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「伝説的なサービス」という信念をバカにされたくなかった

「あなたの接客を受けて人生が変わった」

大げさすぎるかもしれない。お世辞かもしれないけど、それでも私は顧客様からこの言葉を言われた時、販売員を選んでよかったと思った。

今回は、学も経験値もろくになかった私が販売員という仕事を通して学んだ顧客化の話を偉そう~に語る。


* * * * *


顧客様のために次は何ができるか?

販売員を約8年勤めた私が意識していたのは、たったこれだけだ。
これ以外、本当に何も考えていなかった。
これしか考えていなかった。

企業は利益を上げるために、店舗販売員により良いサービスを提供するよう指示する。店舗販売員は上からおりてきたマニュアルをもとに接客のテクニックを学び、忠実にパフォーマンスする。

これに私は相当な違和感を覚えていた。
(マニュアル通り言われたことだけやって、お客様は満足するの?)

お客様が来店したらいらっしゃいませと歓迎し、お声かけをして、何を探しているのか聞いて、商品を提供して試着を促す。出てきたら褒めて、追加提案をして、レジまで案内する。
数撃ちゃ当たるみたいな感じで、声かけ数のカウントなんかを取る。

アホか。

こんな誰でもできることをやっているようじゃ、他の競合他社に勝てるわけもなく、一番にお客様が喜ぶはずがない。

私はツルツルの脳みそにちょっとだけシワを寄せて考えてみた。

出た答えは「顧客化」だった。

またあなたに接客されたい、またここで買いたいとリピーターを増やすのだ。(今となってはこんな考え当たり前なんだけど当時の私はこれをスゴイひらめき!とか思っていた。恥ずかしい。)

しかし顧客化というのは簡単にできることではない。
名刺を渡して名前を覚えてもらおうとしても、下心たっぷりの男性しか寄ってこないし、メッセージカードをショップ袋にそっと入れたらラブレターと勘違いされて次回メルアドを渡される。
相手が女性でも、なんだか面倒な事態になったことは何度もあった。

(うーん、顧客化って行動にするとちょっと難しい。そもそもサービスレベルの高い低いって基準は何なの?)

ある日私は、接客したお客様に言ってみた。
「買うか買わないかじゃなくて、何か変わろうと今日ここに来たことに意味があると思います。だから謝らないでください。」
そのお客様は長時間滞在して試着もしたが、結局何も買わなかった。
帰り際に、何も買わなくてごめんね、と言ったので私はお客様の背中をポンと叩いてさっきの言葉をかけた。

それが、私がその時お客様にして差し上げられる最大の親切だった。

後日、そのお客様はご友人を連れてまた店にやってきた。
「このお姉さんが・・・」と前回の接客内容と帰り際にかけた言葉について話し始めたのだ。
その日は前回悩んだものを一式購入してくださり、それからお客様とご友人は月に一度くらいの頻度で店に来てくれるようになった。

そしてその口コミは次第に広がっていき、お客様がご友人に、ご友人が家族に、その家族がまた別のご友人にどんどん紹介してくださったことで、こっちが整理できないほど親戚みたいなかたまりで顧客様が複数人一気にできたのだ。

私がやったことなんて、たったひとつ。
自分はこのお客様のために何ができるかを考えただけだった。

商品を売ろうとすることよりも先に、相手の表情、性格、悩み、喜びを読み取ろうと集中した。
それは雨に濡れた傘を拭いてあげることであったり、袋をまとめてあげることであったり、泣いてる子どもの相手をしてあげることだったり、出来ることは無限にあった。

それがたまたまお客様の心にちょこっと響いたのだと思う。
だからあの時の私の行動はナイスだった。
「良いサービスだった」

お客様に褒めてもらえると誇らしい気持ちになり、自信につながった。
お客様の口コミで広められたサービスは、「賞賛されるサービス」として私を成長させてくれたのだ。

私は、口コミの凄さを知った。
さらに人は特別なサービスを受けると「私はこんなサービスを受けた」と人に話したくなる。だからそれを聞いた人々は「どれどれ、どんなもんだか私も行ってみよう」とサービスを受けに来るのだ。

