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独白【画家の名前】

油絵は正しい描き方をしてきちんと管理すれば、数千年は保つという。

画家がこの世を去った後も作品は残り続ける。
今の世界が滅びて、人類が今と全く違う文明を築いてからも残り続けるものもあるだろう。

たとえば、あのキクラデス諸島の彫刻のように。

その頃には、ピカソやゴッホなど、私たちが知っている有名な画家の名前など、もう知られてはいないのではないかと思う。

もちろん、私の名前もだ。

名前とか、権威とか、社会的なものはそういうものだろう。
いつかは忘れ去られる。

だが、作品はそうではない。
はるか遠い未来に受け継がれる可能性がある。
誰が作ったのかわからなかったとしても。

キクラデスの彫刻を初めて見たとき、私はその美しさに深く感動した。
その彫刻は、キクラデス諸島で発見されたということ以外は何もわからない。
有名な作家が作ったのか、無名な作家が作ったのか、作家は男性だったのか、女性だったのか、年齢は幾つだったのか、そういうことは知りようがない。

ただただ、その彫刻は私に純粋な感動を伝えてくれた。

画家にはある種の「呪い」が付きまとうこともある。

知名度。
評価。
経歴。
金銭。
権威。

この中には画家として活動するためにある程度必要なものもあるため、付き合わざるを得ない部分もある。
だが、画家はこれらに振り回される必要などないのではないだろうか。

画家が第一に目指すべきは、「受け手に感動を与えること」だと、私は思っている。

キクラデス諸島の彫刻のように、数千年後に誰が作ったものかわからないものとして発見されたとしても、それが誰かに感動を与えられたなら本望だ。

平成という1つの世の終わりに、遠い未来へ、愛を込めて。

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稲場麻佑

画家。北海道在住。美しいものとおそろしいものを愛する。恩師の元で現代美術と禅を研究中。 芸術のつれづれを語るWebマガジン「ヴィーナスのスープ」はじめました。 オフィシャルサイト http://mayuinaba.strikingly.com

ヴィーナスのスープ

芸術のあれこれを語るマガジン。 創作論、エッセイ、作品解説などを掲載します。 ゆったり読んでいただければ幸いです。
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