアニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』で主役を務めるなど、現在とても勢いがあり実力も人気もある声優だ。
甘めの声と整ったルックス、自己プロデュース力の高い振る舞い等から、いわゆる“リアコ”と呼ばれる層のファンもかなり抱えている。

とはいえ、筆者はリアコというスタンスでは無かったと思う。
どちらかといえば、音楽性や芝居の方を評価したり、思考を知りたいという理由で推すスタイルだった。
もちろん人間性や容姿なども常に考慮はしていたが、前者ほど大きく影響していたわけではない。

だが、推しが結婚をしても変わらずに推すかと問われれば、決して「はい」とは言えないタイプだった。
なぜなら筆者の中に、結婚報告を受けても推し続けられるための条件というものがあったからだ。


  1. 週刊誌等にすっぱ抜かれることなく自身の口で報告をする

  2. 交際期間や職業、年齢などの相手に関する情報を公開しない

  3. ツーショット写真を載せない

  4. 相手を含め匂わせがない



1.週刊誌等にすっぱ抜かれることなく自身の口で報告をする


男性声優界隈には結婚しても公表しないという文化がある。
これは、声優が表に出る機会が多くなく公表する必要性が少なかった昔の名残であったり、十数年前に某声優が結婚した際の誹謗中傷騒動などの影響があったりする。
しかし時代が変わり、声優界隈も週刊誌のネタにされることが多くなった。
すなわち公表しないと後々奴らに暴かれる可能性が高いのである。
(既婚子バレだの不倫婚バレだの色々とあったよねー泣)

また、昔ほど暴走するオタクも減ったため、隠すことにメリットはないと明らかに予想できる。
中には隠してくれと思う人もいるかもしれないが、第三者にいろいろ暴かれたり思い出をすべて傷つけられるよりは、発表してくれた方が個人的には断然優しいと思っている。
まあその辺の主義・信条は様々なので今回は割愛で。

また熱愛報道などもされてほしくはない。
推しも1人の人間であるため、恋愛なんか好き勝手にやればいいとは思うが、それを具体的に詳細に知りたくはない。
勝手に暴く週刊誌が悪いと言われればそれまでだが、人気商売を選んだ身なのだから隠す努力は怠らないでほしい。
(オタクわがままでごめん)

2.交際期間や職業、年齢などの相手に関する情報を公開しない


結婚報告する際に記載している有名人も多いが、オタクにとってはまじでいらない情報である。
好きな人から元カレ元カノとの話をわざわざ聞きたいという人間はあまりいないであろう。
それと同じ心理だ。
またオタクが全員良心的な人間とは限らないので、相手の詳細を公開することで、最悪特定されて危険に晒される可能性もあるため言うべきではない。
ただ2に関しては、有名人同士での結婚の場合、非常に難しい可能性があることは否めない。

3.ツーショット写真を載せない


これも近年流行りなのか、よく散見されるが本当にいらない。
先ほどと同じく、好きな人から元カレ元カノとのツーショットを見せてもらいたい人間はあまりいないだろう。
それと同じ心理だ。

4.相手を含め匂わせがない


これは近年多くのオタクが悩まされていると思う。
匂わせというのは、多大なる自己顕示欲や承認欲求から生まれるオタクへの自慢やマウントなのだ。
人気商売という道を選んでおきながら、顧客であるオタクに向かって、自らイメージを下げるような行動をしたり、イメージを下げるような相手を選ぶその浅はかな思考に失望する。



長々と条件を語ってきたが、ここで筆者の推しである斉藤壮馬さんの結婚報告について振り返ってみる。


斉藤壮馬 コメント

皆さまへ

私事で恐縮ですが、この度、私斉藤壮馬は入籍いたしました。

この数年、世の中の状況が目まぐるしく変化してゆく中で、自分自身も多くのことを経験し、 家族や縁について、様々な考え方をするようになりました。

そんな折、幸運なことにこれから先の人生を共に歩んでいきたいと思える方と出会い、 新たな1歩を踏み出すことを決意いたしました。

人としても役者としてもまだまだ未熟な私ですが、支えてくださる皆さまへの感謝の気持ちを 忘れず、いただくばかりでなく、次へとつないでゆけるよう、日々精進してまいります。

引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。

https://www.81produce.co.jp/dcms_media/other/230630_News.pdf


なんと先ほどの4つの条件をすべて満たしていたのである。
(ひとつぐらいはダメそうとか思っててほんとにごめん)

さらにファンクラブ会員に向けては、公式発表より長い全文直筆のメッセージが掲載されていた。

有料のため詳細な内容を記載することはできないが、結婚をすることに至った心境の変化やファンへの感謝を、壮馬さんらしい文章で丁寧に綴っていた。
公とは別でファンに向けて自分の言葉で伝えていることが嬉しく、筆者は思わず涙が出た。
(オタクは特別扱いに弱いって言ってんじゃん!!)


筆者は推しからの結婚報告を受けていろいろ考えた中で、表紙を飾った雑誌『CUT』2022年5月号においての発言がふと脳をよぎった。
2万字インタビューの最後で語った文章だ。


自分以外の人の矛盾を愛せるようになりたいと思います

『CUT』2022年5月号 p28


この発言からわたしは“推しの結婚”というものにインスピレーションを得た。


推しの結婚とは、オタクが見てきたエンターテイナーの推し【表】と、オタクが知らないプライベートな推し【裏】が交差する瞬間であるということ。
そしてその【表】と【裏】が交わるときに生じる“矛盾”に対して、オタクがどのように受容するのかを考える行事であるということだ。



この場においての“矛盾”は、結婚した事実やその相手などが該当すると考えられる。
それを踏まえて、先ほど筆者が述べた推し続けられるための4つの条件を振り返ってみると、それは“矛盾”を薄める行動であることに気づく。
実は矛盾を受け入れるというのは、人間にとって難しいことである。
よって、筆者が今まで「なんとなく嫌だから」という感情論で提示していたその条件たちは、“矛盾”を薄めて受け入れやすくしたり、気にならない程度の存在にしたりする行為だったのだ。
そして壮馬さんのインタビューでの発言を垣間見るに、おそらく人が矛盾を受け入れることの難しさというのをわかっていたのだろう。
だからこそ“矛盾”の情報をできるだけ出さずに報告してくれたのではないかと思う。
(別にここまで考えてない気がするけど、解釈したもん勝ちだからそういうことにしておく)

だが、どんなに推しが“矛盾”を薄める努力をしたとて、“結婚した”という“矛盾”は決してなくなるわけではない。
よって推しの結婚が受け入れられない人がいるのも当然だろう。
なぜなら、矛盾を受け入れることは人間にとって難しいことなのだから。
ゆえに悲しんでもいいしファンを辞めてもいいだろう。
何も悪いことではない。
とはいえ、別に祝うことが偉いわけでもないので、双方でいがみ合う必要もない。
あまり確証のないことは言いたくないタイプだが、ネガティブな気持ちはきっと時間や環境、経験が解決してくれると思う。
とりあえず今は、推しの結婚という突然の出来事に対してびっくりしているだろうから、体と心を休めるのが一番である。

そしてこの先、わたしたちも人の矛盾を愛す(受け入れる)ことができたら、人生を共に歩みたいと思える素敵な人を見つけられるのかもしれない。


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