常に気を抜けなかった。いつ口コミの先の人がくるか分からないし。
そうなってくると私は店頭でぐうたら立ってることなんてできないので、アンテナをバリ3にしてお客様を迎えていたというわけ。

お客様にとっても、私にとってもメリットばかりの現象が起きた。

そんな感じでリピーターがやっと増えていったある日、相変わらず私は「お客様のために何ができるか?」だけを考えて店頭に立っていると、いつものように顧客様が来て話しかけてきた。

(今更だけど私が勤務していた店はフィットネス関係なので、お客様はフィットネスジムで使うものを欲している人が多かった。)

話を聴くと、最近ジムに通うのが楽しくないとかなんとか。
ワケを深掘ったら、確かにそのジムじゃない方がいいんじゃない?みたいな話になり、私はある決断に出た。

私が通っているところの体験いったらどうです?
っていうか、今週の土曜日私と一緒にいきましょうよ!

一瞬「はい?」みたいな空気になったのは確かで、販売する立場の人間が踏み入っていいはずがないのは分かっていたのだけど、そのときも私の頭の中には「今この人のために私ができることって何だろう」しかなかった。

結局私はその週の土曜日、顧客様夫婦をジムに連れていって体験コースにお付き合いして、終わった後一緒にビール飲んで(意味ない)

そこからそのご夫婦はしっかり週1くらいのペースでお店に来ては、新商品を次から次へと購入して、ジムも変えて、今ではさらに筋肉モリモリになっているという。(私はとっくに退会している(笑))

その顧客様に言われたのが、冒頭に書いたあの言葉である。

そんな私の販売員として非常識なサービスが、ある意味伝説みたいになって、時に他店舗の店長から笑われたり、褒められたり、うらやましがられたりしていった。

やっとそこで私は、販売員がサービスを提供する意味を理解することができた。

伝説的なサービスというのは、人が考える常識を外した時に生まれる。
要はある程度かたまったサービス基準を超えてはじめて、伝説になる。
そしてお客様はそれを口コミで広げる。
そしてその功績が評価され、リーダーの目標に設定される。
最終的に企業がそれを行動指針みたいにして、伝承されていくのだ。

私は決してテクニカルな接客技術を持っているわけではない。
もっともっとスゴイ人なんて世の中にはいくらでもいる。
ただ私は、販売員という職業を選んで数年ぽっちだけでも経験ができてよかった。

人生の中のほんの数年だけ、輝くことができて有難いと思う。


と言いながら、私は販売員を辞めた。
今度は消費者側の立場になったのだ。

消費者である私が今度は「販売する人たちに対して私ができることは何だろう?」を考える。

それは、きっと、販売する立場の人たちが「このお客様に販売してよかった。また来てもらいたい、買ってもらいたい。」と思ってもらえるようなお客様になることなのだ。

だから私は、本当に欲しいと思ったものは接客を受けてから買いたいし、作り手の気持ちを奥深く理解したうえで対価を支払いたい。
だから物欲がない。
物欲がないというか、めちゃくちゃ心のこもった伝説的なサービスをされたらたとえ初めは興味のなかったものでも、買っちゃうんだきっと。


それが人にしかできない、サービスのカタチだと思うんだ。


Mayu Tsukamoto 2019/7/15

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2019/5/20~始めました。 書き方、内容に統一感はありません。
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コメント26件

あいかもさん
ありがとうございます。職種は違えどあいかもさんに分かってもらえる気がしてました(;o;)💓
コメントうれしいです。
ちなみに今日あいかもさんの過去記事がっつり読んでて(笑)
今からスキでお知らせ一覧をジャックしにいきます……🤣💕
おまゆさん…過去記事を見るなんて
そんなステキな事を😭

ありがとうございます。
すてきなnoteでした。
マニュアルとかもちろん大切ですけど、要はそれを踏まえて自分が何ができるか、ですものね。
あなたから買いたいというのは最高の褒め言葉だし、自分がお客さんの立場でも、そう思ってかいものに行けるとウキウキします。
すばらしい〜!!
だいすーけさん
ありがとうございます!!だいすーけさんのお店の未来の記事も私だいすーきですよ!!
さらに私たちの記事がKojiさんの記事に載ったのは大変光栄ですね(*´ω`*)
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